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読書記録 #5「アルケミスト」パウロ・コエーリョ

 中米(ドミニカ共和国)で生活しているにも関わらず、なかなか中南米の作家の本を読む機会がなかったので、今回は同期隊員におすすめしてもらったブラジル人作家パウロ・コエーリョの「アルケミスト 夢を旅した少年」を読んでみました。

 スペインのアンダルシアに住む羊飼いのサンチャゴは、エジプトのピラミッドに自分を待つ宝物があるという夢を見ます。そして、共に過ごした羊たちを売り、海を越え、砂漠を越え、ピラミッドを目指す旅に出ました。その旅での出会いや、王様や錬金術師(アルケミスト)の導きの中で、サンチャゴは人生において大切なことを学んでいきます。

 この物語の中で、少年サンチャゴはピラミッドに隠された宝物を探しに行くという自分の運命を発見するのですが、その「運命」について、老人はこのように伝えます。

「おまえがいつもやりとげたいと思ってきたことだよ。誰でも若い時は自分の運命を知っているものなのだ。
 まだ若い頃は、すべてがはっきりしていて、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の人生を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」

 そして、このように続けます。

「(前略)自分の運命を実現することは、人間の唯一の責任なのだ。すべてのものは一つなんだよ。
 おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるものだよ。」

 子供の頃や若いころに実現できるかどうかなんて何も考えずに無邪気に語っていた夢を、いつの間にか色々な理由をつけて諦めてしまっている大人は少なくないと思います。
 サンチャゴだって、自分と共に過ごしてきた羊たちとずっとアンダルシアで過ごした方が楽だったでしょう。しかし、その羊たちを売って、海の向こうのエジプトへ渡ります。しかも、広大な砂漠を越えずには、ピラミッドへは辿り着かないとも知らずに。
 この一見無謀だと思える挑戦も、強く願えば宇宙全体が実現を助けてくれるというのは、何だかファンタジー過ぎるような気もしますが、現実でも自分がある目標や夢に向かって努力しているときは、「運が良い」と言われるような良い巡り合わせがあったり、素敵な出会いがあったりすることもあるでしょう。これこそ、ここで言われていることなのかなと。
 つまり、やっぱり大人らしく分別つけてクールに自分の夢を諦めてしまうくらいなら、がむしゃらに、見通しが立っていなくたって、本当にやりたい、やってみたいと思う自分の心に正直でいたいなと感じました。

 また、サンチャゴの旅は自分の心との対話によって進みます。オアシスで出会った少女への愛や、砂漠で起こっている部族同士の戦闘への恐れから、オアシスから再度ピラミッドへ出発するのを迷います。しかし、その時にも錬金術師は自分の心が生きている証拠だから、自分の心の声を聴き続けるように助言します。
 日々忙しく生きている私たちにとって、目の前のやらなければならないことが多すぎて、それが本当に自分がやりたいことなのかを考える暇もありません。そして、時間がない、忙しいという理由から、自分の気持ちと向き合うことを忘れて、毎日を消化するのに必死です。
 だからこそ、この本を読んで、自分の心とじっくり対話することがいかに大切で、それが自分の「運命」を見つけるのに役立つかということを感じました。

 また中南米出身の作家の本も読んでみたいなと思います。


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小学校教師4年目で、現在休職中。現職参加で青年海外協力隊(2019年2次隊)に参加中。任地は、ドミニカ共和国の首都サントドミンゴにある教員養成校。ドミニカ共和国での活動・生活記録を中心に、教育、哲学、読書、ミュージカルなど、自分の興味のあることや、趣味についても書いていきます。