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犬を飼う(覚書)

 私は犬を飼いたかった。それはもう巨大な欲望であった。私はこの寒空の下、木枯らしが吹きすさび木々の息絶えたさいたま市大宮区にて、激烈に犬と過ごしたかったのである。私は今まで犬というものに縁がなく生きてきた。そしてその孤独な歩みはこれからも続くはずであった。しかしこの不可逆な野望が立脚してしまった以上、私は立ち上がらざるを得なかった。 だいたい猫というのは気まぐれな生き物である。さっきまで北を向いていたと思えば、次の瞬間には南を向いていたりする。大変にあまのじゃくである。彼らは

    • 猫を飼う(覚書)

       猫を飼いたいと思う時期がやってきている。普段はやってきていない。ただこの瞬間、夏の暑さと扇風機の涼しさの合間にて、猫を飼いたいという激烈な欲望が立脚したのである。元来私は犬派であるため、猫に心を惹かれることはない。街を歩く私は徹底的に猫を避け、猫もまた私を避けて暮らしている。要は他人である。猫の生と私の生は交わることはなく、これからも交わらないはずだった。しかし今現在において、私は猫を激烈に欲している。そして同じようにして、猫もまた激烈に私を欲しているだろう。私たちはお互い

      • Pavement -Cut your hairを翻訳する

        アメリカのバンドブームに際し、次々と新しいバンドが出てくる中でひと際輝きを放っていたPavement。彼らの代表曲とも言えるCut your hairは、耳に残る心地いいメロディーとは裏腹に、バンドシーンへの痛烈な批判を含んでいる。口が悪いが、ユーモラスでどこか憎めない彼らの曲は、90年代を代表するインディーズとして今でも愛されている。 Cut your hair-written by Stephen MalkmusDarlin' don't you go and cut

        • Young Folks-Peter Bjorn and Johnを翻訳する

           ふと思い立ち、個人的に好きな楽曲を和訳することにした。日本人である私にとって海外の曲は数回聞いただけではそのニュアンスをすべて把握することは難しい。そこで本腰を入れて和訳することで曲の細部に至るまで気を配ろうというのである。  今回翻訳するPeter Bjorn And JohnのYoung Folks (https://youtu.be/iArXv64tCJA) という曲は、スウェディッシュ・ポップの中ではとりわけ有名な曲である。サビで”All we care 'bou

        犬を飼う(覚書)