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3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第2回(後編)

前編で、いまどきの労使関係の姿はどうもしっくりこないと書きました。その理由を後編で考察してみます。

そもそも、労使の関係は『契約』という関係です。契約というのは、私なりの表現では「お互いに権利と義務を持ち合う」ことでバランスをとる関係の事ということです。

会社には事業を成功させたり継続していくために、自社の持っているものを自由に扱う権利があります。社員という「ヒト」もそのうちに入ります。専門的な表現では、『労働力を処分する権利』となります。

ここから、労働契約を結ぶことによって、会社は自らの持っている労働力を自由に処分してもいいよ、ということに繋がっていきます。

これだけだと会社の一方的な支配になりますが、その見返りに『賃金を受ける権利』(会社からすると支払う義務)が労働者に与えられます。ここまでがよく言われる労働契約の原理ですが、この関係を長期的に保障すればするほど、会社側の処分する権利(労働者からすると処分にしたがう義務)が強まるというシンプルな図式です。

最近は、こうした契約関係をより長期的保障することを求められながら(70歳定年)、会社側の処分権も弱まってきているようにみえます。

つまり、権利と義務というパワーバランスが変化し、どちらかというと労働者のほうのパワーが強まってきている傾向があるようにみえるのです。

今までが会社側に偏っていたから、是正されてきているという見方はできると思います。一方で、偏っていた状態に馴れ切ってしまい、どこでバランスをとればいいのか見いだせずにいるせいで、今の状態がしっくりこないという感をぬぐえられずにいるように思います。

もう過去に戻れないのだから、新しいバランス感覚を身につけたり、それを実現できる仕組みを作り出すしかないのでしょう。

私のような社労士という仕事で言えば、単に『会社を守るため』とかいうのではなく、労と使が何を相手に与え、その見返りに何を背負えばいいのか、その姿を形にして提供することが求められているのだと思います。たとえば、就業規則というものが、その最たるものになるでしょう。

次回は、これからの就業規則についての考察を書いてみようと思います。




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