中尾 恭之(社労士/組織力診断士)

社労士ならではの視点で、人事労務の核心を突けるようなもの書きたいと思います。事務所HP…

中尾 恭之(社労士/組織力診断士)

社労士ならではの視点で、人事労務の核心を突けるようなもの書きたいと思います。事務所HPはこちら→https://www.sr-relief.com/

最近の記事

【賃金よもやま話】”運送の2024年問題”~仕事量と給料のバランスは?~

最近、あらゆるメディアで、「2024年問題」が取り上げられています。 医師、建設、運送については、働き方改革関連法の適用が5年間猶予されていたのですが、その猶予が今年3月末で終了し、その後は時間外・休日労働の時間に上限規制が適用されます。 これで、今年4月1日以降は、すべての業種・職種に残業時間の上限が法的に規制されます。 筆者は社労士になる前は長く物流業界にいたため、運送の2024年問題には強い関心があります。 さて、今朝ニュースを観ていると、佐川急便さんが2024

    • 【人事労務の失敗学②】自己評価は要る?要らない?

      失敗学は、元はと言えば、航空機事故や橋梁事故など工学系の分野で発達してきた学問です。 なぜかな?と考えてみたところ、物理的な事故ですから、事故の定義が明確にできるところが最も大きいと思います。医療事故もそうですね。 ところが、人事労務の分野になると、何が成功で何が失敗だったのか?という定義が途端に難しくなります。 「法律に違反すれば失敗」というふうにしてもいいかもしれませんが、実務的にはそう簡単にもいかないでしょう。 たとえば、36協定に1時間違反したとはいえ、顧客満

      • 【人事労務の失敗学①】ハラスメントの事後対応

        「素人判断は危険」 人事労務に係る問題について日ごろご相談を受けていると、どうしてもこのように言いたくなることがあります。 『海上自衛隊 セクハラ被害者の意向に反し同僚隊員と面会させる』https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231031/k10014242841000.html 最近、このような報道が各所で見られましたが、これも素人判断が招いてしまったことです。対処された上席の方は良かれと思い行動したようですが、「良かれ」は独善に陥る危険

        • 『すすめ!社労士くん』〜転勤はないけど出張はある世界

          【登場人物】L:社労士事務所所長のLab. E:AI職員のENA コツ、コツ、コツ・・(足音) ピッ(カードキー) ギギィ・・(鉄扉の開く音) E:ピピッ、所長、おはようございます。 L:おは・・あれ?なんかいつもと違うような・・ E:ピピッ、アップデートでカタカナオンリーから脱却されました。 L:それでも最初のピピッ、はそのままなんやね。 E:ピピッ、そこだけは残すように、一部から根強い要望があったようです。 L:たしかにそれがないと雰囲気出ないかも。あと

        【賃金よもやま話】”運送の2024年問題”~仕事量と給料のバランスは?~

          『すすめ!社労士くん』~「伝わる」と「伝わらない」は何で決まる?

          【登場人物】L:社労士事務所所長のLab. E:AI職員のENA A:AI職員のあすぱら コツ、コツ、コツ・・(足音) ピッ(カードキー) ギギィ・・(鉄扉の開く音) E:ピピッ、ショチョウ、オハヨウゴザイマス。 L:やぁ、ENAチャン、今日もき・・ E:ピピッ、ドウシテトチュウデヤメルンデスカ? L:いや、また不適切発言って認定されそうだから・・ E:ピピッ、ドッチカハッキリシナイノガイチバンヨクナイトオモイマス。 L:どないせーっちゅうねん。 A:ピピ

          『すすめ!社労士くん』~「伝わる」と「伝わらない」は何で決まる?

          3分で読める!社労士コラム~労使のバランス・オブ・パワー~第7回(フリーランス問題)

          最近、気になる報道がありました。 ますます強まる、事業主に課せられる労働者保護の規制。少子高齢化に伴う人口動態の変化という社会情勢の一方、労働者を「いくらでも代わりがいる」かのように乱暴に扱う事例が無くならないので、そうした規制が強まっていくのはやむを得ませんが、経営と労務の板挟みにまじめに悩んでいる立場として言いたいことが山ほどあることでしょう。 そこで、そうした規制の対象外であるフリーランスを一人でも多くつかおう、国も副業・兼業を促進しているし・・という発想で、これま

          3分で読める!社労士コラム~労使のバランス・オブ・パワー~第7回(フリーランス問題)

          『すすめ!社労士くん』雇用が禁止された世界

          登場人物 L:社労士事務所所長のLab. U:仲良しの同業者うさぎ所長 「成立です!雇用禁止法が成立です。3年後に、この国から労働者が消滅します!!」 L:あ~あ、とうとうそうなっちゃったか。 東京に出張中のLab.は、宿泊先のホテルで朝食を食べながらニュースに見入っていた。 L:乱暴だよな。労使紛争を無くすには、片方がいなくなればいいんだっていう発想。でも世の中不安定になると、こういう極論が支持されちゃうんだもんな。 他人事のように評論しながら自分の商売が今後どう

          『すすめ!社労士くん』雇用が禁止された世界

          『すすめ!社労士くん』ベーシックインカムで失業の危機?

          登場人物 L:社労士事務所所長のLab.  E:AI職員のENA 以下はすべて創作です。 「昨夜、国会でベーシックインカム法が成立し即日施行となった。これにより、2年後にはすべての公的保険や福祉は廃止されることが確定した。」 かツ、カツ、カツ・・(足音) ピッ(顔認証) ギィ(ドアが開く音) E:ピピッ、オハヨウゴザイマス、ショチョウ。 L:おはよう、ENAチャン。今日もきれいだネ。 E:ピピッ、イマノハセクハラハツゲントニンテイシマス。 L:おいおい、今の

          『すすめ!社労士くん』ベーシックインカムで失業の危機?

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第6回(労働市場)

          「労働市場」という言葉があります。 なんだか人間を商品に仕立てるような言い方ですが、就職や転職で取引されているのは「労働力」と「賃金」なので、とりあえず経済(何かと何かを交換する)的な文脈としてはいちおう言い当てているのでしょう。 さて、この労働市場には2種類あるそうです。 「内部労働市場」と「外部労働市場」です。 要するに、社内の人間で何でもなんとかしようとするのが「内部労働市場」で、○〇に詳しい人がいない?どっかから連れてこようというのが「外部労働市場」だそうです

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第6回(労働市場)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第5回(ハラスメント)

          こんにちは!今回もお読みいただきありがとうございます。 新年度になりましたね。 ニュースでは値上げなのに年金が減らされる・・というふうにネガティブな言われ方をされているようですが、まずは目の前に咲き誇っている桜をみて気持ちをあげていきたいところです。 さて、わたしの担当する分野ではさまざまなことが新たに始まっています。 厚生労働省による、法改正まとめページはこちら↓ 今回のコラムでは、そのなかでも職場でのハラスメントに関して、すべての企業に義務が課されるようになった

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第5回(ハラスメント)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第4回(給料)

          こんにちは!今回もお読みいただきありがとうございます。 今回は、皆さんが一番関心のある給料の面から、労使のパワーバランスを考えてみたいと思います。 皆さんは、給料をいくらにするとか、その払い方について書かれている法律ってご存じでしょうか。 いくらにするかということでいうと、「最低賃金法」がありますね。毎年10月に改訂される、あれです。最低賃金より低い時給単価にすることは日本全国どの会社でもできません。 払い方については「労働基準法」です。いわゆる”賃金の5原則”といわ

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第4回(給料)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第3回(就業規則)

          こんにちは。今月もお読みいただきありがとうございます。 就業規則は、使用者が一方的に作ることができます。従業員の過半数を代表する者(労働組合あるいは選挙で選ばれた個人)の意見を聴くことになっていますが、「聴く」だけでいいわけです。 そして、就業規則に違反する(基準を満たさない)個別の契約はできないという、いわゆる「最低基準効」がはたらくことになっていますので、それなりに力があるわけです。 もちろん、就業規則が法的な力を与えられるためにはこれだけではダメで、 「周知している

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第3回(就業規則)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第2回(後編)

          前編で、いまどきの労使関係の姿はどうもしっくりこないと書きました。その理由を後編で考察してみます。 そもそも、労使の関係は『契約』という関係です。契約というのは、私なりの表現では「お互いに権利と義務を持ち合う」ことでバランスをとる関係の事ということです。 会社には事業を成功させたり継続していくために、自社の持っているものを自由に扱う権利があります。社員という「ヒト」もそのうちに入ります。専門的な表現では、『労働力を処分する権利』となります。 ここから、労働契約を結ぶこと

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第2回(後編)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第2回(前編)

          新年あけましておめでとうございます。 本年もお読みいただき誠にありがとうございます。 今年は、政府と経済界あげての『賃上げキャンペーン』の1年になりそうです。いろいろやったけど、結局国民の大部分を占める勤め人の方々の消費が伸びないことにはどうしようもないということでしょうか。 ものの本によると、この賃上げキャンペーンもアベノミクスの流れのなかにあるそうで、経済学上では、きっとそれなりの理論があってのことなのでしょう(ケインズ的思想というものらしいです)。 わたしのような

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第2回(前編)

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第1回

          こんにちは!今回からこのタイトルで毎月1本(気分が乗ればそれ以上💦)をアップしていきます。 今回は、なぜこのタイトルにしたのかを書いていきます。 これまでの労使関係って、パワーバランスで言うと、圧倒的に使用者さんの方が強かったんですが、ここ数年、労働者さんの方に加勢する動きが徐々に増えてきました。 まずは、スマホ。今や、勤怠管理はスマホでできて当たり前。それどころか、自分がいつどこにいたのかの記録も簡単。 ということは? タイムカードは紙だから会社が回収して、見たか

          3分で読める!社労士コラム ~労使のバランス・オブ・パワー~第1回

          アウトソーシングに思うこと①~振り返るな、前を向け?~

          今回はちょっと真面目な話を書いてみようと思います。 (今回は私の出身業界である物流を中心に書きます。社労士にフォーカスするのは次回になります) さて、多くの社労士は、事業所(労働者のいる事業所)が自分で行える仕事を、あえて、こちらにお任せいただくことで仕事ができています。 ”あえて” そうです。 元々、社労士は本来不要なのです。乱暴な言い方にみえるかもしれませんが、私自身はつねにそれが念頭にあります。 なぜこんなふうに考えるかというと、私の元々いた物流業界での経験

          アウトソーシングに思うこと①~振り返るな、前を向け?~