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事業とプロダクトの役割を広く担うAlp共同創業者にきく。Alp創業ストーリーと向き合う「プロダクトの練度」【利用者インタビュー第五弾】Alp 共同創業者 山下鎮寛

今回は、「知の還流」がコンセプトのインキュベーションオフィス「SPROUND」に入居する企業、通称SPROUNDERの入居者インタビュー第5弾として、Alp,Inc.の創業メンバーのひとり山下 鎮寛(やました やすひろ)さんにお話を伺います。


Alpの創業メンバーは3人。今回は敢えて代表の伊藤さんではなく共同創業者の山下さんにインタビューを実施しました。山下さんご自身のこれまでのキャリアはもちろん、共同創業者3人の出会い、会社のフェーズにおける役割の変化についてお話しいただきました。スタートアップにおける創業チームについて紹介する機会になればと思います。

聞き手はDNX Ventures(以下、DNX)の稲田 雅彦さんです。

Alp創業チームの出会いは、ニューヨークと豆まき?


稲田:まずはAlpの創業前についてお伺いしたいのですが、これまでのキャリアやCEO伊藤さん、そして竹尾さんとの出会いについて教えていただけますか?

山下:竹尾とは大学3年生が終わり、休学してニューヨークに語学留学していた時に出会いました。10月にボストンキャリアフォーラムという就活系のイベントでサイバーエージェントさん(以下、サイバー)の選考に参加させていただいた後、サイバーの方が面接合格者同士のディナー会を現地で設けて下さって、そこで偶然隣の席にいたのが竹尾でした。

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山下 鎮寛/Yasuhiro Yamashita
アルプ株式会社 取締役/共同創業者
静岡大学卒業。ヤフー株式会社を経て2017年にピクシブ株式会社に入社。ピクシブでは有料会員数30万人を超えるサブスクリプションサービスの事業責任者を経て、ビジネス開発統括に従事。2018年8月にアルプを共同創業。プロダクトオーナーを担当。

稲田:そこで山下さんはサイバーに行かず、竹尾さんだけがサイバーに入社することになったんですね?

山下:はい、私はヤフーに入社しました。

稲田:そのディナー会のあとは竹尾さんと継続的に連絡をとっていたんですか?

山下:実は出会ったその日に「来週からしばらく居候させてくれないか?」と竹尾に声をかけられまして。(笑)竹尾はちょうど家の契約が終了してしまい、ニューヨークに延長して滞在するための新しい家を探している最中でした。たまたま竹尾と学校が隣でかつ家もニューヨークに住んでいた私に、居候の提案をしてきました。面白そうだったので快諾すると、1週間後には本当に家に訪ねてきて、そこから2週間ほど同居生活をしました。同じころ、僕の友達から現在ヤフーでCOOをやられている小澤さんの修行生をやらないかと誘われていて、一人では心細かったので竹尾も誘って一緒に小澤さんの元で修行することに。そこから継続的に付き合うようになりました。

稲田:小澤さんの元での修行というと具体的にどういったことをやられていたんですか?

山下:当時ヤフーが買収したクロコスというSNS上でのキャンペーンを行えるサービスを提供していた会社でカスタマーサクセスのインターンをさせてもらっていました。あとは小澤さんの個人のプロジェクトにいくつか参加させてもらっていましたね。その一つに「すごい豆まき」という節分の日に東京タワーで豆を数トン撒くというちょっと変わったイベントがありました。これをきっかけにして、2013年にもう一人の共同創業者伊藤と出会いました。他のインタビューでもお話している、「すごい豆まき」の運営をひょんなことで一緒にやることになったんです。

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稲田雅彦氏/Masahiko Inada
DNX Ventures Venture Advisor
2013年にデジタル製造プラットフォームを提供する株式会社カブクを設立、代表取締役 兼 CEOに就任。2017年に東証一部上場大手メーカーからのM&Aにより連結子会社化を行う。2019年、DNX Venturesに参画。2021年、歯科領域でのプラットフォームを提供するエミウム株式会社を設立、代表取締役 兼 CEOに就任。

毎週の事業ディスカッション、5年の空白と再集結

稲田:2018年のAlp創業まで5年ほどの空白期間があると思うのですが、その間定期的に会っていたりしたんですか?

山下:初めて会った頃から毎月一回は伊藤に呼ばれて伊藤・山下・竹尾の3人でご飯に行ったり飲みに行ったりということが続いていました。しばらくすると3人ともIT系の会社に属していることもあって、こういう事業はどうだろう、ああいう事業も面白いんじゃないかと事業について話すことに白熱するようになりました。うち1年半ぐらいは、毎週伊藤の家に集まって話すということが習慣になってましたね。

稲田:最初はルームメイトから始まり、気心の知れる友人となって。さあ事業を始めようとなったきっかけはいつだったんですか?

山下:実は起業する前に僕はヤフーから伊藤からの誘いでピクシブに転職してるんです。改めて3人が起業を目指すようになったのは、2017年末に竹尾が自分で起業するためにサイバーを退職したのと伊藤がピクシブを退任する時期がちょうど重なってからです。竹尾と伊藤が集まって気持ちが起業に向き始めると、やはりこのメンバーで起業をするのであれば山下もいないとだよなという話し合いになり私に声がかかりました。

ゼロからの事業検討、3人とも "Why me"が持てたことが決め手に

稲田:竹尾さんと伊藤さんの退職のタイミングが重なったという、3人で創業するきっかけが明確にあったんですね。その時にはもう事業アイデアは定まっていたんですか?

山下:全く決まっていませんでした(笑)
3人でアイデア出し合っていたのですが、全員のテンションが揃うようなアイデアがなかなか出ないまま半年間がたってしまいました。

稲田:なるほど、事業が始まるまでにかなり難航したようですね。それでは結局どのような形で事業が定まったんですか?

山下:それでいうと、私が出したサブスクリプション向けのSaaSを作りたいというアイデアに全員が同意したことでまとまりました。これは元々ピクシブのサブスクリプション事業でやっていた施策が、売上や利益率は上げられたものの、開発の工数がかなりかかってしまい大変だったという、私と伊藤の原体験をベースにしたアイデアで、伊藤もとても共感してくれました。竹尾も竹尾で、B2B側で企業向けのシステムを開発していたり価格算定ロジックの部分を触っていたりしたので、”サブスクリプション”や”プライシング”という領域に対して、3人が3人とも”Why me”を持っていたというところで事業を始める決め手となりました。

稲田:ちなみに3人のなかで最終的な像やビジョンについての話はあったんですか?

山下:抽象的ではあるのですが、人生をかけられるサービスやミッションであるか?というところで議論を重ねました。そのサービスが本当に自分の10年、20年を捧げて熱中できるものなのかということを3人とも大事にしていましたね。その中で我々が今回選んだ「サブスクリプション向け管理SaaS」というスタート地点は、今後どのサービスにもサブスクリプションビジネスが広がっていく中で、どの会社も必要な領域であると考えています。このサービスをやること自体が日本の企業の生産性をあげるという非常に大きなミッションになりますし、難しい課題でもあるので、3人が3人とも人生をかけられると判断しました。

創業ストーリーに関してはマネーフォワードのインタビューでも書かれているのでぜひご覧ください!

各々の強みに合わせ、組織・事業・開発でスムーズに役割分担

稲田:プロダクトやビジョンが決まってから会社を立ち上げるにあたってポジションに関してはどのような形で話が進んでいったのでしょうか?

山下:ここはすごく自然な流れで決まっていまして、元々代表の伊藤は事業であったりプロダクトはもちろん大事にしているんですが、それ以上に会社での組織やチームを作っていくことにピクシブ時代からすごく熱意を持って取り組んでいて、伊藤の中で会社組織自体がプロダクトだという風に思っている節がありました。一方私自身は日頃からいろんな事業を見に行くなど事業を作ること自体に興味があり、竹尾は竹尾で事業をどうやったらよりよく作れるのか、良い開発組織で効果的に作れるかというところに対して興味関心がすごくありました。このように3人の関心がそれぞれ、組織・事業・開発という風にきれいに分かれていたので、3人の役割分担はスムーズに決まりました。

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稲田:初期から今に至るまで組織が徐々に徐々に大きくなる中、自分自身のポジションやポジションに対する考え方に変化はありましたか?

山下:創業初期の頃はプロダクトオーナーとしての側面が非常に強かったですね。四六時中何をメッセージとして発するのか、そのためにどんなプロダクトを作るのかを考えていました。創業期は自分がその業務をひたすらにこなす場面がほとんどでしたね。最近はメンバーが増えてきて、プロダクトマネージャーのメンバーが入ってきたり、セールスを任せられるメンバーが入ってきたりと、今までのように自分が一人のプレイヤーとしてしっかりScalebaseのことを考えるというポジションから、プロダクト全体をどう作るのか、そのなかで会社で良いフィードバックを回す方法はないかというようなプロダクトをよりよくするまでの流れを設計するポジションに変わりました。お客様へのヒアリングやマーケットのリサーチから機能を設計し、リリースを出してからまたお客様にフィードバックを回す、プロダクト作成の一連の流れを設計したりしています。

幅広いロール、組織の変化に伴う力点の変更

稲田:山下さんのロールで言うとCOOやCPOに一般的には該当されると思うのですが、自分とポジションがかぶっている方々の中でベンチマークとされていらっしゃる方とかっていらっしゃいますか?

山下:そうですね。COOという文脈で言うとラクスルの福島さんはすごく尊敬させていただいています。実は伊藤と福島さんがBCG時代の先輩後輩ということもあって、創業から何度か福島さんに事業案に関してアドバイスをもらいに行ったりしているのですが、毎回非常にクリアなアドバイスを頂いたり、COOとしてのマインドセットを発信されているのを拝見してすごく参考にさせていただいています。CPOの文脈でいうと(実際にはCEOをされていますが)LayerXの福島さんは今後世間がどのように変わっていっていてその世界に対して必要とされているプロダクトが何かということを対外的に発信されているのを見て参考にすべき点が多いなと感じています。

稲田:今Alpさんはどのようなフェーズにいて、山下さんは具体的に何に力を入れていらっしゃるのでしょうか?

山下:現状のAlpのフェーズとしては、プロダクトをリリースしてから2年強ということで、非常にありがたいことに導入の意思決定をしてくださる顧客が毎月増えています。ただ、まだまだ我々のプロダクトの練度の問題で理想の体験を提供出来ていない企業も何社かいらっしゃる状態です。プロダクトチームとしては、ここからそういった状況をなくすために、Scalebaseを触る人がひと目見て簡単に使えるUIや、圧倒的な業務効率を向上させることできるような機能開発に、力を入れていかなければならないと考えています。

あらゆるソフトウェアがSaaSに置き換えられる流れを掴む

稲田:ありがとうございます。それでは今後目指しているところについて簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか?

山下:現在我々SaaSの業界ではいくつか大きな動きがあると思っているのですが、その中の一つに今までのエンタープライズがERPを導入することによって享受してきた効率化などのメリットをSaaSとして比較的安価に提供することで、これまでエンタープライズでしか受け取れなかったメリットをSMBを含めたより多くの会社が受けとれるようになっていく流れがある。例えば人の領域であればSmartHRさん、お金の領域ならマネーフォワードさんやフリーさん。ERPをどんどんSaaS化していくというアプローチをとられています。その中で我々は、モノとサービスの領域において同様のアプローチをとっていきたい。特に、今までエンタープライズがエクセルや手作業、自社開発で補っていた販売管理や契約管理をスモールからミドルのお客様に対してもご提供していこう思っています。

我々Alpが目指すのは、「モノ・サービスの領域において日本のより多くの企業が業務効率化ができるようになり、利益が上がっていく世界」です。スタートアップではあるものの短期決戦型ではなく、ある程度時間のかかるビジネスモデルであると感じているので、一緒に働いてくれているより多くの仲間たちの人生にとって良い環境を提供し続ける必要がある。事業だけでなく会社としても長期的にAlpで働き続けたいと感じられる環境や制度を整えていきたいと思っています。

SPROUNDから見える開放的な風景は、高いレイヤーで物事を考えさせてくれる

稲田:最後にSPROUND初の卒業生である卒業生であるAlpさんからSPROUNDでよかったこと、今後入居する企業さんに対して一言いただけますか?

山下:Alpは企業の拡大に伴って6月にSPROUNDを卒業させていただきましたが、本当にいい環境だったと感じています。切磋琢磨できるスタートアップの皆さんが周りにいたり、いつも適切なアドバイスを下さったり、会うべき方々を紹介してくださるDNXさんと物理的・心理的距離が動く近かったことが僕たちスタートアップにとっては非常に心強い環境でした。あとは運営の方々がとても丁寧で優しく対応してくれたことで、とても居心地がよかったですね。特にAlpは運営の金谷さんには助けられっぱなしでした(笑)

オフィスで困ったことがあったり、機材を貸し出して欲しいときには金谷さんにSlackで相談するとあっという間に解決していただけたり、コーヒーを飲みながら休んでいるときには「山下さん!」と言う感じに話しかけてくれて休み時間もすごく楽しく過ごすことができて。非常にいい空間で働くことができたなと感じています。

今後SPROUNDに入られる方には、個人的な推しポイントの「窓から見える開放的な風景」をぜひ一度みていただきたいですね。自分の感覚的なところもあると思いますが、高いところから見えるひらけた景色は、目の前の課題に集中して狭くなった思考が解放され、高いレイヤーで物事を考えさせてくれるようになるんですよ。開放的な景色を前に小さいことを考えられなくなる感覚です。そう言った意味でSPROUNDから見えるあの景色があったからこそ、より会社の目指す方向であったり、プロダクトとしてどう言う世界を作るべきなのかと言うことを実際考えられた気がしています。

逆に目の前のことに集中しなきゃいけない場合はMoonと呼ばれている集中スペースに行ったり、SPROUNDの至る所に置かれている植物をみながら作業をしています。目の前のことにも、ビジョンなどの高いレイヤーのことにもどちらにも頭を切り替えやすいと言うところでもSPROUNDはすごいいい環境だなと思っています。入居に迷っている方はぜひ一度SPROUNDにお越しいただいて見晴らしのいい景色を見ながら考え事をして、入るかどうか決めていただければと思います。

SPROUND最初の卒業生となったAlpのインタビューはいかがだったでしょうか?日々飛躍しているAlpの裏には、プロダクトへの並大抵ではないこだわりがあることが伝わってくるインタビューでした。

改めまして、Alp山下さん、DNX Ventures稲田さんインタビューのご協力ありがとうございました。SPROUND一同Alpのさらなる飛躍を応援してまいります!

現在Alpでは採用活動を行っていますので、今回の記事でAlpを気になった方はぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。


(文:平松 映人 / 聞き手:稲田 雅彦 / 編集:上野 なつみ)

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