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日本でスポーツをするということ〜なぜストイコビッチはベンゲルとアーセナルに行かなかったか〜

ヴィッセル神戸に、イニエスタ、ビジャ、ポドルスキー、サンペール、鳥栖に、トーレス、名古屋にジョー、ラグビーでは、神戸にダンカーター、トヨタに、NZ現役主将リードと、ビッグネームが、日本のプロスポーツに。ヴィッセル神戸の試合などは、アウェーでも、多くの観客動員があり、メディアの注目を集めている。Jリーグも外国人枠を広げて、外国人選手の参加を促している。
ヴィッセル神戸の場合は、楽天グループ・三木谷氏の招聘費用の捻出もあり、イニエスタの高額年俸を払えるキャパシティ"も"、イニエスタ招聘の理由とされている。中国リーグや中東のリーグも外国人選手の招聘に、高額オファーをしており、日本には、なかなか良い選手が来ないのではないかと言われていた矢先に、ヴィッセル神戸や鳥栖がビッグネームを連れてきて、日本もやるなぁ、という機運もある。

では、ビッグネームが日本でスポーツをするのは、マネーが最大の理由なのか?答えは、ノーである。もちろん、ラグビートップリーグに、NZ、オーストラリア、南アフリカの選手が来るのは、比較的日本のラグビーは待遇がいいのと、シーズンの空きに丁度いいという話もあるが、それだけだろうか?

日本人からみると、よく来てくれた、と思う。が、彼ら彼女たちが日本で、スポーツをする大きな理由が、今週のnumberの外国人Jリーガー特集の、ストイコビッチ、ドゥンガの記事に、そのヒントが、彼らのコメントの中にある。また、同様なことは、サンペールの来日記者会見でもコメントしている。

ストイコビッチは、間違いなく、日本に来た最高の外国人Jリーガーのひとり。その技術や実績は、説明の必要はない。彼の名古屋グランパス在籍中に、ベンゲルが監督となり、天皇杯も優勝した。そして、ベンゲルは、その後、アーセナルの監督となり、プレミアを連覇し、レジェンドとなった。彼は、ストイコビッチをアーセナルに強く、連れて行くことを強く希望したという。では、なぜストイコビッチは、ベンゲルのアーセナル招聘を断って、Jリーグに残ったか。(詳細は、numberのネタバレになるので、割愛する。)

名古屋の学校に通いはじめていた子どもの教育環境、家族の尊重、である。
この記事の時にも懐かしい日本の取材ということで、長女のアンドレアさんも同席していたという。家族全員が日本を愛している。
ドゥンガは、Jリーグ参加の理由として、Jリーグの運営の素晴らしさ、をあげている。
サンペールも、来日記者会見で、兄弟が神戸に旅行に来て、その素晴らしさを、サンペールに伝えたという。
つまり、「家族の環境、教育、治安」「Jリーグのオペレーションクオリティ」が、お金以外の大きな来日理由である。ストイコビッチは、国状が安定しない自国リーグで、サッカーができなかった。イニエスタも、キャリアの後半を、環境も治安も教育レベルも高いところでサッカーをしたかったのではないか。

昨今、日本のスポーツ、日本のスポーツビジネスは遅れている、と述べる評論家のような人が目立つ。しかし、その進んでるいると言われるアメリカでは、子どもがひとりで歩いてスポーツ場に行って、ひとりで帰るようなことはなかなかできない。特に夜は、女性や子供が、スポーツの後に歩いて家に帰ることができない。
もっといえば、世界の大多数の国では、スポーツの後に、水道の水さえ、飲めない。サッカーやバスケットをしたくても、できない環境の国が多くある。

多くの日本に来る外国人選手たちは、その日本のスポーツ環境や生活の環境をリスペクトして、来ている。さらに、リーグの運営やオペレーションのクオリティもリスペクトし、快適に思い、競技に集中している。
つまり、日本のスポーツ界は、「国としての環境・インフラ・教育レベル」「リーグとしての環境・インフラ」が、大きな魅力の付加価値であり、来日理由になっている。日本に、ラグビーワールドカップ、オリパラ、関西マスターズ、世界水泳などが来る大きな理由も、オペレーションのクオリティやインフラのクオリティでもある。

僕が、IOCのあるスイス・ローザンヌのスポーツ大学院で講義を行ったときも、世界30カ国から来ている大学院生達も、日本で働いてみたいと、インターンや就職の希望のメールがたくさんきた。また、FCバルセロナで働いていたときも、バルサ職員達は、本当に日本に行きたいと、皆憧れてさえ、いるようだった。治安の良さ、街の清潔さ、クリーンさ、電車や飛行機の正確さ、食事の美味しい、多様さ、教育、自然の風光明媚、そして、スポーツ運営の正確さ、安全性。

日本は、日本のスポーツとその国の魅力を再認識して、外国人選手の招聘と、日本スポーツのブランディングを海外にもっとアピールすべきではないか?

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