
いつもの食卓から明日の世界をのぞこう 【英国編】
最近ヨーロッパのニュース記事を見ていると、写真にはマスクにコート姿の人たち。日本ではやっと過ごしやすくなったところですが、ヨーロッパはもう冬支度の季節ですね。
ビーチに行ったり、サイクリングしたり、そんな楽しい夏はとっくに終わってしまったみたいです。暗くて寒い冬が本当に辛いから、みんな夏だけは存分に太陽を浴びたい。ヨーロッパに住む人にとっての夏のバカンスはとっても大事なんです。
今思い出してみれば、わたし、10年間の欧州生活で実は一度も夏に休みをとったことがなかった。こどもと一緒の夏休みを確保したい同僚たちに代わり自分は決まってお留守番役。それでも週末といえば、街のマーケットに買い物に行っては近くの公園でピクニックを楽しみ、遠くには行かなくても夏を満喫していました。
こうやってお金も時間もかけずに普段の延長線上でできちゃうプチレジャーがヨーロッパの街中でも可能なのは、たくさんの緑に覆われて歩いたり寝そべったりがとっても心地のよい公園があるから。コロナ過では身近に息がぬける街の空間が大事になってくると思います。
そしてそんな時に必ず登場するのが、食べ物や飲み物。冒頭の写真は、ロンドンでのピクニック風景です。こんな感じで、なんでもないものをつまみながら公園で過ごします。
国や文化を超えても変わらないのは、美味しいものが人を動かすということ。でもこれは2017年のブレキシットを確実にした総選挙の前です。あの頃はなんでもなかった食べ物たちも、来年はちょっとだけ贅沢品になるのかもしれません。フランスのチーズにイタリアのミネラルウォーター、これらEUからの輸入品があたかも国産品のように手に入るのは、英国がこれまで移民政策や自由貿易に関する協定等をEUと結んでいたからこそあり得たことです。
でも国益のためには、これら人や食、モノの交流面での利点を投げ売るべきと、英国国民は選択しました。
そしていつもより「動くこと」が注目された今年の夏でしたが、先日、英国のようにEUには加盟していないスイスでも移動の自由に関する国民投票がおこなわれました。結果は、EUとの関係維持を支持する票が半数を上回り、周辺国と強調しながらこの移動の自由を維持することが重要であると、民意の確認ができたことになります。
とても興味深い結果だと思いました。コロナという危機を前にしても、自国の損益を最優先にすべき状況においても、EUとの協調がスイスの将来にとっては必要だと国民が考えている証となったこの投票結果は、コロナ前の英国のそれとは正反対だからです。
「スイス人がフランス産チーズを、フランス人がスイス産チーズをこれまでのようには食べられなくだけだ」
投票前、EUからの移民を追い出したい右派はこのように豪語していました。でもそれだけではないデメリットをスイス国民の大多数からは見透かされ、彼らポピュリストにとってはさらに寒い冬の始まりとなるんでしょうか。でも明らかなのは、どっちに投票した人でもラクレットはスイス産チーズで頂く冬には変わりがないはずです。そしてフランス人は何時でも決してスイスチーズには近寄らない。。笑
スイスは四方をEU加盟国フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアに囲まれた小さな国です。島国のわたしたちに「移動の自由」ってわかりずらい感覚かもしれませんが、夏のバカンスだけでなくてもEUの人たちは国境を越えて仕事に行ったり、買い物に行ったりするのが日常です。でもこれはたかだか20年の日常。10代の頃家族で欧州旅行した時には、夜行列車の中でパスポートチェックがあったのを覚えています。