MLBドラフトの基本ルールと変更点(2022年新労使協定Ver)

 2022年から始まる新労使協定によってドラフトのルールが少し変わったので、更新しました。変更点がある場合は説明の下に→マークがあるので、それで確認してください。今現在分かっている暫定的なものなので、今後また更新するかもしれません。
 また、誤りもあるかもしれませんので、お気づきの点があればコメント等で指摘してください。
 変更に対する雑感はまた、別のnoteで書く予定です。

・基本


・開催時期及び参加者及び指名順
 毎年6月に開催。MLB30球団が参加。リーグを問わず、勝率が低い球団から指名していく。
→7月1日~20日の間に開催。MLB30球団が参加。リーグを問わず、勝率が低い球団から指名していく。ただし、2023年からロッタリー制度導入。詳細は次項。

・ロッタリー制度(新設 2023年からスタート)
 
上位6個の指名権についてはドラフト開催年の前年のシーズンでプレーオフに出れなかった18球団が参加する抽選により割当たられる。全体1位指名権が獲得できる確率は、前年のシーズンの勝率が最も低かった3チームが高く設定されており、それ以降は勝率の高さに応じて低くなっていく。全体1指名権が獲得できる確率については以下の通り。

凡例
前年度勝率/確率

ワースト1位~3位/16.5%
ワースト4位/13.25%
ワースト5位/10%
ワースト6位/7.5%
ワースト7位/5.5%
ワースト8位/3.9%
ワースト9位/2.7%
ワースト10位/1.8%
ワースト11位/1.4%
ワースト12位/1.1%
ワースト13位/0.9%
ワースト14位/0.76%
ワースト15位/0.62%
ワースト16位/0.48%
ワースト17位/0.36%
ワースト18位/0.23%

 抽選が外れた球団の指名順は前年シーズンの勝率の悪い球団からとなる。
 収入分配を受けている球団は3年以上続けて上位6位以内の指名権を得ることはできない=2年連続で上位6位以内の指名権を得た収入分配を受けている球団は次の年は抽選の対象外。
 収入分配を受けていない球団が上位6位以内の指名権を得た場合、次の年は抽選に参加できない。
 プレーオフに進出した球団は、ポストシーズンでの敗退が早い順に指名する。(ワイルドカード敗退球団→ディビジョンシリーズ敗退球団→リーグチャンピオンシリーズ敗退球団→ワールドシリーズ敗退球団→ワールドチャンピオン球団)
 同じシリーズで敗退した球団が複数出ることになるが、その場合は一方が収入分配を受けている場合は収入分配を受けている球団が優先され、どちらも収入分配を受けていない、もしくは、どちらも受けている場合はレギュラーシーズンの勝率の悪い方が優先される。


・指名対象
 アメリカ、カナダ、プエルトリコの国籍を有する者、もしくはアメリカ領出身の者でかつて一度もMLBと契約(マイナー契約を含む)したことがない選手。また、その他の国籍であってもアメリカ国内の高校、大学に在籍している選手は対象となる。

*指名対象となるその他諸条件
・高校生の場合、卒業予定で大学・短大に進学しない選手。
・大学生の場合、ジュニアもしくはシニアの学年の選手。もしくは、ドラフト日において21歳の選手。
・短大生の場合、学年は問わず指名対象となる。


・契約期限
 球団は8月1日の午後11時59分までに、指名した選手と契約しなければならない。契約を拒否した選手は次年度のドラフトでも指名対象となる。ただし、同じ球団が2年続けて同じ選手を指名するには、その選手の同意がなければならない。

・ドラフト対象からFAへ
 ドラフト対象でいずれの球団からも指名されず、大学への残留、大学・短大への進学をしない選手はFAとなり、いずれの球団とも契約が可能となる。


・契約失敗時の補償
 1巡目及びCP、CBPA、2巡目、CBPB(CP等の詳細は後述)、3巡目指名の選手と契約できなかった場合、翌年のドラフトで契約できなかった選手を指名した直後の指名順位が割り当てられる。
(例:A球団が2018年度のドラフトで全体10位の1巡目で指名した選手と契約できなかった場合、A球団は2019年度のドラフトでその年の1巡目指名権とは別に全体11位指名権が割り当てられる)


・指名権のトレード
 CBP以外の指名権のトレードは不可。

・ボーナススロット及びボーナスプール


・ボーナススロット
 上位10巡目までの各指名順位に定められた契約金の目安額の事。ボーナススロットは目安であるため、それ以上もしくはそれ以下の金額で契約することは可能。
→上位10巡目までの各指名順位に定められた契約金の目安額の事。ただし、ドラフト前に行われるコンバインでメディカルチェックを受けた選手とは、最低でもボースナススロットの75%の金額で契約しなければならない。
 メディカルチェックを受けた選手が契約に至らなかった場合FAとなり、他球団と契約が可能になる。


・ボーナスプール
 球団ごとにボーナスプールを10巡目まで合算したもの。上位10巡目までなので、CPやCBPで増えた指名権のボーナススロットもボーナスプールに含まれる。
(例:CBPを1個有しているA球団のボーナスプールはCBPも含めた11個の指名権のボーナススロットの総額となる)。
 ボーナスプール以上の契約金額を費やした場合はペナルティが課される。(例:全体1位のボーナススロットが$7Mの場合、$7.5Mでも$6Mでも契約が可能であるが、ボーナスプールが$15Mの場合、$15Mを超えるとペナルティとなる。そのため、上位10巡目までに指名された選手が、その順位に定められたボーナススロット以上の金額を要求した場合、球団は上位10巡目以内に指名した他の選手とボーナススロット以下で契約し、ボーナスプール内に収まるよう調整する必要がある)


・上位10巡目以降
 11-40巡目指名の選手で$125K以上の契約金を費やした場合、その超過額はボーナスプールに加算される。
→11-40巡目指名の選手で$150K以上の契約金を費やした場合、その超過額はボーナスプールに加算される。


・契約失敗時のボーナスプール 
 1~10巡目で指名したものの、契約に至らなかった場合、その指名順位分のボーナススロットはボーナスプールから差し引かれる。つまり、指名できなかった選手分のボーナススロットを他の選手に割り当てることはできないということになる。
(例:ある球団のボーナスプールが$15M、1巡目のボーナススロットが$7Mの場合、1巡目の選手と契約に失敗するとボーナスプールは$8Mとなる。〈$15M-$7M=$8M〉)


・ボーナスプール超過のペナルティ
 
以下の通り。
①上位10巡目までの契約総額がボーナスプール総額より0~5%多い場合
→超過額の75%の罰則金。
②            〃         より5~10%多い場合
→翌年の1巡目指名権剥奪、超過額の75%の罰則金。
③            〃         より10~15%多い場合
→翌年の1巡目及び2巡目剥奪、超過額分の罰則金。
④            〃         より15%以上多い場合
→翌年の1巡目及び翌々年の1巡目剥奪、超過額分の罰則金。


・コンペティティブバランスピック(以下CBP)


・CBP
 2012-2016年間の選手会との労働協約で実装され、2017-2021間の労働協約で修正されたものである。MLB30球団中、収入が最も少ない10球団と市場規模が最も小さい10球団が対象となる。1度のドラフトで最大20球団がCBP割り当ての対象となる。CBPにはAとBの区別があり、Aは1巡目と2巡目の間に配置される。Bは2巡目と3巡目の間に配置される。


・CBPA及びBの割り当て基準
 2017-2021労働協約においては、CBPAは原則として勝率と収入の多さによって、6球団に割り当てられる。CBPBは6~8個、CBPAが割り当てられなかった球団に割り当てられる。CBPの割り当てを受ける球団は2017-2021労働協約の間は原則として変更されず、CBPAとCBPBの割り当てを受ける球団のグループは2017年を基準として、年度が替わるごとに入れ替わる。(例:2017年度CBPA:A球団、B球団、C球団、D球団、E球団、F球団 CBPB:甲球団、乙球団、丙球団、丁球団、戊球団、己球団とすると、2018年度はCBPA: 甲球団、乙球団、丙球団、丁球団、戊球団、己球団 CBPB: A球団、B球団、C球団、D球団、E球団、F球団となり、2019年度は再度2017年度のように割り当てられる)
 オークランド・アスレチックスはCBP制度開始以来対象となっていたが、2020年から収入分配システムから外れたため、CBP対象球団ではなくなり、入れ替わりとしてデトロイト・タイガースがCBP対象となっている。 


・IFAボーナスプールとの関係
 CBPの割り当てを受ける球団はインターナショナルFAのボーナスプールの最大額も他の球団よりも増える。通常$4.75Mのところ、CBPA対象球団は$5.25M、CBPB対象球団は$5.75Mとなる。


・トレードについて
 CBPは他の指名権と異なりトレードが可能。ただし、金銭のみとのトレードは禁止。また、CBPの譲渡球団はCBP対象の球団に限る。そのため、CBP対象以外の球団がCBPをトレードで獲得してもそれを再度トレードすることはできない。しかし、CBP対象球団がCBPを譲り受けた場合、それを再度トレードすることは可能とされている(前例なし)。

・QOとの関係

・QO拒否選手と契約した場合における指名権没収
 QO拒否選手と契約した球団の指名権没収は、その球団の財政状況によって3つのパターンに分けられる。しかし、いずれの場合もその球団が持つ最高指名順位の指名権は没収の対象外となる。また、指名権を没収されると、その分のボーナスロットも没収されることなり、それに伴いボーナスプールも減額される。

①QO拒否選手と契約した球団がドラフト前年のシーズンでラグジュアリータクス超過である場合。
→その球団が持つ上から2番目の指名順位と5番目の指名順位が没収。また、複数のQO拒否選手と契約した場合、上から3番目と6番目の指名順位も没収。

②〃が収入分配を受けている球団である場合。
→その球団が持つ上から3番目の指名順位が没収。複数契約した場合、上から4番目も没収。

③〃が上記2パターンに当てはまらない球団である場合
→その球団が持つ上から2番目の指名順位を没収。複数契約した場合、上から3番目も没収。

・QO拒否選手の契約時期
 QO拒否選手が、その選手がFAとなった翌年のドラフト後に契約した場合、指名権没収もCP割り当ても行われない。

→上記QOによる指名権没収制度は選手会とMLBがインターナショナルドラフトについて本年7月25日までに同意した場合、全てなくなる。


・コンペンセーションピック(以下CP)
 

・CP
 QO拒否選手が前所属球団とは別の球団と契約した場合に前所属球団に与えられる指名権。それも前所属球団の財政状況によって3パターンに分けられる。①~③の区別はQO拒否選手と契約した指名権没収のものと同じ。

①→4巡目終了直後のCP
→QO拒否選手が総額$100M以上or年平均$30M以上の契約をした場合→3巡目直後のCP
 QO拒否選手が総額$150M以上or年平均$40M以上の契約をした場合→CBPB直後のCP

②QO拒否選手が総額$50M以上で契約した場合→1巡目とCBPAの間のCP

   〃    総額$50M以下で契約した場合→CBPB直後のCP
→QO拒否選手が総額$155M以上or年平均$23M以上の契約をした場合→3巡目直後のCP
 QO拒否選手が総額$100M以上or年平均$30M以上の契約をした場合→CBPB直後のCP
 QO拒否選手が総額$150M以上or年平均$40M以上の契約をした場合→CBPA直後のCP

③→CBPB直後のCP
→QO拒否選手が総額$35M以上or年平均$18M以上の契約をした場合→3巡目直後のCP
 QO拒否選手が総額$55M以上or年平均$23M以上の契約をした場合→CBPB直後のCP
 QO拒否選手が総額$100M以上or年平均$30M以上の契約をした場合→CBPA直後のCP
 QO拒否選手が総額$150M以上or年平均$40M以上の契約をした場合→CBPA直後のCP+3巡目直後のCP

→上記のコンペンセーションピック新制度は選手会とMLBがインターナショナルドラフトについて本年7月25日までに同意した場合、全てなくなり、従前の制度が存続する。

・CPの指名順位
 同じ財政状況にある複数の球団が同一条件のCPを取得した場合、通常のドラフト通り、前年度の球団の勝率が低い球団のものが上位に配置される。

・プロスペクトプロモーションインセンティブセレクション(以下PPIセレクション)(新設)

 トッププロスペクトがサービスタイム削減のため意図的に開幕からアクティブロースターに入れないという事案の対策として設けられた。
 球団が以下の条件を満たした場合、ドラフトでの1巡目直後の指名権、もしくは、インターナショナルドラフトの追加指名権(選手会とMLBがインターナショナルドラフトについて本年7月25日までに同意した場合)が与えられる。

条件
・対象のトッププロスペクトがアクティブロースターに入っている。
・フルシーズンのサービスタイムをクリアする。
・主要アワードで得票が入る。

・ラグジュアリータクスとの関係


・ラグジュアリータクスを超過した場合のペナルティ
 2018年から、ラグジュアリータクスの基準額よりも$40M以上超過した球団は、その球団が持つ最高指名順位が10個後ろに下げられることとなった。(例:前年度の勝率を考慮すると本来全体20位の最高指名順位を割り当てられていたが上記基準を満たした場合、全体20位ではなく全体30位の指名順位となる)
 全体1~6位の指名権を持つ球団が上記基準を満たした場合、上から2番目の指名権が10個後ろに下げられることとなる。

・ドラフトアンドフォロー(新設)

 2007年~2011年の労使協定にあった制度の復活。指名された選手が契約をせず短大に進学した場合、短大のシーズンの終了後から翌年のドラフトが開催されまでの間、その選手を前年に指名していた球団はその選手と契約することができる。いかなる契約金額であっても$225Kを越える部分については、ボーナスプールの超過分に組み入れられる。

・インターナショナルドラフト(新設)

 選手会とMLBがインターナショナルドラフトについて本年7月25日までに同意した場合、2024年から始まる。詳細については不明。


以下参照

ドラフトの基本ルール(http://m.mlb.com/glossary/transactions/rule-4-draft)

コンペティティブバランスピック(http://m.mlb.com/glossary/transactions/competitive-balance-draft-picks)

QOとの関係(http://m.mlb.com/glossary/transactions/qualifying-offer)

ラグジュアリータクスとの関係(http://m.mlb.com/glossary/transactions/competitive-balance-tax)

2022年新労使協定による変更点(https://www.mlb.com/news/draft-rule-changes-with-new-cba?t=mlb-pipeline-coverage)
(https://www.baseballamerica.com/stories/guide-to-the-new-cba-draft-lottery-expanded-playoffs-and-more/)

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