3年後...2018MLBドラフトレビューARI

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント

1(25). マット・マクレイン(Matt McClain):SS:右投右打:5-10/175:Beckman HS:-($2.6364M)
しっかりとしたスイングでギャップを抜く打撃が魅力。パワーレスというわけではないが、小柄な体でどこまで長打を打てるかは疑問に残る。スピードがあり、肩も強く、身体能力的にはSSを守ってもおかしくないが、動きが悪く将来は2B/3B転向が濃厚。指名を蹴って、UCLA入りの決断を下した。

成績

当時は1巡目で指名するにはスケールの小さいタレントだと思っていましたが、3年後、より上位で指名されることになりこの指名自体はオーバーピックではなかったようです。高校時代のレポは現在にもそのまま当てはまっており、ヒッティングスキルは高いけれどパワーツールは疑問符つきで、守備ではSSに留まれるかは怪しいまま。大学を経て欠点は多少改善されたとは思われますが、より長所を伸ばして戻ってきたという方が正確かもしれません。


CBA(39). ジェイク・マッカーシー(Jake McCarthy):OF:左投左打:6-3/195:Virginia:$1.65M($1.8345M)
TB傘下のマイナーリーガー、ジョー・マッカシーの弟。大学最終年のシーズンは、手首の故障で出場機会が制限されていた。打撃ではコンタクトスキルと出塁能力が最大の武器。HRは多くないが、二塁打、三塁打を量産するタイプ。スピードがあり盗塁技術も優秀。広いレンジをカバーする守備が魅力だが肩は平凡。

成績

プロでは試合にさえ出ればソリッドな成績を残し、21年もマイナーで好成績をマークし、メジャーデビューも果たしました。コンタクトスキルの高さは衰えてはいませんが、プロレベルでそれなりに四球数を稼ぐとなるとやはり三振は増えてしまうようです。21年はマイナーで15HR、メジャーでも2HRをマークし初のシーズン2桁HRをマークしパワーツールで進歩を見せましたが、GB%が若干高く、メジャーのみの出場でシーズン2桁HRを打てるかは疑問が残ります。ただ、パワーツールで勝負するタレントではないのでそこまで気になるポイントではないでしょう。プロ入り後盗塁成功率を落とす選手が多い中で、高い成功率をキープし数も稼ぐ難業もやってのけています。守備でも足を引っ張っている様子はなく、ソリッドなレギュラークラスとして活躍できるのではないでしょうか。



2(63). アレク・トーマス(Alek Thomas):OF::左投左打:5-11/175:Mt.Carmel HS:$1.2M($1.0355M)
小柄な体格というハンデが全く気にならないほどの野球センスの持ち主。コンタクトスキルも優秀だが、パワーも皆無というわけではなく、シーズン2桁HRをクリアできるレベルにある。時折スイングが不安定になり、ソフトコンタクトになるところは要改善。スピードはCFを守るには十分だが、肩は平凡。将来はLF転向もありうる。

成績

その年のドラフトクラスの選手を調べている時に、お気に入りの選手を見つけると将来こんな成績を残すんじゃないかと妄想したりするのですが、ほとんどの場合がそれは甘い見込みだったこと思い知らせるのですが、アレク・トーマスだけは当時妄想していた成績を上回るほどの活躍をしています。当時からトーマスのセンスを買ってはいたものの、やはり小柄すぎるサイズが気になり1巡目指名で消えるとは予想できませんでしたが、そんなマイナスポイントはどこ吹く風。2シーズン連続で100試合以上に出場し、いずれも2桁HRをマークし、パワーレスな印象は今では皆無。そして、マイナーとはいえプロ入り後打率が.300を下回ったことがない優秀すぎるヒッティングスキルには脱帽です。盗塁成功率の低さは気になりますが、純粋なスピードもトップクラスで、インプレーの打球を飛ばせばたちまち次の塁を脅かしています。守備でもアームの弱さが指摘されながらもそれでもCFに残した方がよいと言わせるスキルとレンジを兼ね備えています。おそらく今年メジャーデビューすることになると思いますが、デビューのタイミングによっては新人王争いに絡むのではないかと思っています。


3(99). ジャクソン・ゴダード(Jackson Goddard):RHP:右投右打:6-3/220:Kansas:$550K($565.1K)
最速97マイルの速球とブレーキの利いたスライダーで緩急をつけて、空振りを奪うピッチングスタイル。速球はノビがあり、高めに投げて空振りを奪うことができる。時折使うチェンジアップも悪くないボール。キャリアを通じてコントロールに苦しんでおり、この点が改善されなければリリーフ転向もありうる。

成績

プロ入り後は、懸念材料だったコントロールが改善され大学時代と同じスターターとして登板。19年には20試合に先発し100イニング以上を消化して防御率が3点台を下回る活躍を見せましたが、21年は故障でシーズン全休となりました。


4(129). ライアン・ワイス(Ryan Weiss):RHP:右投右打:6-4/210: Wright State University:$400K($422.1K)
速球は最速で、96マイルをマークすることもあるが、常時90マイル前半程度。それでも高い角度から投げ下ろすデリバリーのおかげで、球速以上に打ちづらい。アウトピッチはスライダーとチェンジアップ。カーブも投げるが、信用に足るボールではない。ストライクスロワーで、四球を出すことは滅多にない。レベルが上がるにつれて球威もないのに簡単にストライクを取りに行くと、痛打される場面が増えるところが心配な点。父親を自殺で、亡くしたことから、成熟した性格になり、コーチからは「成功を貪欲に狙う30歳」と形容されていた。ドラフトの5カ月前には、母親を心臓発作で亡くしている。

成績

19年までは上記のレポの通り、ストライクスロワーなスターターでしたが、21年にミドルリリーフに転向すると、ピッチングもモデルチェンジ。速球は最速の96マイルを連発するようになり、K/9も大幅に上昇。そのためか、若干四球は増えました。回跨ぎの登板が多かったのですが、1イニングに限定すればさらに出力が上がるのではないかとも予想されており、ドラフト当時とは別人のような評価に変わっています。余談ですが、自身のホームページを持っており、小まめにブログを更新しているようです。


5(159). マット・マーサー(Matt Mercer):RHP:右投右打:6-2/180:Oregon:$314.8K($314.8K)
速球は、常時90マイル前半だが、最速では97マイルをマークする。この速球に、カーブ、スライダーを織り交ぜるピッチングスタイル。大学では、学年が上がるごとに、K/9が高くなっていたが、それ以上にBB/9が悪化。コマンドの甘さも指摘されていた。球速の上昇には目を見張るものがあり、身体能力の高さからもブレーク候補に挙げられている。

成績

プロ入り後もコントロール難に苦しんでいる中、故障で21年シーズンは全休。今年の3月にリリースとなりました。

6(189). ライアン・ミラー(Ryan Miller):RHP:右投右打:6/180:Clemson:$25K($243.7K)
躍動感あふれるデリバリーが特徴。90マイル前半の速球とスライダーのコンビネーションを中心に、チェンジアップ、カーブでストライクを積極的に取りに行くピッチングスタイル。三振は多くないが、四球は滅多に出さない。早いカウントでゴロを打たせるグラウンドボーラー。大学時代はスイングマンとして活躍していたため、使いどころは多い。トミー・ジョン手術経験者。

成績

プロでは2シーズン投げて悪くない成績を残していましたが、20年のマイナーリーグ中断時にリリースとなりました。


7(219). トラビス・モス(Travis Moths):RHP:右投右打:6-1/190:Tennessee Tech:$20K($191K)
最速97マイルの速球とチェンジアップで緩急をつけ、空振りを奪うピッチングスタイル。大学では昨年まで、リリーフだったが今年に入って先発に転向。しかし、露骨に球速が下がるため、長所を生かすにはリリーフが最適のポジションだろう。大学入学時は、ひどかったコントロールも、ストライクを取るのに苦労することはないレベルにまで改善されている。

成績

19年の故障が長引き、21年シーズン開始直後に引退となりました。


8(249). リバイ・ケリー(Levi Kelly):RHP:右投右打:6-2/205:IMG Academy:$350K($158.5K)
最速95マイルをマークする速球が最大の武器。速球で空振りを奪うことができる点は評価できる。スライダーも向上の一途をたどっており、ボールゾーンへ落としたり、ストライクゾーンへ入れたりと扱いも上手い。チェンジアップも投げられるが、試合で使うことは滅多にない。デリバリーはデセプションに優れている。時折コントロールを乱し、自滅することがある点が玉に瑕。ハイテンポなピッチングスタイルと変化球のレパートリーの少なさからリリーフ転向も考えられる。

成績

19年にAで22試合に先発して好成績を残し、リリーフリスクを払拭したかのように思えましたが、21年は故障で出遅れ。リリーフとして復帰しましたが、コントロールの悪さが目立ち再びリリーフ転向へのリスクが高まりつつあります。速球は球速が上がり、縦に割れるスライダーもハイクオリティとドラフト当時からの長所はさらなる成長を見せましたが、チェンジアップやコントロールは足踏み状態のようです。また、速球は球速が上がったもののムービングに欠けている点が懸念材料です。とはいえ、スライダーのクオリティだけでゴリ押しすれば最低でもリリーフとしてメジャーで使えるレベルにはあると思うので、このまま長所を伸ばし続けてもいいのかもしれません。


9(279). タイラー・ホルトン(Tyler Holton):LHP:左投左打:6-2/200:Florida State:$144.8K($144.8K)
ドラフトイヤーをトミー・ジョン手術で全休。それでも、実力は折り紙付き。速球は最速でも92マイルと球威に欠けるが、正確なコマンドとクオリティの高いチェンジアップを使った緩急で打者を打ち取る術を身につけている。また、手術後のリハビリによるトレーニングで球速を上昇させることができれば面白い。

成績

トミー・ジョン手術後のリハビリによる球速上昇を期待していましたが、そんなことはなく、球速帯は当時のままのようです。ただ、コントロールのよさは変わらず、復帰した19年はA-で好投を披露。ただ、21年は球威不足がたたってかAAで打ち込まれることが多く成績を落としました。


+1
11(339). ブレイズ・アレキサンダー(Blaze Alexander):SS:右投右打:6/160:IMG Academy:$500K(-)
内野の送球で99マイルをマークしたこともある肩の強さをウリにしたSS守備は圧巻の一言。カバーできるレンジも広く、グラブさばきも上手いため、暴投を少なくできれば文句なしだろう。打撃では小柄ながらもパンチ力があり、長打を多く打つことができる。一方で、慎重なアプローチとコンタクトスキルの粗さによる三振が多い点は、マイナーのレベルが上がった際の懸念事項。マウンドでも肩の強さは健在であり、投手への転向も可能性としてはありうる。

成績

良くも悪くもドラフト当時の姿のまま。守備は相変わらず圧巻で、一歩目の速さと打球反応、アームの強さは既にメジャーレベルでフルシーズンプレーできれば最低でもGG賞ノミネートは間違いないでしょう。それを妨げているのが打撃です。21年シーズンはキャリア初の2桁HRをマークし、四球も多く選ぶことができていますが、前記2つを意識しすぎてか三振が多くなり、打率も上がらずという状態。今の打撃成績ではレギュラークラスは厳しいので、多少四球数を減らしても積極的にスイングをしかけてもいいのかもしれません。



総括(2018)
1巡目指名のマット・マクレインと契約できなかったものの、トータルで見れば悪くない指名だった。野手では出塁マシーンのジェイク・マッカーシーと野球センスの塊であるアレク・トーマスの獲得に成功。指名順位が落ちたブレイズ・アレキサンダーも面白い素材。投手では大学生を中心にバリエーションに富んだ顔ぶれ。ドラフトの評価は大方1巡名指名で決まる節もあるが、1巡目と契約できなかったことを差し引いても充実したドラフトであったと言える。

総括(2021)
当時の総括通り、1巡目不在を感じさせないドラフトとなりました。その最大の要因がトーマス。走攻守に隙がなく、ARIだけでなくNL、ひいてはMLBを代表するプレーヤーになるのではないかと期待しています。野手では、マッカッシーがメジャーデビューを果たし、アレキサンダーも苦戦しながらも守備では存在感を放つ等活躍を見せています。
投手はワイスが思わぬ形でメジャーまであと一歩というところに来ています。お金をかけてなかったこともあって、既にチームを去った選手が3人いますが、その3人以外はある程度将来のビジョンが見えつつあります。ケリーがリリーフに回ってしまう可能性が高いのはポテンシャルを考えると惜しい気もしますが、縦に割れるスライダーはリアム・ヘンドリクスのそれを彷彿とさせるものがあり、リリーフエースになれるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?