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【ラグビーのルールって複雑過ぎない?】ラグビーのルールについて、トップリーグのレフェリーに聞いてみた。

ラグビー観戦をするにあたって、一番のハードルがルールの多さと複雑さ。「今のなんでレフェリーが笛吹いたの?」「何が反則だったの?」という疑問は、誰もが持ったことがあるのではないでしょうか?

さらに、ラグビーはルールが頻繁に改定されるスポーツです。選手でも現行のルールを全て把握している人はほとんどいないと言われています。

では、なぜラグビーがそこまで複雑なルールを採用したり、ルールが頻繁に変わったりするのでしょうか。今回はトップリーグでレフリーを務める川原 佑さんに、ルール制定までの背景や意図を聞いてみました。


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川原 佑 レフリー (NTTコミュニケーションズ 所属)
27歳。2017年に最年少で日本ラグビー協会公認レフリーとなり、国内主要試合でレフリーを務める。U20世界大会やアジアラグビーチャンピオンシップなど国際大会でも主審を担当。ラグビーワールドカップ2019では、アシスタントレフリーリザーブとして審判団に加わった。


――今日はよろしくお願いします。早速、単刀直入に聞いちゃいますが、ラグビーはなぜルールが多くなってしまったのでしょう?

川原レフリー:
ルールの多い理由の一つは、ラグビーがコンタクトスポーツ(競技者間の接触のある競技)であることに起因します。選手の安全を守るために、それを阻害する行為は排除していかなければなりません。ルールを制定していくことで、選手の安全を保持したコンタクトスポーツとして成り立っているのです。


――なるほど。ルールの制定によって選手の安全性を守っているのですね。一方で、ラグビーは独特なルールがありますよね。典型的なのはアドバンテージ(※)とか。
※審判が反則を直ちに取らず試合を継続させること

川原レフリー:
アドバンテージは、ラグビーの面白さを維持させるルールだと思ってもらえると良いかなと。反則が起きるたびにゲームが止まってしまうと観ている側としては面白くないじゃないですか。ボールが動き続ける方がダイナミックで、競技としての魅力が高まるという意図があるわけですね。


――でも、アドバンテージを開始させるタイミングやオーバー(継続を解消)させるタイミングって、レフリーによって違うなと思うのですが、実際のところはどうでしょう?

川原レフリー:
そうですね。レフリーによって異なると思います。アドバンテージは、ルールの理解だけではなくて、状況の判断によっても変わるので。また、トップレベルのレフリー同士でディスカッションをしても、意見が割れるときは割れますね。


――ラグビーはルールの改定が多い印象なのですけど、そもそもルールって誰が決めてるのでしょう?

川原レフリー:
ルール改正が行われる場合、「World Rugby Law review meeting」というところで、ルールを決めています。ラグビーのルールを決める国際会議みたいなものですね。選手、コーチ、審判、ドクターなど様々な立場の人が、そこで議論を重ねて決めます。


――審判長みたな人が一人でバシッと決めているわけじゃないんですね!

川原レフリー:
違いますね(笑)「このルールは付け加えるべき」「このルールは改正すべき」というディスカッションを行い、ワールドラグビーで最終的に決めたものが各国のラグビー協会に通達されるプロセスになっています。日本からもそのメンバーに選ばれて派遣された者が先月フランスにいって参加しました。

ルールの改正の多くは選手の安全を守るものです。試合を積み重ねると、統計的にどのプレーが危険なのかを可視化することができます。ゲーム性を保持しつつ、その危険なプレーを減らすにはどうしたら良いのかを決めているのです。


――ラグビーのスポーツとしての面白さはそのままに、より安全なものにするためにルールの改正が行われているのですね。そういえば、前回のワールドカップではTMO(テレビジョンマッチオフィシャル)がよく使われていましたよね。TMOが導入されたのって最近ですか?

川原レフリー:
日本では2014年に導入されています。現在はトップリーグと日本選手権で採用されていますね。


――TMOみたいな新しいテクノロジーはレフリングにおいて、ポジティブな影響が大きいですかね?

川原レフェリー:
うーん、実は難しいんです。こういうテクノロジーを取り入れることで厳格にプレーを見ることができるようになった一方で、ラグビーは全てのプレーで白黒をつけていいものではないと思っているので。


――あえて、白黒をつけない部分があるということですか?

川原レフェリー:
そうですね。例えば、ブレイクダウンが発生しているところで、誰も人がいないのに偶然つまずいて転んでしまった選手がいる。それがラックのコンテストに影響しない場合は、オーバーザトップの反則は出しません。

レフリーは試合に影響のある反則を取るのも役割ですが、試合の進行を担うことも大きな役割です。反則自体、試合を止めてしまう行為ですし、TMOをするとさらに試合を止めてしまうことになります。

レフリー中でも、そのシチュエーションによってはTMOを十分活用すべきだという人もいれば、ない方がよいという人もいますね。


――TMOもレフリー陣で賛否が分かれるのですね。ルールの改正やテクノロジーの採用などでレフェリングも日々変わり続けているので、レフリーの方は大変ですね。

川原レフリー:
勉強の毎日ですね。ルールとともに、チームの戦術も変わり続けています。ですので、トップリーグやスーパーラグビーの試合、国際試合などは全て観ておかないといけません。世界中の試合を見て、どういった戦術を選んでいるのかを確認しておく必要があります。


――レフリーの方が様々な情報を元に的確な判断を出してくれるからこそ、私たちがおもしろい試合をたくさん見ることができるのですね。レフェリーとして日本のラグビーをどう盛り上げていきたいですか?

川原レフリー:
私としては、今後は知識をつけていくとともに、国際試合を担当しながら、レフリーとしての経験ももっと積んでいく必要があると思っています。

ワールドカップの影響で日本のラグビー界は盛り上がりましたが、国内のレフリーもしっかりとレベルアップしていかないと、日本にラグビーが定着していかないと思うので。知識も経験もレベルアップして、レフェリングの面でラグビー界を支えたいと思います。


――ありがとうございました。


NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス サポーターズ倶楽部では、川原レフリーとフロントローの選手によるスクラムのルール改定に関する対談も楽しめます。
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