見出し画像

第2話 座学【Ocean College 伊豆半島~三崎編 】

【Ocean College 伊豆半島~三崎編 OC01 】

⚓︎ この記事は2019年11月に伊豆半島で開催し、月刊Kazi誌に掲載された【Ocean College(オーシャンカレッジ) 】の長編記事になります。

画像1

11/22 座学

今日は朝から冷たい雨が降り、船を港に停めた状態で、雨の小ぶりな午前中セイルの取り扱い(セイルハンドリング)、午後には船の安全を確保するために必要な知識を学ぶ座学を行うことにした。

帆船では一人でセイルを扱うということは基本的にない。構造上できないと言っていい。セイル一枚を取り扱うにも一旦、船上でチームを編成し、そのチームでセイルを揚げたり、畳んだり、風に合わせて操作したりする。チーム全体がうまく動くためには実際にロープを引くプレイヤーとチームの動き全体とセイルの様子を見ながら号令を出すコマンダーに別れる必要がある。
セイル一枚上げることはそんなに難しいことではないし港に停まっている船の上ではチームがうまく動いていなくてもなんとかセイルは上がってしまうもの、しかし一度海に出て、風の中でいざセイルを上げようとしてもそれぞれのコミニュケーションがうまくとれていないとなかなかうまくいかない。
いくらセイルリングに関して知識や経験があっても、自分がコマンダーとして役割を担当した時に、チームの動き全体を見る能力がなければセイルを一枚上げることができない、またプレイヤーとしてロープを引く役割を受け持っても、担当しているロープがどのような役割を担っていて、コマンダーの号令を正確に理解していなければ、これはまたうまくいかない。
これはセイリングとはまた違った能力やスキルが必要になる瞬間なのだと思う。

帆船ではそんな瞬間がよくある。

画像2

午後の座学では、船を守るためにに必要な安全についての座学

船の救命設備・もしもの時の対応・低体温症・ロープワーク・操舵の基本号令・海図の基礎について、一緒にディスカッションしながら進めた。

19歳で帆船の見習いになり、ギャレー(厨房)で皿洗いから始まり、内航タンカー、海外の帆船、帆船航海士、ヨットインストラクターと僕は野良犬のように海の世界をあちこちフラフラしてきて一つ思うことがある。

海の世界では「専門家」であることがとても素晴らしいこととして、評価されることが多いけれど、
「海を渡るには総合的な感覚」が必要だ。大型のタンカー船に乗っていては気づかないことがある。海外の帆船では勉強しきれないことがある。ヨットのレースでは学べないことがある。

海を数日間でも旅するということは、生活と、運航とが日々混じりながら船が進んでいくこと。

船を帆走らせること、クルーの食事、船内の清掃、安全の確保、気象、潮汐、航海計器、電気、機関、応急の手当、港の水路情報、歴史、メンテナンス・・・・

船に関わる知識は膨大だ。それもそのはずで、僕たちがフィールドにしている海は地球そのもので、船はその海の上で唯一の家として人間が存在・生存できる場所。

人が帆で船を帆走らせるようになって約6000年。筏や丸太をくり抜いたくり船も入れれば船の歴史は人の歴史そのものだ。
船のことを勉強することは人が地球を移動するのにどんな工夫をしてきたかを学ぶこと。

船上に理由のないもの、合理性のないモノは存在しない。

海や船のことを勉強しているとたくさんことが普段の生活に結びついてくる。そしてまた普段気にしていないことや、忘れてしまっていることも海に出ると自然にそれらが呼び起こされ、自分の普段の生活や日常に戻ってくる感覚がある。

だから僕はインストラクターとして座学を行うとき、「帆船」であったり「内航船」「ヨット」といったカテゴリーにとらわれず、自分の経験の中で感じた海の上で役立つ知識や必要な考え方を伝えるようにしている。すぐに帆船の歴史うんちくと酒と船の話に脱線してしまうのは反省している。


Ocean College 伊豆半島~三崎編の様子▼


【スピリット・オブ・セイラーズチャンネル】

【オーシャンカレッジ オンライン】



あなたのサポートのおかげで僕たちが修理している船のペンキ一缶、刷毛一つ、ロープ一巻きが買えます。ありがとう!!