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男が宝塚歌劇を愛するということ

宝塚は女性のものでもいいのだけれど

宝塚歌劇団が好きだ、と言ってかれこれ三年くらいが経った。

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(緊急事態宣言も明け、先日行った宝塚。雨にそびえる劇場もオツです。)

 大劇場には何回も足を運び、ブルーレイも恐ろしいほど買い、宝塚専門雑誌である「グラフ」「歌劇」「おとめ(選手年鑑のようなもの)」も一通り買っている。

 結構なファンだと思う。

 んが。

 職場だったり友人だったりに「タカラヅカ最高」と言うと、ほぼ決まって言われるのは

「でもやっぱり女性の方が多いんでしょ?」

 という一言であり、男である自分が宝塚好きであるということに対する、その人が発してくる違和感だ。

 確かに。確かに宝塚のお客さんは圧倒的に女性だ。

 その証拠に、宝塚の幕間休憩で、女性の方は「ここは何かを売っている売店か」というくらいに化粧室に行列ができる代わりに、男性の方はいつだっておひとり様くらいのレベルだったりする。

 公式ホームページの宝塚の歴史の中で、最初に行われた演目お伽(おとぎ)歌劇「ドンブラコ」の写真を見ても、お客さんは圧倒的に女性が多い(これは今回初めて気づいた)

 そう、今も昔も多分、宝塚の九割五分のお客様は女性だ。

 そして残りの五分の男性にしたって「妻に連れてこられた」という感じの男性もちらほら見かけるから、本当に宝塚が好きな男性と言うのは少ないのかもしれない。

 けれども。

 けれども、僕は言いたい。

 男性だって宝塚は楽しめるんだぜ、って。

世の男性が唯一、かっこいいと素直に言える存在が「男役」

 宝塚を宝塚たらしめているものの大きな要素の一つが

「全員女性で、男役も女性がする」

 ということだと思う。

 そしてその女性が演じる男性像に、女性がキャーッとなる、というのが一般的な宝塚歌劇のイメージでもあると思う。

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(こうみえても全員女性なのが宝塚です)

 女性がキャーッとなるものに、男性が同じようにキャーッとなることって、あまりない。

 例えばジャニーズのタレントに女性はキャーッとなるけれど、男性は「お、ジャニーズ」となりがちだ。街で会えたらそりゃ自慢するだろうけれど、「キャー!」とはならない。これには、異性愛に基づく感情というのもふんだんにあるのだろう。

 だから女性が宝塚の男役を見て「キャーッ!」となるのは、女性がその人たちを女性としてみてるのではなく文字通り「男」役として見ているからなのだと思う。

 じゃあ、男性が、女性であるけれど「男」の格好をしている宝塚歌劇の人たちを見て「げ、男の格好してる」と思うのかというとそうではない。

 実際に、毎回男役を舞台で見て思うのは

「なんでこんなかっこいい人類が世の中にいるのか…」

 ということである。毎回毎回飽きもせずに溜息出ちゃうレベルだ。

 そう、彼ら(彼女らでもある)はかっこいい。本当にカッコよすぎて、三十分に一回は

「はッ!この舞台に立ってる人全員女性だった!」

 と思わないと、男役の人は本当にかっこいい男の人だと錯覚してしまいそうになる。

 けど、そこが男が宝塚歌劇の男役を楽しめる一番のポイントなのだ。

 変な話だけれど、どんな男だって内心は「カッコよく思われたい」と思うものではないかと思う。

 かくいう僕だって、心の中にまだ少しは「カッコよく思われたい」という感情があるばかりに朝、服のコーディネートを考えることがあるくらいなのだから。

 そんな男たちにとって、世の中に存在する「かっこいい男」というのは、憧れでもあると同時に対立すべき存在だ。

 ジャニーズだろうがエグザイルだろうがBTSだろうが、遠くても近くても男は皆ライバルなのだ。

 だけどそういう悲しき宿命を背負った男達が、手放しで誰かを「かっこいい」と思っても良い場所。心の底からかっこいいものに、かっこいいと言える場所。

 それが宝塚歌劇なのだ。

 さぁ、安心してカッコよさを堪能しようじゃないか。

 そのカッコよさにキャーキャーしちゃおうじゃないか。


男性は娘役を「楽しめる」

 男性役のことを男役という一方で、宝塚歌劇では女性の役を演じる女性(ややこしい)は、「娘役」と呼ばれる。

 娘役を「楽しめる」と言ってしまうと

「うへへ、この舞台に立ってるのは全員女の子でやんすなげへへ」

 というゲスなことを考えているイメージを与えてしまうかもしれないけれど、少し説明させてほしい。

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 宝塚における娘役は「ファンの代わりに男役の最も傍にいる人」と言われることが多い。

 これはどういうことかというと、ミュージカル(ストーリーがあるもの)だろうとレビュー(ショー的なもの)だろうと、娘役の人たちは基本的に男役の人にうっとりしていることが多い。恋してることが多い。

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(左の写真とかだとわかりやすいかもしれないですね。にしてもどっちもかっこいいな…そしてジュリエット役の舞空さんが可愛い…)

男役に恋し、焦がれ、あこがれ、そばにいたいと思う。

そんな女性ファンの思いを背負って、その思いを舞台で体現するのが、娘役ということなのだ。

ずかほう

(客席の女性ファンのLOVEエネルギーをあつめ、男役に放つのが娘役)

 それゆえに、娘役の人は時に宝塚ファンの女性から厳しい目で見られることもある。

 踊りはどうなのか、歌はどうなのか、たたずまい、コメント力、etc…

 自分の代わりに大好きなあの人の傍に立ってもらう人なのだ。一言、二言言いたくなるのは人の性というものだろう。(言い過ぎは止めましょうね。)

 ところがどっこい、男性にとって、娘役というのは自分の代わりではない。

 男性にとって男役の人たちは「かっこいいと心の底から言える存在」であって、自分達がその人と恋愛したいわけではないのだ。

 だから男性は、娘役の方々を100%の娘役としての視線で見れる。

 素直にかわいい娘役さんには「あーこの人可愛い!」と思えてしまうし、ある意味心行くまで女優さんやアイドル的視線で見ることが出来る。歌が例え上手くなくても、ダンスがちょっと遅れても、「あの人の横にふさわしいか」とか思わずそれを「この人の個性」と思うだけでいい。

 これは、男性にしか楽しめない宝塚の楽しみ方なんじゃないかと個人的に思う。

 まとめ

 つまり男性にとって宝塚は、

 男役を「うわかっこいい」と俗世を忘れて安心して見ることができ

 娘役を「うわ可愛い、綺麗」と心の底から思うことが出来る

 そんな二通りの楽しみ方ができる夢の空間ということだ。一粒で二度おいしいとはまさにこのことだし、そんな楽しみ方があるのに宝塚歌劇を敬遠する理由は逆にない。

 そして宝塚の最大の特徴は、スポーツやギャンブルなどと違って「いつだって勝ちが確定している」ことである。贔屓を持てば持つほど、勝利の栄光は必ずあなたに約束されている。裏切られることは絶対にない。

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(勝利を約束された場所)

 さぁ世の中の男性たちよ、宝塚に行こう。

 そして私みたいに(もう抜け出せない)沼にはまっちゃおうじゃないか…

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(ちなみに演目も結構男性好みのものも多いと思うのです)

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