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ベトナム、ホーチミンで汎用エンジン2000台を改修する。

ベトナム市場へ汎用エンジンを販売する海外営業を担当してた時、初めて纏った台数の新型エンジンの商談が決まりました。台数は2000台、用途はメコンデルタ地域で利用されている小さな船の推進力のロングテール、と呼ばれる長い鉄のパイプにシャフトを通して先端にプロペラ・スクリューを取り付けたもの、もう一方の端にはエンジンのクランクシャフトの端(PTO:power take off)とつなぎ合わせ、その動力源とするものです。

真っ直ぐなロングテールのプロペラの付いた片方を船の上から水中へ沈めると、もう片方のエンジンが上がる、シーソーが一方に傾いた形で利用される感じになる。不幸な事に燃料タンクに直に取り付けられたフューエルコックは、プロペラと反対のそれも先端に位置する形で利用される。当然、燃料タンクも傾斜した状態で利用される。エンジンが止まって再始動出来ないユーザーは、燃料タンクの蓋を開けて燃料の残量を見ると半分は入っているように見える。でもフーエルコックが取り付いた位置には燃料面が到達してなく、燃料がキャブレターへ流れない。これが大きなクレームとなって対応を迫られました。

対策部品は、既に技術部が手配しているが、ホーチミンの倉庫に到着した2000台をどうするか?を考えなけばなりませんでした。選択肢としては、3つ。

1. 船で日本へ送り返して生産ラインに戻して対策部品を取り付ける。
2. 現地で現物を廃棄して、対策部品を組み付けた製品を新たに輸出する。
3. 現地の倉庫で対策品の取付け作業を行う。

一番コストがかかるのは1.で工場側はやれと言われればやるとは言ってくれましたが、代理店と相談して、私としては手っ取り早い2.をお願いしたかったのですが、先方は「どこに捨てるんですか?」「どこか人の居ないような海なんかダメ?」「ダメですよ!」とごもっともな返事をされ、3.をやる事にしました。

では、誰が作業をやるのか?これが次の問題でした。多分、8人で2週間くらいと想定して1週間は、カントーで対策済みエンジンでロングテール走行テストをする予定で3週間の出張を計画しました。作業員は代理店が現地調達し、賃金は現金で手渡す(非常に安価だったので銀行を経由する程でもない)事にしました。結局、自分で作業指導と完成検査をやる事にして、対策部品2000台分と必要な工具類の輸出手続きをしてホーチミン到着予定日から2日後くらいを目掛けて現地入りしました。

ホーチミン市内にある倉庫にエンジン2000台のカートンボックスが積まれていました。対策部品のパレットも同じ場所にありました。事前にリクエストしてた作業員も既に倉庫へやって来てました。代理店のマネージャに通訳をお願いして作業手順の説明と作業デモをやりました。工具を各人に配布して各自作業台の場所を決めて早速作業を始めました。初日は、不慣れなこともあり、これ2週間で終わるかなぁ〜と不安に思いましたが、次の日から作業ペースはどんどん加速されていき最終的に予定の2〜3日早く作業を終えてしまいました。「これで完了!皆さん、ありがとうございました」と挨拶すると代理店のマネージャが「〇〇さん、凄い!本当に2000台をやったんですね!わあ〜」と自分でも信じられないと感激し出したのです。もしかしたらこの代理店マネージャは、出来ないと思ってたのかもしれません。

作業が早く終わったお礼に全員を市内の海産物レストランへ招待し、水槽から生きた蟹、海老、貝を取り出して焼いたり蒸したりして全員お腹一杯食べました。当時のベトナム通貨ドンのレートがゼロが多過ぎて良く分からなかったですが、多分100米ドルをちょっと越すくらいで一番高いモノは缶ビールだったと記憶してます。

この時、分かったこと、ベトナム人は勤勉で学習能力も高く真面目だということ。1992〜3年頃の話でした。

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