「ラ・マンチャの男」、主演者とカフェで遇う
ちょっと前に日本でもロングランヒットしたミュージカル「El hombre de la Mancha」ラ・マンチャの男(松本幸四郎主演でしたか、、)を1988年にリマ市ミラフローレス地区のマルサーノ劇場で面白くて3回くらい観ました。
主演は演出も兼ねるオスバルド・カットーネ(Osvaldo Cattone)、生まれはブエノス・アイレスのアルゼンチン人ですがペルーに定住して国籍も有しています。Wikipediaを読むと御年87歳です。YouTubeにもいくつか動画が公開されています。TEDxLima(https://www.youtube.com/watch?v=XHnDNkW94Eg&t=969s)語ってもいます。彼は、若い頃は20年くらいイタリアに住んでたようです。この辺は、あのモダンタンゴの巨匠アストール・ピアソラと同じ様な欧州での生活体験の様です。
彼はこのミュージカルの演出・主演で、ドン・キホーテの役でした。スペインのミゲル・デ・セルバンテスが書いた古典中の古典から芝居用に脚色され、ミュージカルになりました。音楽、歌唱力、芝居のうまさ、アドリブのうまさ、初めて観た時は、本当に驚くと同時に感動しました。ドン・キホーテの書籍自体は、分厚くて読む気がしなくなります。原書でも読もうとしましたが、そもそもスペイン語が当時のままで現在のものと随分と違う綴りの単語ばかりです。あらすじは、ラ・マンチャ地方に住むキホーテというお爺さんがサンチョ・パンサという相棒(下男の役)とロシナンテという馬(ロバかも)を連れて冒険の旅にでるというものです。キホーテは、中世騎士道の本を読み過ぎて現実と妄想の世界の区別が付かなくなり、色々問題を引き起こすことがらを書いたものです。このミュージカルではドゥルシネアと言う女性(酒場の娼婦)とのやり取りが中心になっています。客にいつも蔑まれている気の荒い彼女をいつも淑女扱いするキホーテは、彼女から最初はからかっているのかと腹を立てられ、そのうち頭がおかしくなった老人と見られます。しかし、最後にはキホーテの純粋な人柄に感動してしまうという物語です。
面白くて3回見に行きましたが、2回目の時に友人の一人が劇場でパンフレットを購入し、近くの洒落たカフェで感想を言い合いました。そうしていると私たちのテーブルの前を通り過ぎて通路を挟んで斜め前のテーブルにオスバルド・カット―ネが連れと座ったのでした。私は直ぐに気付き、友達に「あそこに今見たミュージカルの主役が座っているよ」、皆一同振り返りながら確認しました。「そうだよ、彼だよ」。私は、友人に「パンフレット買ったんだからサインぐらいもらったらどう?」と提案しました。「いいですよ、言葉うまくしゃべれないから」と遠慮気味でした。私は、彼のパンフレットを持ってカット―ネのテーブルに行って「すみません、あなたはオスバルド・カット―ネさんですよね?」、彼はニコリとして「そうですよ」、「私たちたった今、ラ・マンチャの男を観たばかりなんです」、「そうなの!ありがとう。あなたたちはどこの国から来ているの?」、「日本です」、「ミュージカルはどうでしたか?内容分かりましたか?」、「ええ、感動しました。素晴らしかったです」、「分かるよね、いい話でしょ?」、「はい、ところでサインをこれにいただけませんか?」、「もちろん」と丁寧にサインをしてもらい、感謝を述べて席に戻りました。
それから32年、YouTubeでみる彼は87歳と思えません、彼自身は18歳の頃と気持ちは変わらないとあるインタビューで言ってました。このミュージカルの歌も彼が歌ったものが私は一番気に入っています。YouTubeで見る彼は、サインをもらった時と同じ感じでした。人柄ですね。
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