見出し画像

事務所の小口現金が盗まれる事件発生

ある時、エクアドル事務所の小口現金から900米ドルが盗まれる事件が発生しました。経理及び安全対策担当をしていた私は、その時のことを鮮明に覚えています。

通常、小口現金は小切手を切って現金化して執務机の鍵のかかる引出の金庫に入れます。その日は、急用が入って1時間ほど事務所をでなければなりませんでした。いつもなら現金化した直後ですから鍵をかけるのを忘れて外出することなどありません。事務所を出て車に乗った時に気付きましたが、直ぐに戻ってくるからと気がかりではありましたが戻って鍵を確認することなく外出先へ向かいました。仕事を終えて事務所に戻ると真っ先に小口現金を確認しようと引出を開けようとしました。すると引出になぜか鍵が掛かっていたのです。鍵を掛け忘れたのに、鍵がかかっている、と言うことは誰かが鍵を掛けたとしか思えません。私の部屋は個室で、入ってくる人は限られています。特に現金を扱っていることから私が居ない時に入っても疑われない人は、日本人の駐在者である同僚Aと同僚B、他はローカルスタッフの経理アシスタントの1名のみです。

直ぐに小口現金を確認すると900米ドル分不足しているのが分かりました。ご丁寧に全部では無く、一部を抜いて札束が見た目で減っているのが分からないような金額を抜いていたのです。早速安全対策クラークに相談し、彼が二名の刑事を連れて事務所へやってきました。刑事が登場したことに驚いたローカルスタッフと同僚A/Bは、「何があったのか?」と尋ねてきました。同僚Aの部屋に調整員だけ集まって私から事情を説明しました。すると同僚Aは、「事務所内で事件を起こしてもらっては困る。我々の評価に関わる」、私は「この時期に現金が紛失していることは、以前から起きていたと法務担当のスタッフからも聞いてます。私が担当するようになってからはこれが初めてですが、もう放置はできません」、そして調整Aは「しかし、誰が盗むのですか?」と、。私は「小口現金が増えたことを知っている人、どこに現金があるのかを知っている人、鍵がどこにあって私が外出するときに鍵を掛ける習慣を知っている人は、たった一人のローカルスタッフしかいません」と言うと。同僚Bが「○○さん、ご本人はどうなんですか?」、「???」「私が自分の管理しているお金、それも900米ドルを盗む? 自分で補填しなければならないことを知っていてですか?」、同僚B「でも、それは無いとは言えないし、証拠はないですよね? ローカルスタッフを疑う前にご自身の潔白を証明してはどうなんですか?」。私は、耳を疑いました。同僚Aは、事務所で事件を起こすな(誰も好きで起こす人はいない)。もう一人の同僚Bは、私が一番怪しいのに他人を犯人に仕立て上げようとしていると言った会話でした。

二人の刑事は、淡々と指紋の採取を始めて安全対策クラークは、調整員会議からでてきた私と今後のことを話そうとして別の部屋へ行きました。そして、私から同僚二人の見解を告げました。安全対策クラークは、仰天して「そんな馬鹿な!法務担当クラークも現金が毎年紛失しているのは知っているし、同僚Aも昨年経理をやってたから経験しているはずですよね?」。私は、「確かにやっかいだけど、この辺で終止符を打たないと、どんどんエスカレートするかも知れないと思う」と言うと「まったくその通りです」と。

ここでも1つの事柄を協力して解決するのではなく、事なかれを貫きたい役人根性の同僚Aと、私を犯罪者扱いする同僚Bの二人が結託して刑事の捜索活動を妨害されたのでした。私が疑ってたスタッフは、刑事が事務所に入って来た時より顔面蒼白になりさっさと早退して事務所から居なくなりました。

この事件は、私が契約終了して帰国した時の報告書という形で本部には提出しています。やはり同僚Aの官僚主義的な態度は、問題と思いますが、同僚Bの私を犯罪者と疑う視点は、もう同僚ではないと宣言されたも同然ですので、こちらも態度を変えざるを得なかったです。たかだか900米ドルの為に私が嘘をついた上にローカルスタッフに濡れ衣を着せようとしたと思っている同僚がいることに驚きました。

それからは同僚であって同僚ではない関係が続きましたが、この件は、解決せずに終わってしまいます。900米ドルは私が補填しましたが額などはどうでもいいものですが、同僚にまず自身の潔白を証明しろと言われたことは忘れることができませんでした。世の中にはそういう人もいるという勉強になりました。

随分と時間が経ち、流石に同僚Bも多少は反省したのか、ある時「ローカルスタッフも色々心配していますから仲直りしませんか?」と言ってきました。本来なら「そうですね」と言いたいところですが、完全無視と業務連絡を伝えないなどありとあらゆる嫌がらせを1年以上も私に続けた後にローカルスタッフが言うからはないだろうと思いました。「私はもうすぐ任期が終わり帰国しますから、このままでいいでしょう?お互い話したくもないものを無理する必要はないと思います。」と返事しました。本人はがっかりして部屋をでていきましたが、良かったと思っています。

逆上する感情を制御できないタイプの同僚Bであったことは確かですが、本人なりの浅はかな理屈があったのかも知れません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?