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話芸、思わず笑ってしまう落語のススメ

いつの時からか出張時の長時間フライト中には映画と同じくらい落語を聴くようになりました。落語の一番気に入ってるところは自分の頭の中で想像した場面のキャラクターが噺家の話術によって自由に動き回り、想像の世界のその姿や会話に思わず噴き出して笑ってしまうところに有ります。別に見た目が面白おかしい訳ではなくあくまでも自分の頭の中に出来上がった状況とキャラクターを噺家が自由に話術を通じて動かして聴衆に想像させることで思わず噴き出すほどの笑を生むのです。これは間違いなく芸術ですね。

ここで一番重要なのは噺家が真っ先に作る状況の設定が聴衆の頭にしっかり出来上がるかどうかにかかってます。また、その状況設定以前に聴衆が噺家に注目、或いは集中してもらわないとなりません。噺の前段階です。ここでは噺家の独自の枕と呼ばれるイントロを披露します。いわゆる「つかみ」です。

一方で聴衆にも想像力が試されます。なぜか?それぞれの人の想像した場面は各人の世界でしか有りませんし、同じものは無いはずです。証明のしようもありません。個々人のこれまでの人生で経験してきたことや見てきた人たちの色々な場面で癖や性格のようなものが自然と混ざり合って自身の頭の中で描いた落語のキャラクターを作り上げて行くのです。これは小説とも同じです。読む人によって情景やキャラクターの濃淡は変わると思います。また、読んだ時の読者の年齢など蓄積された経験に大いに左右されると思います。私自身、夏目漱石の「坊っちゃん」を多分10代、20代、40代で読んでいると思いますが、破天荒な坊っちゃんの松山で教師をやっていた時のストーリーが全面に出されますが、実は実家で住み込みの下女の清との心の繋がりに感動する物語なのです。このように何度も人生の時々に読みかせるような文学と同様に落語も楽しめると思っています。

噺家としては個人的に古今亭志ん朝(3代目)、柳家小三治(10代目)の二人は抜きん出ていると思っています。彼らの噺は素晴らしいです。幸いなことに、今ではいつでもどこでもYouTubeで彼らの噺を聴くことができます。日本の伝統文化の素晴らしさを再認識すると思います。

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