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『日常生活の冒険』大江健三郎著を偶然に読む

就職後、本社での新入社員研修を終えて四国の高松へ赴任する事になりました。赴任先での慌しい適応期間も過ぎて、そろそろ周りも見えて来て余暇をうまく使わないとと思い始めた矢先に本屋でふと目に着いた小説がありました。それは「日常生活の冒険」というタイトルでした。著者は、大江健三郎、…知らないなあ〜。多分、仕事はこのままのペースでずっと行くんだろうなと思っていたところに何か新しいことや変化を期待してたのだと思います。

タイトルに興味を持ち、その本を書店の棚から取ってちょとだけ文章を読んでみようと思いました。書き出しは、“あなたは、時には喧嘩もしたとはいえ結局、長いあいだ心にかけてきたかけがえのない友人が、火星の一共和国かと思えるほど遠い、見知らぬ場所で、確たる理由もない不意の自殺をしたという手紙をうけとったときの辛さを空想してみたことがおありですか?”、何⁉︎ 文章が長くてよく意味が分からない。もう一度読み返してみました。でも、まだよく意味が分からない。ダメだ、買ってゆっくり読むことにしよう。これが初めて買った大江健三郎の小説でした。彼がノーベル文学賞を受賞する12年くらい前のことです。

それから何故だか大江健三郎作品ばかり読むようになって、加えて彼の小説に出てくる他の作家の本も読むようになりました。例えば、ジャン・ポール・サルトル(受賞辞退)、ギュンター・グラス(ノーベル文学賞受賞者)、ミラン・クンデラなどです。ギュンター・グラスは、映画「ブリキの太鼓」の原作者、ミラン・クンデラも映画「存在の耐えられない軽さ」の原作者です。1987年には、ペルー国に居ましたが、友人から紹介された人の1人旅行の通訳のお礼に何か日本から贈りたいと言われ、当時大江健三郎は年に1作品を発表してたのでその年の作品を送ってくれるようお願いしました。そうして1~2カ月後「懐かしい年への手紙」(ノーベル賞対象作品)が届きます。日本語の活字に飢えていた事もあり一晩で読み終えたことを覚えています。

大江作品で気に入ってるのは「個人的な体験」と「懐かしい年への手紙」です。この作家の作品の中ではとても読み易く、ドラマチックな展開があるからです。彼自身は愛媛県の山間地の出身で、この作家を知ったのが高松の書店、四国に来てからということで何かの縁かも、。四国の山間地のイメージも3年間の生活で感じが分かりました。

偶然にもラテン・アメリカとの接点で読みだしたガブリエル・ガルシア・マルケス(コロンビア)もマリオ・バルガス・リョサ(ペルー)もノーベル文学賞受賞者でした。「日常生活の冒険」から始まった一連の読書は、その後の色々な冒険を含む経験に繋がったと思います。

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