中国のマンガ・アニメ配信サイトと長期ランクインしている日本作品を調べてみた!
中国の人々に愛される日本のマンガやアニメってどんなものだろう、ということでゲームの調査会社が中国のマンガ・アニメ市場を調べてみました。
今回は中国のマンガ・アニメの配信サイトで中心となるものと、その中で高い人気を維持している日本作品などをご紹介します。
はじめに
こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発・運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。
このnoteでは、「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を、月に2〜3本配信ししていく予定です。
中国の主要なマンガ・アニメ配信サイトとランキング
まずは主な配信サイトと、日本作品ランキングをご紹介します。
AmazonやGoogleなどのGAFAに対抗する、中国巨大企業群BAT(Baidu・Alibaba・Tencent)が、マンガやアニメの配信においても中心となっている点が興味深いです。
●騰訊動漫(Tencent Animation and Comics)
楽天への出資で話題となっている、テンセントが運営するサイトです。
現在、中国で影響⼒がもっともあるとされ、中国のオリジナルなマンガ、アニメのインキュベーターでもあります。
⽇本の『少年ジャンプ』と『マーガレット』の正規版がリアルタイムで更新されており、「日本マンガランキング」で、サイト内での日本作品の順位が確認できます。
・日本作品ランキング(2021年3月)
●快看漫画(Kuaikan Comic)
中国の新世代型コンテンツコミュニティで、アプリのユーザーは2億⼈を超え、⽉間アクティブユーザーも4,000万人超となっています。テンセントから多額の融資を受けているサイトでもあります。
サイト内で様々なマンガランキングが表示がされており、「日本マンガランキング」で日本作品の順位を確認することができます。
・日本作品ランキング(2021年3月)
●優酷(Youku)
設立は2006年と中国でもっとも古い動画プラットフォームで、高い知名度と人気を誇るサイトです。2016年に、中国EC最大手アリババの完全子会社になりました。
早くから⽇本の⼈気アニメ作品を輸⼊しており、『魔王学院の不適合者』、『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』といったニッチな作品がランクインすることがあります。
・日本作品ランキング(2021年3月)
●愛奇芸(iQIYI)
バイドゥが株式を保有するオンライン動画サイトです。⽇本のテレビ局数社から、最新の⼈気アニメを多く購⼊しています。
日本作品ランキングでは、『ONE PIECE』『名探偵コナン』など中国で高い知名度を有する作品が並んでいます。
・日本作品ランキング(2021年3月)
※中国の法律で大手動画メディアは動画再生数を非公開としているため、本記事でも非掲載となります。
その他の主要なマンガ・アニメの配信サイトは以下の通りです。
●bilibili漫画(bilibili Comic)
ビリビリが運営する有料のマンガメディアで、2019年に「網易(NetEase)漫画」と合併しました。サイトには1,000作以上のマンガがあり、⽇本・中国・アメリカなど様々な国の作品をカバーしています。
作品公開のスピードは他のサイトよりも早めで、ランキングの中にはコアなファンに人気の最新作も多く並びます。
元々「網易(NetEase)漫画」もコアなアニメ・マンガファンが集まるサイトだったため、「テーマを問わず日本作品を読み漁るユーザーが多く集まるサイト」と言われているようです。
●bilibili動画(bilibili)
「中国のYouTube」と言われるビリビリが運営する、もっとも有名なサブカルファンのコミュニティです。
日本アニメの放送権獲得に力を入れており、2019年は100本以上の放映権を取得。そのうちの多くを独占配信しています。
また、50作にのぼる日本の新作ランキングを掲載していることも特徴です。
ちなみに、2021年3月の1位は『呪術廻戦』、2位は『Re:ゼロから始める異世界⽣活 第2期 後半』でした。
●騰訊視頻(Tencent Video)
テンセント傘下のオンライン動画サイトです。⽇本のテレビ局と協⼒し、 多くのアニメをリアルタイムで更新しています。
低年齢向きの日本作品が上位に入る傾向があり、ランキングには『クレヨンしんちゃん』『ウルトラマン』『仮面ライダー』 『ドラえもん』などが多く見られます。
●百度視頻(Baidu Video)
YahooやGoogleに対抗する中国語圏最⼤の検索エンジン傘下バイドゥのサイトです。バイドゥ本体のユーザーが多いため、こちらにもかなりのユーザーがついています。
サイトでは、日本のマンガ・アニメIPの百度指数トップ50を発表しています。百度指数とは、あるキーワードにおけるバイドゥユーザーの人気度を測る指標です。
長期ランクインしている日本のマンガ・アニメ作品
2021年3月のランキングで多く見られた『ONE PIECE』『名探偵コナン』『NARUTO -ナルト-』『クレヨンしんちゃん』の4作品が、ネット配信で長く人気を維持している日本作品の代表と言えるでしょう。
参考までに、昨年8月(約半年前)のランキングもご紹介します。
●騰訊動漫(Tencent Animation and Comics)
・日本作品ランキング(2020年8月)
●快看漫画(Kuaikan Comic)
・日本作品ランキング(2020年8月)
●優酷(Youku)
・日本作品ランキング(2020年8月)
●愛奇芸(iQIYI)
・日本作品ランキング(2020年8月)
先述した4作品は中国の他のエンタメ分野でも活躍しているため、その一例を簡単にご紹介します。
【ゲーム】
中国のゲーム市場は⽇本の⼈気IPを活⽤してゲームを制作するのがトレンドでしたが、市場が発展するにつれ、中国のオリジナルIPを重視するようになってきました。
そんな中、『ONE PIECE』の新作となるスマホゲーム『航海王 熱血航線』が、2021年4月の配信初日に中国App Storeの無料ランキング1位を獲得し、話題となっています。
なお既存アプリの『航海王 燃焼意志』も、下記のように人気サイトで大きな戦果をあげています。
・2021年3月 Douyu(闘⿂)⼿遊直播 ⾼評価ランキング
また『NARUTO -ナルト-』のIPを使ったゲームも、中国ではすでに2作が運営されており、うち1つは2021年3月のHuya(⻁⽛)直播という人気サイトでTOP10に入っています。
さらに『⽕影忍者:巓峰対決』というゲームも新たに配信される予定です。
最近、中国のゲーム企業は中国人声優の起⽤や、中国語フルボイスを積極的に進めています。
しかし、上記2本のIPを使ったゲームは原作の良さを活かすため、日本の声優が起用され中国語ボイスは非対応となっています。それでも相当な売上を確保できると見込めるためでしょう。
【イベント】
イベントも盛んに行われています。
『ONE PIECE』については、「Hello,ONE PIECE」と題した企画展が様々な都市で開催されており、
http://hello-onepiece.cn/
『NARUTO -ナルト-』についても、「NARUTO WORLD(火影忍者世界)」というテーマパークが上海に誕生しています。
また、上海で開催された「コナンカフェ」も、長蛇の列となるほどの人気だったようです。
【映画】
映画の興行成績においても、この4作品は好成績を残しています。
下記はコロナ前2019年の中国における日本映画ランキングですが、コナンとONE PIECEの映画がヒットしたことがわかります。
1「千と千尋の神隠し」 4億8800万元(75億6000万円)
2「天気の子」 2億8800万元(44億6000万円)
3「名探偵コナン 紺青の拳」 2億3100万元(35億8000万円)
4「劇場版 ONE PIECE STAMPEDE」 2億400万元 (31億6000万円)
5「映画ドラえもん のび太の月面探査記」1億3100万元(20億3000万円)
引用:映画com https://eiga.com/news/20200115/5/
最近の話になりますが、2021年4月から始まった劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』の累計興行収入が、4月末の段階ですでに29億円に達したというニュースも入ってきています。
このように中国で好評を博すると、文房具・おもちゃ・イベントなど様々な分野にその人気が波及していくことになります。
人口14億人ともいわれる中国市場では、得られる収益も莫大なものになります。
それでは、中国の人々に長く愛される作品とは、どのようなポイントがあるのでしょうか。
中国で根強い人気を誇る日本作品についての考察
【ドラえもんとクレヨンしんちゃん】
中国での日本キャラクター認知度において、クレヨンしんちゃんはドラえもんと双璧をなす存在と言われています。
ドラえもんの歴代映画興行収入をご覧ください。4作品がTOP10 にランクインしており、その人気は目を見張るものがあります。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウルトラマン・キャプテン翼・セーラームーン・ポケモン・ジブリなど、他にも中国で人気の作品は多くありますが、ドラえもんとクレヨンしんちゃんには、それらを超えるどんな魅力があるのでしょうか。
・庶民的でわかりやすい内容
主人公は子供です。その気持ちや行動は誰にでも手に取るようにわかります。その上、ご飯を食べたり、仲間と喧嘩をしたり、お尻を出したり、と馴染みのあるシーンが続きます。
母親に叱られる場面も全世界共通と言ってもいいでしょう。
泣き笑いだけでなく、いじけたり、照れたり、の表情もとてもわかりやすく描かれています。
知識がないとわからない、想像することができない、という場面がありませんから、どんな人でも理解・共感できる作品であると言えます。
・子供も大人も、男性も女性も、だれでも楽しめる作品
破天荒なしんちゃんに子供たちがゲラゲラと笑い、辛辣な言葉を放つしんちゃんに大人たちは苦笑い。四次元ポケットに子供たちは目を輝かせ、そこから何を出してもらっても、世の中そう上手くはいかない、と大人たちは納得する。
どちらの作品も、老若男女問わず共感できるよう創られているため、幅広い視聴者層が見込めるでしょう。
・ダメなままでもいい
どんなにドラえもんに助けてもらっても、のび太は優秀な子にはならないし、ママがどう教育しても、しんちゃんの行動も全く変わらない。
つまり「頑張りなさい」と煽られる作品ではないわけです。
勉強しなきゃ、上手くやらなきゃ、と焦ってばかりで、しまいには出来ない自分に嫌気がさす。
大人になったって、人間はいつも自分を責めているものです。
でも、スネ夫はスネ夫のままだし、のび太もしんちゃんも怒られっぱなし。人間はそんなに簡単に変わるもんじゃない。
作品の根底に流れるメッセージは、誰にとっても心休まるものなのです。
・優しくて愛に溢れている
ドラえもんに泣きつけば、すぐに助けてくれます。
しんちゃんの両親は子育てに悪戦苦闘中です。
それに、のび太もしんちゃんも友達が困っていたら、彼らなりに一生懸命助けてくれようとします。
悔しくて地団駄を踏んだり、わんわん泣いたりというのは、人間なら当たり前のこと。
でもこの2作品は、必ず、観た人がほっこりした気持ちになるよう導いてくれます。
大衆に広く受け容れられる作品とは、誰にとってもわかりやすく、かつ作者の哲学が絶妙に表現されたものと言えます。
作品を通しての哲学があるからこそ、大人の心にも響くわけです。
ドラえもんとクレヨンしんちゃんはまさにそんな作品であり、中国という巨大な国で生きる人々も、ほんの束の間、作品から溢れる愛に癒されているのではないでしょうか。
つづく
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