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女性に支持されるモバイルゲームとは?

「⼥性向けゲーム」と⼀⼝に⾔えど、その特徴や要素にはどういったものがあるのでしょうか。

今回はユーザーアンケートやヒットを記録しているタイトルの調査からみえてきた、日本の女性向け市場の動向をまとめてみました。

はじめに


こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。

私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発・運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報を提供をしている調査会社です。

このnoteでは「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を配信しています。


女性に人気のジャンル


かつての⼥性向けゲームといえば、イケメンキャラとの恋愛やBLを描いたコンシューマソフトが中心でした。

しかし最近では、応援(育成)やかわいい動物との触れ合い、あるいはパズル、リズムなども人気を集めるようになっています。

キャラや世界観を深堀りする施策を打ち出し、グッズ販売・アニメ化・舞台などを展開するなかで人気タイトルへと成長するものには、どのような特徴があるのでしょうか。


今回は市場の動向を探るため、普段スマートフォンでゲームをしている男性760名、⼥性760名の合計1,520名へ独自アンケートを行い、さらに人気タイトルの詳細調査も進めました(データは2021年3⽉時点のもの)。

まずは男女の違いを掴むために、普段どんなジャンルで遊んでいるのか?の設問結果をご覧ください。

 【設問】プレイするスマホゲームのジャンル(複数回答あり) 
男性:青、 ⼥性:ピンク

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アンケートの結果から、男性より⼥性のほうが多くプレイするのは下記の4ジャンルであることが明確になりました。

◆育成・交流シミュレーション(どうぶつの森、ポケコロなど)
◆恋愛シミュレーション      (イケメン戦国、ラブプラスなど)
◆リズム             (デレステ、プロセカなど)
◆パズル             (ツムツム、ホームスケイプなど)

中でもパズルの男女差が大きいのが目立っており、調査に参加してくれた女性の半数近くがパズルを楽しんでいます。

つむつむ

最後の「その他」については個別回答もお願いしたのですが、面白いことに、少数ではありますが「ポイントサイトのゲーム」や「アイテム探しゲーム」「脳トレ」などが女性から挙がっていました。

ゲームは「脳トレ」だけ!というユーザ―もおり、余暇の楽しみや通勤中の暇つぶしなどではなく、美容や健康の目的で積極的にプレイする女性もいるようです。


女性がゲームを選ぶポイント

続いて、スマホゲームを選ぶポイントはなんですか︖という質問を投げてみました。

対象は、普段スマートフォンでゲームをしている⼥性760名です。

【設問】スマホゲームを選ぶポイントはなんですか︖

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この質問から、多くの女性が絵柄やストーリーよりも「ゲーム性」を重視していることがわかりました。

なおここでいう「ゲーム性」とは、いわゆるゲームシステムやコアコンテンツのことを指します。

つまりイケメンへの恋愛モードよりも、純粋に作品の根幹を成す「ゲームとしての楽しさや面白さ」を求めている方が一定数いるわけです。

やや意外ではありましたが、やはりゲームユーザーは性別に関係なくゲームそのものの楽しみを一番に求めるものなのでしょう。

女性に「パズル」が人気なのも、この結果をみれば納得がいきます。


ゲーム性の次に重視する点は、ビジュアル面でした。

絵柄に関しては「⾮常に重視する/まあまあ重視する」という意見が男性よりも多く、やはり可愛い・キレイ・キモカワといった⾒た⽬の印象は、女性にとっては大事なようです。


セールスランキング上位タイトルのプレイ状況

さらに突っ込んで、セールスランキング上位アプリのプレイ状況についても調査してみました。

対象サンプルは、同じく普段スマートフォンでゲームをしている⼥性760名です。

並びは、上から「現在プレイ中」「過去にプレイしていた」の合計が多い順としています。

【設問】セールスランキング上位タイトルで遊んでいますか?

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⼤ヒットタイトルの『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』の名前もありますが、先のアンケート同様、『LINE︓ディズニーツムツム』『LINE ポコポコ』『ホームスケイプ』『ガーデンスケイプ』『TOON BLAST』など、パズルの人気が高いことが明らかになりました。


『ポケモンGo』については「世界的ブームの影響でちょっと遊んでみたら、完全にハマってしまった」というユーザーも多いようで、このゲームが新しいユーザーを取り込んだ功績は本当に大きいと言わざるを得ません。


そのほか注目すべき点は、『グランブルーファンタジー』や『Identity V/第五⼈格』などのミドルコア向けアプリの認知度が高いことです。

⼥性向けゲー ムの『あんさんぶるスターズ︕MUSIC』や、⼈気IPを題材にした『プロジェクトセカイ カラフルステージ︕ feat.初⾳ミク』と並ぶほどですから、いかに人気を得ているのかがわかります。

男性中心か、男性に限らないタイトルか

複数のアンケート結果から、女性が好むアプリは下記のように大きく二つの区分に分けられることがわかりました。

A:攻略・育成対象が男性を中⼼に構成されたタイトル

B:攻略・育成対象が男性に限らないタイトル

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またAとBの中でも、特定の人気ゲームジャンルに分けることができます。

Aの男性を中⼼に構成されたタイトルで特に人気が高かったのは、恋愛、育成、リズムです。

中には『夢王国と眠れる100⼈の王⼦様』のような恋愛・パズル・RPGの複数要素を含んだタイトルも存在しますが、その場合は「恋愛ゲーム」の枠にパズル要素が加わっている形とみました。


Bの男性に限らないタイトルに属するのは、純粋に遊んでいて楽しい・⼿軽に快感が味わえるなどといったゲーム性に魅⼒を感じるタイトルです。

中でもパズルや、⾃由に着せ替えができるアバターゲーム、男性向けのコアなRPGやホラータイトルに支持が集まっていました。


人気タイトル20本を調査してみた

ここからは⼥性に人気のあるゲーム20本をピックアップして、調査した結果の一部を交えてご紹介していきます。

抜粋したタイトルはセールスランキングの上位や各ジャンルでスマッシュヒットを記録したもので、Twitterフォロワー数やテキストの内容もチェックしました(2021年5⽉時点)。

選んだ20本と調査内容は以下の通りです。

調査内容
◆ゲーム概要
◆マーケティング・メディアミックス施策
◆コンテンツ(キャラ推し系も調査)、マネタイズ


対象タイトル

【Aに該当】
1. 剣が刻
2. A3!
3. ⼑剣乱舞-ONLINE-
4. 魔法使いの約束
5. 100シーンの恋+
6. 夢王国と眠れる100⼈の王⼦様
7. アイドリッシュセブン
8. あんさんぶるスターズ!!Music
9. うたの プリンスさまっ Shining Live
10. 新テニスの王⼦様 Rising Beat
11. ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-
12. ディズニー ツイステッド ワンダーランド
13. イケメン戦国◆時をかける恋
14. 恋とプロデューサー

【B に該当】
15. グランブルーファンタジー
16. シャイニングニキ
17. ポケコロ
18. Project Makeover
19. LINE:ディズニーツムツム
20. Identity V

なお、この20本はいずれも「ゲーム性」「絵柄」ともに評価の高いアプリです。

戦国


恋愛モードは必要か?

まずAに該当する14本のなかで、恋愛要素が含まれているかどうかを調べたところ、以下のような結果になりました。

恋愛要素なし: 7本
⼀部あり  :4本
あり(多め):3本


恋愛を含むものと含まないものに分けると、ちょうど同数(7本ずつ)となります。

キャラとの恋愛描写を取り⼊れたものに偏るかと思いきや、そうではなかったということです。

これは先のアンケートで、「ストーリー」よりも「ゲーム性」を重視する女性が多い結果とも繋がるように思えます。


女性性と母性



一方、Aの中で著しい成⻑をみせていたのは「育成ゲーム」です。

恋愛要素は薄くても、イケメンキャラ達を⾃⾝の⼿で育成・応援していくことで、彼らのひたむきに頑張る姿や、仲間たちと切磋琢磨する姿をみて楽しんでいる女性が多いようです。

これは各々のゲームが”女性性”と”母性”という女性のもつ特性の両者を刺激しているからでしょう。

イケメンにときめき(女性性)、育てる喜び(母性)を感じる。
子供が生まれたら夫そっちのけで育児にかかりきりになる。

…など、女性特有の体験談はよく耳にすることかと思いますが、やはり女性は母性のスイッチが入ると「この子を頑張って育てよう」「とことん面倒を見よう」という気持ちが沸いてくるのだと推察されます。

可愛いキャラに夢中になる男性はいても、可愛くないキャラに夢中になる男性はおそらく少ないでしょうから、この母性への刺激という点が、男性ユーザーに向けたゲームとは決定的に異なる点ではないでしょうか。


女性が興味を持つ要素を加える


Bの区分に該当するタイトルに移りましょう。ここに属するのは、男女問わず、子供も夢中になるといった万⼈受けするゲームです。

その中でも女性から支持を得ているタイトルに目を向けると、美男⼦キャラが多数登場したり、ミステリアスかつ重厚なシナリオに惹きつけられるなど、⼥性が興味をもつ要素を何かしら含んだ設計となっていることがわかります。

例えば個性的なキャラが数百体も登場する『グランブルーファンタジー』は、四騎士と呼ばれるキャラが女性に大人気です。

騎士との面会や手紙をもらえるなど、女性向けのイベントやコラボも人気を集めていますし、⼥性向けゲーム雑誌「Bʼs-LOG」で特集も組まれています。


また『LINE:ディズニーツムツム』を見てみると、玉木宏氏や藤原竜也氏といった女性に人気の俳優をTVCMに起用しています。

すなわち万人受けの設計だとしても、女性が興味をもつ要素を何かしら加えたゲームは、女性からの支持を得ているわけです。

こういったゲームはもちろん、マーケティング・メディアミックス施策においても、女性に向けての戦略が練られています。

『Identity V/第五⼈格』はホラー色の強いゲームですが、SNSなどでは女性ユーザーも多く見られます。

本作が支持を得ているのは、コスプレイベント・舞台・着せ替えといった、女性が興味を持つ要素を積極的に取り入れているからでしょう。

Identity Vでは、豊富なスキンで着せ替えを楽しめます。


女性向け市場の課題


2020年は『ディズニー ツイステッドワンダーランド』が大ヒットし話題を呼びましたが、実は直近では女性向け(新作)ゲームアプリの成功を耳にしません。

既存アプリは変わらず安定した成長を見せていますが、その一方で寡占状態となり、新規参入の難度が高くなっているようにも見受けられます。

下のグラフは「現在遊んでいるスマホゲームの本数」を女性ユーザー(760名)で抜粋した結果です。

【設問】現在遊んでいるスマホゲームは何本ですか︖

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結果、1~3本だけで7割以上が占められており、女性ユーザーが継続的に遊ぶスマホゲームは3本までという傾向がありそうです。

今回調査した人気タイトルも当然ここに含まれるため、新規参入がいかに難しいか、ということも現実味を帯びてくるでしょう。


しかし女性がゲームを楽しむようになってきたとはいえ、男性と比較すればまだまだ少ないのが現状です。

ポケモンGoのような大ヒット作があれば、新たなユーザーが市場に一気に流れ込む可能性はあります。

また女性の好みを取り入れることで、既存のゲームが支持を集めていくことも十分に可能でしょう。

難度は高いかもしれませんが、ゲーム性に重きを置きつつ、メディアミックスの観点からアプローチするなど、女性向け市場が、まだまだ戦略を立てられる市場であることは間違いありません。

「Project Makeover」はファッションをテーマにしたゲームなだけあり、
公式Instagramでは雑誌風の画像なども投稿しています。

以上です。いかがでしたでしょうか?

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