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05.ジンジャーチャイ~改良①生姜について知る~

こんにちは、旅するスパイスラバーちゃいまいです。
今回も、生姜と向き合い、ジンジャーチャイの研究をしていこうと思います。

<<この回はややアカデミックな記述が多いため、甘めなチャイをお供に、慌てず読まれることをお勧めします>>

前回、私流の基本のジンジャーチャイの作り方をご共有しました。

今回は、そのレシピをベースに少し改良をしていきます。

チャイの改良方法

カレーやチャイなどを作るとき、私はいつもいただくシーンや目指す方向性を簡単にイメージしてからレシピを組み立てています。

❶シーンの想像、目指す方向の決定
❷ベース材料の決定
❸合わせるスパイスの検討
❹手順の決定
❺試行錯誤、感想をもらい改善

今回目指す方向性は、
「生姜の辛さをより生かした辛口チャイ」に定めたいと思います。

研究計画

◯目指したチャイ
・生姜の辛さをより生かした辛口チャイ
◯条件
・無理せず年中作れること
★研究の動機
辛口ジンジャエールのような、強い辛さを楽しめるジンジャーチャイを作りたいと思ったから
★研究の手順
①生姜について知る
②改良実践
③飲み比べ

理想の辛口ジンジャーチャイを目指すにあたり
「無理せず年中つくれる」という条件を付けました。
あまりにも手間がかかりすぎたり、手に入りにくいものを使用すると、作るハードルが上がってしまうためです。

それでは、さっそく研究を始めていきます。

①生姜について知る

まずは基本情報から。

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〇生姜は何者なのか?

・原産:アジア(インド、熱帯アジアとする説が多い)
・科目:ショウガ目ショウガ科
・用部:根茎(こんけい)
・約2600年ほど前、東南アジア・中国を経て日本へ渡来
・世界中で使われているが、東南アジア産にはレモンの香り、アフリカ産には樟脳の香りがあるものもある
・日本を含めたアジア諸国ではフレッシュ、欧米ではドライが一般的
[参考:1,2]

紀元前の中国・エジプト・ローマで利用されていたり、イスラーム教の経典「コーラン」に記載があることなどから、歴史が長く世界中で使われているスパイスだということが分かりました。
そして一般的に食べている部分は根ではなく茎のようです。[参考:3,4]

〇生姜にはどんな種類があるか?

・生姜の品種は数百種類あり、大きさ、見た目、収穫時期等で分けられ様々な呼び名がある
・日本で広く出回っているのは大生姜と呼ばれるもので、国産では黄金生姜・黄生姜などが辛みが強い
・生産量の国別ランキングではインド、中国、ナイジェリアが上位だが、現在国内に出回っている生姜の約70%が国産
・国内生産地は高知県、熊本県、千葉県の順に多い
・輸入元は中国、タイ、インドネシアの順に多く、ほとんどが中国
・栽培されている国や種類により、風味、香り、成分などが異なる
[参考:3,5-10]

インドが最も生産量が多いのに、インド産のものは国内にあまり入ってきてないんですね。
そういえば、以前タイ産の生姜をチャイに使ったところ、全然違う味がして驚いたことがあります。タイ産日本に輸入されているタイ産の生姜は塩蔵(塩漬け)状態のものが多いので、漬物などにむく品種が多く栽培されているのかもしれませんね。

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〇生姜にはどんな辛み成分が含まれているか?

・約90%が水分で、辛み成分や香りは皮に含まれている
・主な辛み成分はジンゲロール(ギンゲロール)、ジンゲロン、ショウガオール
加熱・脱水によりジンゲロールがジンゲロンやショウガオールに変化
・ジンゲロールは発汗・解熱効果、ショウガオールは体を芯から温める効果等があると考えられている
・辛さの単位であるスコヴィル値を比較すると、ショウガオールは胡椒に含まれるピペリンよりも高く、唐辛子に含まれるカプサイシンより低い
・一方ジンゲロールのスコヴィル値は、ショウガオールの半数以下
100度以上で生姜を熱し続けるとショウガオールが壊れてしまう(150度という説もある)
[参考:3,5,11-14]

ショウガの辛み成分

つまり結論として、理論上
皮を取らず、そして生姜をうまく加熱脱水してショウガオールを生成
すればより辛口のチャイを作れるということですね。

国産生姜と中国産生姜、どちらを使うか

こちらは正直悩みました。
実はジンゲロールもショウガオールも中国産生姜の方が多いという研究結果もありました(品種による)[参考:15]
国産生姜の方が香り成分が強い、と言っている方も多くみられたのですが、こちらは文献が見つからず、はっきりしたことが分かりませんでした。
今回は「無理せず年中つくれる」という条件に沿って、より国内流通量の多い国産生姜を利用しようと思います。

ショウガオールの生成方法

では、実際にショウガオールを生成する方法ですが、
「ジンゲロールの加熱調理による変化」[参考:16]という研究論文を発見しました。
それによると、ジンゲロールとショウガオールの割合は、60分茹でたら93:7に、60分蒸したらは92:8に変化する…
って手間かける割になかなか変化しないんですね。
ところが、食品医学研究所の記事[参考:17]によると
「100℃以下の温度で4~5時間、加熱したり、蒸したりしたショウガは、ジンゲロールとショウガオールがほぼ1対1の割合で含まれるようになる」
そうで、これは試す価値がありそうです。
さらに加えて、「繊維方向で辛さが変わる」と言っている方がいて、こちらも興味深いので試してみようと思います。[参考:18]

あとがき

いかがでしたか。
今回は、生姜を辛くする方法について、生姜の正体を暴くところから考えていきました。
次回は、改良実践編です。(道のり長かった…)

皆様のチャイライフが少しでも豊かになりますように。
それではまた。

参考
1.村上 志緒,2002年,「日本のハーブ事典」,東京堂出版
2.2017年,「いちばんくわしい スパイス便利帳」世界文化社
3.遠藤榮 ・遠藤栄一,2011年,「ガリ屋がまとめた生姜のはなし」, 創元社
4. 石原 結實,2009年,「生姜力―病気が治る!ヤセる!きれいになる!1週間で効く8つの活用法!」
5.「生姜の豆知識」,株式会社坂田信夫商店,https://www.kochi-sakata.co.jp/kogane/ginger.html
6.「世界の生姜(ショウガ)生産量 国別ランキング・推移」,グローバルノート,https://www.globalnote.jp/post-5670.html
7.「野菜ブックしょうが」,農畜産業振興機構,https://www.alic.go.jp/content/001162857.pdf
8.「野菜の輸入先国(ベスト3)2017年」,農畜産業振興機構,https://www.alic.go.jp/content/001162823.pdf
9.「豆知識 生姜の歴史」,株式会社サンフレッシュ,https://3fresh.co.jp/mame/
10.「使える生姜!」,http://www.syouga.net/
11.「食品詳細」,日本食品標準成分表2015年版(七訂),https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06103_7
12. 「生姜の成分」,シオダ製薬,http://www.syougaya.co.jp/05_html_syouga/05_syouga_01.html
13.「生姜の90%は水分」,ジンジャーファクトリー,https://ginger-factory.net/recipe/?p=1476
14.「Shogaol」,chemeurope.com,https://www.chemeurope.com/en/encyclopedia/Shogaol.html
15.「黄金しょうがとは」,株式会社坂田信夫商店,https://sakatashop.jp/user_data/ginger/about.php
16.「ショウガ中の 6-ジンゲロールの加熱調理による変化」,日本調理科学会誌,https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/6/48_398/_pdf/-char/ja
17:「体を芯からポカポカ温めるには加熱ショウガか、蒸しショウガを!」,
食品医学研究所,https://bit.ly/2ROOiKg
18:「ショウガの辛み大調査!」,365market【 サンロクゴマーケット 】食オタMAGAZINE,https://media.365market.jp/post_detail.php?post_no=16140
(サイト最終閲覧日:2020年4月19日)
19.「生姜の成分であるショウガオールの生成実験」,生姜の成分であるショウガオールの生成実験,https://ogawa-clab.jp/rr/shogaol/

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