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『君のことが好きで言えない。』刊行記念 みかみふみ先生インタビュー

スピカワークス

デザート』2021/5月号より連載されている、みかみふみ先生の『君のことが好きで言えない。』が、いよいよ単行本となりました! 待望の第1巻は、本日8/12(木)に発売されています。

君のことが 1巻帯付

君のことが好きで言えない。』あらすじ
私たちの世界は、30年前に降ってきた隕石が放出した謎の物質で、同性しか愛せない世界へと生まれ変わった。幼なじみの男の子・歩(あゆむ)に、ひそかな恋心を抱く女子高生の上総(かずさ)。「異性愛者」としての気持ちを必死に押し殺す日々の中、歩の優しさに何度も助けられる上総は、ひとりつぶやく。「私はこの気持ちを、どうしたらいいんだろう」
──想うほどに切ない青春ラブストーリー!
☆★☆ 作品紹介&1話試し読みはこちらから ☆★☆

この発売を記念してスピカワークスでは、みかみふみ先生スペシャルインタビューを受けていただきました! 弊社代表であり編集担当の鈴木@しーげるとの出会いや、『君のことが好きで言えない。』連載までの作品作りのお話など、たっぷりとお伺いしております。 

インタビュアーは、弊社スタッフの小屋と広報Tが務めます。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

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◆漫画家になるまで、そして代表との出会い


インタビュアー・小屋(以下、小):君のことが好きで言えない。』単行本第1巻の発売、おめでとうございます! 初めに、みかみ先生の簡単なプロフィールを教えてください。

みかみふみ先生(以下、み):小さい頃は、少女漫画をたくさん読んでいました。思春期から20代前半くらいまでは、ジャンプ作品など少年・男性向けの漫画を読むようになって。漫画家としては、専門学校在学中に少年誌で受賞した後、卒業後に実家の農作業を手伝いながらデビューを目指していました。その後、いろいろな経緯があり、少女漫画やコンビニ雑誌などでの活動を経て、今に至ります。

小:今回、少女漫画で作品を描こうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

み:少女漫画がきっかけで漫画を描き始めたので、「いつか原点に返りたいな」とも思っていましたし、鈴木さんにこの企画を拾ってもらえたということが私の中でとても大きなことだったので、「再チャレンジしたい」という気持ちがありました。

小:もともと少女漫画を読むのも、お好きだったんですよね。

み:そうですね。初めはギャグ漫画を描いていたのですが、羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』(集英社)という作品を読んだ時に、「私もギャグじゃない作品が描きたい」と思って、「少女漫画を描く」ことを考え始めました。

小:今回、鈴木さんと一緒にお仕事をするようになったきっかけをお聞かせください。

み:以前、NEWVERYさん主宰のトキワ荘に入居していた時期がありまして、そのNEWVERYさんからのメールに、ある日「スピカワークスのしーげるさんがネームを見てくれます! 先着順です!」というご案内があり、光の速さで応募しました(笑)。そのころ、「編集さん方から見て自分の作品はどのように見えているのか」ということを知りたいと思っていたので、挑戦してみようと思ったんです。ただ、勢いで申し込んだのはよいものの、何を持って行けばいいのかわからないし、新しいネームを描く時間もなかったので、直感で『君のことが好きで言えない。』の基になった企画を持っていこうと決めました。自信はなかったのですが、その企画が心のどこかでずっとひっかかっていたこともあり、「これでダメだったらきっぱり諦めよう!」と決意して。そうしたところ、鈴木さんから「良いですね」と言っていただけて、その後「連載目指してみましょうか」という話になりました。とても嬉しかったです。

予告イラスト

小:その日が鈴木さんとの初対面だったんですね。そこで鈴木さんから受けた印象など、何か覚えてらっしゃることはありますか?

み:なんだか雰囲気がゆったりとしている方だな」と感じました。男性編集者さんに対して私が持っていたイメージは、「すごく早くお話をする、瞬発的に物事を進めていく」といったものでした。でも、鈴木さんは違っていて。「こんなにも穏やかに話してくださる編集者さんもいるのだな」と、少し驚きました。あと、打ち合わせなどで私が焦って言葉を詰まらせてしまったとしても、きちんと待ってくれるのも、とてもありがたいです。

鈴木@しーげる(以下、鈴):基本的に、漫画家さんには全て納得して描いてほしいと思っているのでそのようなテンポになるのだと思います。でも、みかみさんもとても話しやすくてやりやすいです。

◆作品作りは世界観から


小:
それでは、今回の連載作品『君のことが好きで言えない。』を描こうと思ったきっかけを教えてください。

み:とある漫画雑誌でデビューしたての頃に、「胸キュンするような恋愛漫画を描くのって難しい」という壁にぶつかってしまったんです。その時、自分が百合やBL漫画で感じたキュンキュンを、男女の漫画に変換してやってみようと思いつきました。でも、初めはまったく上手くいかなくて。そこで「BLや百合の恋愛と、男女の恋愛ってそもそも別物なのかな」ということに気づき、「性別という縛りでそれぞれのジャンルによって感じ方や表現が違ってくるのなら、それらを少しずつ混ぜていったらどうなるのだろう」ということを考えて、思い浮かんだものが今の作品でした。人類が同性愛で成り立っているという世界での、異性愛者が繰り広げる恋愛のお話ですね。

小:今回の作品は、世界観や舞台の設定が壮大だなと感じます。コンセプトが大きくなると、ご苦労されることも多かったのでは。

コマ2

み: 1話目の構成が、とにかく難航しました。完成までの道のりがとても長くて。最初は歩が女の子の主人公で、上総が異性愛者のヒーローという設定だったのですが、うまくいきませんでした。そこで「変えるなら思い切って全部直してしまおう」と思い、性別も変えてみようと考えて、今の形に。当初からは真逆の状態となりました。

広報T(以下、T):今回の作品は、キャラクターよりも世界観が先にあったんですね。

み:そうです。世の中には出ていないのですが、もともとは一本の読み切りとして描いていた作品があり、今回はそれをベースにしています。

小:初めは「歩が女の子で、上総がヒーローという設定だった」ということでしたが、性格やキャラクター性などは今のままで、性別だけ逆だったという感じでしょうか?

み:そのあたりも若干変わりましたね。上総が男の子だった時は、少しなよなよとした感じでした。私は「可愛い系の男の子」がすごく描きやすかったんです。歩を女の子として描いていた時は、ズバズバ言う感じの女の子だった気がします。立場を逆転させたことで、少女漫画っぽくなったのかなって。

小:次は作品の内容について、具体的に伺っていきますね。今作はセンチメンタルな恋といいますか、主人公の気持ちになると「どうすればこの恋が叶うのだろう」という、切なくてもどかしい感じがあり、読者としては先の展開が気になります。作者として、「読者の方々に注目してほしいポイント」などはありますか?

み:作画の部分では、私が10代の頃に感じていた「田舎の空気」を大事にしています。大家族で育った田舎の子供のような、おじいちゃんおばあちゃんに大事に育てられたような感じも出せたらいいなと。歩たちには歩の祖父・茂正さんと過ごした幼少期があったので、二人にはその雰囲気が出てるとかわいいいかなと思って。二人の会話がやけに純粋だったりとか、悪いことをしたらちゃんと謝るところとか、そういう二人ならではの関係が可愛くて好きなんです。そこが読者の方々にも伝わると嬉しいです。

コマ3

小:作中の大きな世界観や細かい設定と、少女漫画らしいキュンキュンや可愛らしさとのバランスはどのように取っているのでしょうか。

み:とにかく設定が多いので、「絵を見せるだけで、情報がなるべく伝わるように」ということを心がけています。それと同時に、「しっかりキュンポイントを入れていく」ことも意識して。今回の作品を描くにあたっては、鈴木さんとLGBT関連の作品などをたくさん見ました。そうやって勉強していくと、「本当にデリケートなテーマ」であることを改めて実感します。一方、少女漫画という舞台では、読者の方々にそこまで重く捉えてほしくない気持ちもあり、「どうしたら気軽に読んでもらえるのか」という点もたくさん考えました。

T:今作では監修として、みさおはるきさんに入っていただいていますが、みさおさんとはどういったやり取りを重ねているのでしょうか。

み:そうですね、いろいろと監修していただいています。たとえば最初の段階では鈴木さんと、「男女の距離感も変わってくるよね」というお話をしていました。現実世界では、日常生活で同性同士が一緒に行動していることが多いけれども、今回の作品の中だと、男女の距離感はどういったものになるのか、といった点です。そういう迷いや疑問が浮かんだ時には、みさおさんにご相談して。あとはセリフについても、具体的なアドバイスもいただいています。全体として、慎重に考えていかなければならないということを改めて感じつつ、作品作りを進めてきました。

小:ちなみに、この作品の恋愛の形や距離感を描いた場面で印象に残っているのは、2話目にあった上総の元カノ・月子のセリフです。設定や世界観が異なっても、「好き」という人の感情は変わらないのだなと感じました。

み:あの場面では、「この世界の女の子同士の恋愛というものも描いていかなきゃいけない」と思っていたのと、「別れた恋人であっても友達のままでいたい」という思いは、現実の世界でもたくさんあるよなと思い、それを私の作品でも表現しようと考えて描きました。

コマ1

T:私もあのシーンはすごく印象的でした。友情か恋愛かを選ばなくてはいけないような重要な場面で、月子はどちらかの気持ちだけを取るのではなく、その両方を上総に伝えてくれる子なんだということが伝わってきました。

み:月子にとっては、気持ちの整理には時間がかかる状態。その分、大事に描こうと思ったシーンなので、印象的だと言ってもらえて嬉しいです。

◆キャラクターづくりと名前の由来



小:
キャラクターについてもお聞かせください。たとえば主人公の上総は、つい応援したくなるような女の子。読者の方々からも「頑張れ!」と声をかけてもらえるようなキャラクターになっています。設定を考える時、意識されている点はどういったことでしょうか。

み:私は企画や設定などから考えていくことが多いのですが、キャラを作っていく上で、「自分の性格に似たようなキャラクターを作り出さない」ということは意識しています。なるべく新しいものを生み出すような感覚で考えるようにしていて。

小:みかみ先生ご自身の性格とは切り離す、ということですね。

み:そうです。自分の成分が入ってしまうのは、あまりよくない気がしています。たとえばそれを意識せずに作品を作っていくと、キャラクターではなく、現実にしか存在しないようなリアルな人間に寄ってしまうと思っていて。それは私の作品で表現していきたいものとは、違ってくる気がするんですよね。

小:作品の中だからこそ生み出されるキャラクターを大事にしたい、ということでしょうか?

み:はい。脳内でそのキャラクターに「面白いことしてよ!」と言っても、そのキャラクターが自分に似ていると、恥ずかしがって動いてくれないことがあって。そうではなく、たとえばどうしても暗くなってしまうようなシーンでも、作品内であれば明るく演出していくことができる。それが漫画の良い点の一つだと思っているので、読者の方々には楽しんで明るい気持ちになってほしいなと願って描いています。

小:ちなみに、現時点で登場しているキャラクターたちの中で、作画の面やお話の中で動かしていくのが難しいキャラクターを挙げるとすると?

み:それは、ダントツで先輩ですね! ぎりぎりまでキャラデザが決まらなくて、「これ、ちゃんと完成するのかな?」と思いながら必死に描いていました(笑)。 鈴木さんからのOKもなかなか出なくて、すごく悩みましたね。

コマ4

T:キャラクターの髪形や制服については、どんなものを参考にされているんでしょう。

み:髪形は現実の人間をなるべく参考にしようと、ヘアカタログや雑誌を見て、気になった写真をスクラップブックのように切り貼りし、その中から決めています。制服については若干自分でデザインしつつ、いろいろな資料も見ながら描きました。

T:なるほど! また、キャラクターの名前が少し珍しいというか、上総は男の子の名前でもありそうですし、逆に歩も女の子の名前にありそうだなと思っていました。名付けについてはどのように?

み:上総については、私の住んでいる地方に「上総掘り」という技術がありまして。それは井戸を掘る技術なのですが、そこから名付けました(笑)。歩は、元々女の子の設定だったので女の子らしい名前だったということもありますが、私の親戚の家に生まれた赤ちゃんから一文字をもらって付けました。田舎過ぎず都会過ぎず、おじいちゃんでもつけられるような名前が良いなと考えて。

:個人的には、きなこちゃんの名前がかわいくて、すごく好きです!

み:ありがとうございます。きなこは今風でもありながら古風な雰囲気のある名前だなと思っています。割とビジュアルで名前を決めたところもあるので、いつか彼女のお話も描けたらいいですね。

コマ5

◆「キュンキュン」は健康にとても良い!

T:Twitterでは絵の練習や、絵具材のお話をされているのをよく拝見します。今作の作画はどのように?

み:下絵は基本、すべてiPadで描いています。カラーの場合は、下絵を出力してからアナログで塗っていて。モノクロ原稿も、下書きを出力したものをトレース台で照らし、ミリペンでなぞった後スキャンで取り込み、デジタル処理で仕上げをしています。

T:すごく手間のかかる工程なんですね。

み:そうですね、でもこのやり方をしている漫画家さんがわりと多いので、安心しています。

小:扉絵などのカラフルな色使いもすごく印象的でした。カラーを描く際にはどういった部分に重点を置いていますか?

み:商業向けとしては、彩度の高い色使いを意識するようになりました。絵具って塗り重ねれば塗り重ねるほど濁るので、頭の中でちゃんと配色を決めてからなるべく重ね塗りをしないように、一発で決められるように心がけています。

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小:あのカラーはそうやって完成するんですね。単行本の表紙の絵もすごく素敵でした! 二人の距離感が良くて、キュンとします。

み:ありがとうございます! あれは3回くらい描き直していたので、そう言ってもらえてすごく嬉しいです。リテイクを出す方もつらかったと思います。

:いや、その節は何回も描き直していただいて、本当にありがとうございました。

:本当に素敵な仕上がりになっています。早く、たくさんの読者の方々に手に取っていただきたいですね。

み:はい! いろいろな読者さんの元に届いたら嬉しいです。

小:では、最後に読者の方々に向けてメッセージをよろしくお願いいたします!

み:私は10代の頃、クラスに溶け込めないタイプの人間でした。思春期の大半は性別に振り回されてモヤモヤする日々を過ごしていて孤独感もすさまじかったです。そんな中で、心の隙間をたくさんの漫画に埋めてもらっていました。なので私も「この世の中、生き辛いなぁ……」と感じている方たちを元気づけられるような漫画にできたら良いなと思ってます。

小:それはきっと伝わると思います!

み:とはいえ、私は「キュンキュンすること」が健康にとても良いと思っていまして、「私の作品が読者さんの日々の娯楽になったら嬉しいな」とも思っています。少女漫画にはまだ不慣れなところがあるものの、二人の恋を最後まで描き切れるよう、精一杯頑張りますので応援よろしくお願いいたします!

一同:ありがとうございました!

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みかみふみ先生のスペシャルインタビュー、お楽しみいただけたでしょうか。8/24(火)発売の『デザート』10月号では、最新5話がお読みいただけます! そちらもぜひご覧くださいね。

歩や先輩たちとのこれから、そして上総の想いの行く先をぜひご一緒に見守ってください。引き続きの応援、よろしくお願いいたします!!


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