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スピードキュービングの大会の運営について


はじめに

この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2024の1日目の記事です。

この記事では特にWCA、SCJ大会は区別しません。大きな差異はないです。
読む時期によって状況の変化がある場合があるため、WCA Delegate、SCJ審判員側が関わることは記載しません。

あくまで運営する母体がやるべきことを記載します。私が担当していないパート等に書き漏れ、齟齬等あるかもしれませんが、ご容赦ください。

また一部項目についてはWCA謹製のツールを使うことにより今後意識しなくてもよくなった項目もあります。

以上ご留意していただけると助かります。

大会運営について

大会運営は大きく分けて以下の作業が必要です。

  • 会場確保

  • 会場レイアウト

  • 種目設定(カットオフ、制限時間、ラウンドの決定)

  • 全体のスケジュール設定

  • 予算策定、会計作業

  • WCAサイトのページ作成

  • 役割分担

  • 機材運搬

  • 事前準備

  • 前日準備

  • 当日の運営

  • レポート作成

会場確保

一番大切です。
予算に大きく比重がかかるところのため、なるべく安価で200名規模で
交通アクセスが良い大規模の会場を探す必要があります。
大会の定員だけが全ての人数ではなく必ず同伴や見学者がいる前提で会場探しをしましょう。

会場レイアウト

昨今の大会は大規模大会なので競技卓が20卓以上設定されることが多いので
導線が悪いと大会運営に支障をきたします。
また以下の点にも注意が必要です。

  • スクランブルエリアが確実に隠れているか

  • スクランブルエリアからランナーが運ぶ際、競技の邪魔にならないか

  • 競技者が移動しやすいか

  • 観客席と競技卓が規則に則り、適切な距離が空いているか

  • 撮影席が設けられているか

種目設定

会場定員、開催日数が決まると自然と何種目できるかなど逆算できると思います。
制限タイムやカットオフを全体のレベルから考えて厳しくしすぎないようにしましょう。

全体のスケジュール設定

種目設定ができるとそれを実際のスケジュールに落としていきます。
過去の経験から種目ごとに1ラウンド大体何分掛かるか分かるのでそれをベースにスケジュールを設定していきます。

あまり遅い時間までかからないようにしましょう。
2024年現在では遅くとも17時には予定された種目を終え、18時までに表彰、撤収が完了するのが目安だと思います。

予算策定、会計作業

全体の予算を策定します。
基本予算は過去開催された予算項目をもってくることで良いと思いますが、収入、経費など細かい箇所で大きく修正する必要があると思います。

また準備期間にかかったそれらの経費を常に報告し正しく計上するようにしましょう。

WCAページ作成

WCAサイトのページを作成します。
基本的な項目は他大会からの流用して作っていくことになりますが、
修正した箇所が正しく英訳されているか等確認して修正する必要があります。また当日スケジュールもページ作成します。

申し込み終了後はWCA Liveのセットアップもすることを忘れないようにしましょう。

また参加者のデータとWCA LiveのIDが一致しているかを確認しておきます。
参加者のIDを見てWCA Liveに入力を行うためです。

役割分担

申し込みがあった人の役割分担をします。
まず種目策定したラウンドで競技者を分配します。
何も考慮する必要がないと割り振りも楽になるのは間違いないのですが、以下は運営が考慮している例です。

  1. 競技者の競技前にはスタッフ(スクランブラー、ジャッジ、ランナー)を入れない努力をする

  2. 割り当てるスタッフの数を競技者間で統一する。特定の人にスタッフを多くしない。

  3. 初参加者を特定のグループに固める

  4. 初参加者にスタッフを入れない

  5. 12歳以下の競技者にスタッフを入れない

ただし昨今では競技卓が多くなりスタッフが割り振れなくなることがあります。

一例
80名定員の大会で24卓ある場合、
競技者 x 24 + ジャッジ x24 + スクランブラー x 3〜5 + ランナー x 3〜4
≒ 60名近くの人員が動員されることになります。

加えて考慮4, 5及び考慮1の競技前にスタッフを入れないを実行すると、当然ですがスタッフを割り当てられなくなります。

これを解決するには

  1. 考慮4, 5の付き添いか保護者がスタッフをする

  2. 競技者以外で外部からのスタッフを用意する

しか手段がありません。

1、2で解決できない場合は考慮を無視することになることもあると思います。その際はご協力をお願いします。

機材運搬

当日はSCJから機材をお借りすることが基本なので荷物を受け取り管理し当日会場に機材を運搬する必要があります。
また事前に必要な機材をリストアップしておく必要があります。

事前準備

大会当日の競技者の動きの流れの確認、受付時の導線の流れ、司会の原稿の用意、記録用紙、名札の作成などをします。
印刷物は大量になるため、なるべく早めに用意をする必要があります。
印刷だけではなく裁断をする必要もあるためです。

また昨今の大会はランナー制のため競技者を座席固定する場合などは記録用紙に座席番号を記載することを忘れないでください。そうしないとランナーが毎回競技者を探すことになり運営に支障が出ます。

前日準備

昨今、大会需要が大幅に増加し、200名規模の会場が必要になることは先に触れたのですが、そのような会場のレイアウトをセッティングするには当日の朝からやるのは厳しいです。ですので前日に準備が必要になることがほとんどです。当日にやる場合は時間が取られるのでさらに種目やラウンドが減ることになると思います。

したがって日本の休日は基本的に土日になるため、祝日を含めた3連休でもない限りは日曜日に大会を設定しないと前日準備が休日にできません。
運営が平日に準備をするのは、厳しいものがあります。
(実際にしたことはありますが、過度に負担が大きかったと思います。)

当日の運営

当日は想定していない問題が多々起こります。
ですが、多くは些末な問題であることが多いです。
絶対に起こってはいけないことリスト化し事前に確認し死守することを徹底しましょう。以下はその例です。

  • 運営の遅刻

  • 参加費の盗難、機材の盗難等

  • スケジュールの大幅な遅れ

また初参加者には競技前にジャッジや競技の流れの講習をしましょう。あくまで個人的な意見ですが、初参加者がルールや競技の流れを知らずに大会に出ている現状はあまり健全ではないような気がしています。
ですので私達TSCでは事前にSCJ大会やミーティングオフ会などでジャッジ講習や競技の流れを説明することを定期的に行っています。

レポート作成

大会後にはレポートを作成します。
大会終わって熱いうちに記載をして完成させるスケジュールにしないと気持ちも終わってしまっているので完成が遅くなります。気をつけましょう。

どうして"大人"が重要なのか

大会は大人が主体になって運営しましょうと聞きます。
もちろん過去の実際の運営状況から見ても学生主体だと運営が回りづらいのは事実だと思います。大人だと上手く運営できるかと言われたら絶対に正解というわけではないですが、よりよく運営する確率が高いのは大人だと思います。

大会運営は言わばプロジェクト運営のため、自ら主体になって動く必要があります。運営はそれぞれの役割を自ら率先して動き、決められたスケジュールを守り解決していくことです。またそれらは責任感を持って動くことも大事ですし、責任が取れる人じゃないと厳しいです。

これは社会人が仕事で当たり前に普段からやっていることなんです。
なので単純に経験の差で大人が重要になるのです。

もちろん将来的に大人になって運営してくれる方には協力を惜しみませんし実際に私達の団体では学生も大会運営に参加していただいてます。

継続的に開催するには

継続的に開催するには、運営コストを下げる必要があります。

運営コストが上がり続けるとボランティアでやっている運営はモチベーションが下がります。モチベーションが下がると大会運営やらずに他の大会に出たほうがお得だ。という考えに至ります。要は囚人のジレンマですね。
囚人のジレンマで考えると「大会運営をせずに開催される大会に出る」ことが最大利益になるので皆がそう考えて行動すると大会はなくなります。それは界隈としては良くないですよね。

また昨今の大会はより需要が増しているため運営コストを下げるには以下の方法しかないと思います。

  1. 同じメンバー、同じ会場で大会を行うこと。

  2. 同じメンバーでも普段から対面した関係でないとコミュニケーションコストが下がらないため定期的に普段から会う関係性が必要。

  3. メンバーを増やし定期的に交代で開催する。

これらを加味するとコミュニティを作ることがベストになります。

同じメンバーであることはかなりメリットが大きいです。
寄せ集めのメンバーで大会やるときが一番大変です。
認識してることがお互いに違ったりして意思疎通もオンライン上がメインになるため作業の確認も常に必要になります。
加えてその次の大会に繋がりにくいと思います。

個人的な意見ですが、コミュニティもしくはクラブチームのような団体を作ると大会運営もしやすいですし、加えて強い選手も現れやすくなると思います。私達が運営しているTSCまたは前身の東海オフから出た日本を代表する選手も何名かいますよね。

全国にクラブチームができると良いなぁと思います。

その他

敬意を払いましょう。お互いに。

大会というのは運営と選手があって成立するものです。

今回記載した運営の事情を知らない人に良く言われるのが

  1. 割り当てられるスタッフが多い

  2. 種目が少ない

  3. 大会が少ない

これらの文句を運営に言うのは止めてください。
SNSでの発言は運営の目にも否が応でも入ってきます。
参加費払ってるからと何言っても良いというわけではないです。
参加費は参加するための費用です。

正当な批判は受け入れますが、その際はSNSではなく
大会終了後のアンケートへの回答や運営側にメールを送ってください。

これが給料が出るお仕事なら不満等を言われるのはある程度致し方ないことかもしれませんが、大会の運営側は運営にかかった時間のコストへの対価はほとんどもらっていません。モチベーションが全てでやっているところが大きいです。モチベーションを削らないでください。

運営メンバー集めについて

大会には大人の競技者の参加が非常に少ないです。
しかしながら運営には大人が必要なのは先述した通りです。

少し昔話をすると昔は世界的にも大人が競技者として多くいました。
ですのでそこから運営に回る人も多くいました。
個人名を出すのは控えますが、私を含め関西や北陸、関東にいましたね。

しかしながら競技レベルが上がると大人が数を減らしました。
理由はもちろん若い人に勝てなくなったのは大きいでしょう。
大人が減ると競技者から運営に回る人が大きく減ります。

そうなると大会運営の母体として持続性が下がります。
運営側も競技者と同じように自然増を目指したいのです。

ではどうするか。大人の皆さんが参加しやすい大会を開催すれば良いのです。もちろん大会以外からのコミュニティ活動や記録認定会やその他イベントから運営に入っていただくこともあるのですが、大会運営を目指すなら大会に出ている経験がある人がよりよいと考えています。

ですので今後も私達TSCでは11月に開催した成人大会のような制限する大会も時々開催していきたいなと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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