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おいていかれる東京のイノベーション

最近、色々な意味で東京が地方においていかれている気がしている。
地方に住み、東京でコワーキングスペースの運営もしていて思うのだけれど、最近、東京のイノベーションが遅く感じる。もしかすると、東京にはイノベーターがいなくなる日もあるかもしれないとさえ思う。これからの東京の役割は、地方のイノベーションが持ち込まれる場所に留まり、イノベーターが住む場所では無くなるかもしれない。

バイアスがかかりやすい大都市、東京

東京で目にする夢と欲の量は日本一である。夢を追いかける人達が発信するシグナルと、欲望に向かって突っ走る人達が出すノイズの量は相当な物だ。イノベーションのプロフェッショナルとしてさまざまな議論を繰り返してきて思うのだけれど、イノベーションはできるだけ柔軟な姿勢を保ち、色々な意見を取り込み、多様な思想がカオスな状態にある時に起こりやすい。いわばイノベーションは確率論であると感じている。

しかしながらノイズの量はある一定レベルを超えると、どうしても処理が追いつかなくなる。ノイズの量が増えすぎてフィルターが立ち上がる。
統計学を少しでも勉強した人ならわかると思うが、フィルターは結果にバイアスをかけてしまう。フィルターが必要な情報を消してしまうこと避けるのはほぼ不可能である。

私が東京にいる間、このフィルターは常に立ち上がった状態でいる。他人のイノベーションをまず否定的な姿勢で聴き、根拠のない拒絶をしてしまっている自分に時々気がつく。この現象は他人にもよく見かける。

疲れていたり、忙しすぎて、集中していたりすると、私はどうしても自動的にフィルターに頼りながら暮らしている。そのフィルターのおかげで多くの機会損失が起きていると感じている。そうして沢山のイノベーションを取り逃がす。このことが本当だとすると、あらゆる拒絶はイノベーションの敵だと思う。

だが地方では違う。地方は東京のようなノイズがある一定量を超えることがなく、フィルターがほとんど不要なのだ。

ハッタリでも隠れる場所がある東京

東京と地方のイノベーションで決定的に違う点はもう一つある。東京という街は巨大であるゆえに、隠れるところがいくらでもあり、オーセンティック でなくてもやっていける。ハッタリを使っても、また別のコミュニティーに流れていけるし、東京で耳にする「課題」や「ミッション」の多くは出来すぎていて、綺麗事にさえ聞こえる。なんとなく、それらの多くは他人事であり、心が感じられない。誰もさすがに「私はこの事業をお金の為にやっています」とは言えない。言ってくれればさらにオーセンティックな話は増えるのであろうけど。

自分ごとになって語らないとシラけられる地方

地方は失敗を許してくれないみたいな話はよく聞く。その理由は失敗を許さないというよりは、オーセンティックでは無い話に対する許容範囲が狭いだけでは無いのか、と思うようになってきた。もちろん地方でも適当な話は沢山耳にするけれど、地方のイノベーター達が解決しようとする課題の多くは、人々との生活との距離が非常に近い為、自分ごとになって語らないと周りはシラける。

最近になって、自分の地元について自分の名誉を賭けて動いている人達と作業する機会が増えてきたことで、地方のイノベーションは変化に繋がりやすいと感じている。アイデアや事業がプロジェクトとして成立できるところまで行く確率は東京と変わらないかもしれないけれど、成立した場合、その地元に及ぼす影響は大きく、地方のイノベーションの方が早いのではないかと思う。

遊びながら仕事をし、仕事をしながら遊ぶ が叶いやすい地方
 

もう一つ、東京がどう頑張っても提供できない価値が地方にはある。
これからのイノベーター達は遊びと仕事の境界線を知らない人達が増えると思う。私もそうだけれども、好きなことを仕事にしているため、遊びながら仕事をし、仕事をしながら遊ぶ。そうなると「職場」と「住む街」と「遊び場」と「自分のコミュニティー」の距離が重要になってくる。地方都市の多くは、この距離が非常に近いと感じている。地方にいると身の回りが遊びにあふれていて距離も近い。私の場合、この距離は短ければ短いだけ家族との時間も増え、よりきめ細かい時間の使い方の調整が効く。

東京では、この3つ、「住む街」と「遊び場」と「自分のコミュニティー」が分かれていて距離がある。都内の職場と自宅が離れていたり、休日は自然のあるところへ時間をかけて遊びに行ったりと、この3つの距離は物理的に離れていることが多い。また決められた見えない社会的なルールによってスケジュールが決められ、遊び優先のスケジュールにしようとするとうまくいかないことも多々ある。

地方都市は、3つの距離が近すぎるという問題もあるけれど、それは大都市のルールを持ち込んだ場合発生するケースが多い。オーセンティックを嫌う人は都会でも田舎でもどこに行ってもトラブルは付いてくる。

地方イノベーターにとって東京は巨大なコワーキングスペース

今東京は地方イノベーターからすると、巨大なコワーキングスペース的な存在だと思う。そのコワーキングスペースに人々が落としていくアイデアのかけらは、ほぼ放置され、無視されている。しかし地方のイノベーター達は東京に行き、人と繋がり、アイデアをブラッシュアップし、地元に沢山の「お土産」を持ち帰る。

これらの理由から、今後東京は、地方のイノベーションが持ち込まれる場所になり、イノベーターが住む場所ではなくなるのではと感じているのである。これからの地方イノベーションの動向が気になっているし、ドンドン関わって行きたいと思っている。同時に東京のポスト・イノベーションバブルについてさらに語りたいし議論を交わしたい。同じように語りたい方がいたら、ぜひ連絡が欲しい。


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