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もっといいファンド・マネージャーの条件〜あるマーケターの告白~


投資の世界には「コントラリアン」という言葉がある。

市場のトレンドの反対に相場を張る投資家のことで、逆張り投資家とも言う。

つまり他の大勢とは逆のことをする。買いが買いを呼んで値段がどんどん上がるような超人気銘柄には全く手を出さない。けれども、誰も見向きもしないような、激安で放置されているけれど実は中身がすごくしっかりしていて、いずれみんなが気付いてものすごいリターンを上げるような銘柄に投資する。

私はファンド・マネージャーでもアナリストでもないが、自分ではかなりのコントラリアンだと思う。

というのも、スパークスに入社してしばらくすると、社内でも非常に注目を集めていたファンド・マネージャー達がいるなかで、全く陽の当たらないところで着実にパフォーマンスを出している人がいることに気が付いた。

なぜ誰も彼に注目しないのか?

パフォーマンスは普通に考えて非常に良かった。ただ、当時のパフォーマンスを見ると、確かに注目を集めていたファンド・マネージャー達と比べて勝っているわけではなかった。

しかし投資というものは奥が深い。全く同じ投資手法でパフォーマンスが劣るのであればどうしようもないが、違う手法であればパフォーマンスが違って当たり前だ。小型株に投資すれば大型株とは違うパフォーマンスになる。

ちょっと彼に話を聞いてみよう、と思ったのがこの物語の始まりである。そう、物語はまだ始まってもいない。

丁寧なのは良いこと、とは限らない

当時の彼は一言で表すと、「とても丁寧な人」だった。もちろん今もそうだ。

ただ、丁寧すぎるのか、初めて彼の投資戦略について話を聞いた時、何を言っているのか理解することが非常に難しかった。使う言葉が難しい、というわけではない。説明が下手くそなのだ。

今でも笑い話になるが、同席していた私の同僚は、このミーティングの後、「これはダメだ。何も理解できない。あきらめよう。」と私に言った。

実は私たちは海外の機関投資家にスパークスの投資戦略を英語で紹介する仕事をしている。だから私は同僚の意見がよく理解できた。日本語でも理解できなければ、英語でどうやってプロに説明できるというのか?

ただ冒頭でも触れたが、私は自称コントラリアンだ。他人があきらめるからこそ面白い。私は1人でも定期的に彼の戦略の話を聞くことにした。というのも、私は昔、小学生の家庭教師をしていたし、大学生に経済学を教えていたこともある。ちょっとわからないと泣いてしまう小学生をなだめたり、数十人の大学生を前に教える恐怖を思えば、丁寧な人の話を何度も聞くことなどなんてことはなかった。

ひたすら粘り強く聞いてみる

投資はサイエンスであり、アートでもある。どちらの比重が高いかは個々のファンド・マネージャーによるし、その投資戦略の特性にもよる。

いずれにせよ重要なのは、優秀な人材が明確かつ有効な投資哲学をもって一貫した投資プロセスを長期間にわたって実践することで、再現性のある良好なパフォーマンスを生み出しているか、である。投資の世界では、それぞれの英語の頭文字を取って、(Philosophy, People, Process, Product/Performance)投資戦略の良し悪しを見分ける4Pフレームワークとも言われる。

サイエンスの部分は過去のデータを見れば理解できるとして、アートの部分は定性的で、再現性があるのかはすぐには判断できない。実は彼と最初のミーティングする前、私は彼が過去に書いたファンドの定期コメントを全て読んでいたので、彼の哲学や投資プロセスについてはなんとなく仮説を持っていた。が、それに再現性があるという確信はなかった。私は毎月彼とミーティングすることで、その再現性をひたすら粘り強く検証していったわけである。

毎月のミーティングで彼が最も嫌った質問はおそらくパフォーマンスの悪い銘柄について、ねちねち聞かれることだったと思う。本人は有難いと言っていたが、私がファンド・マネージャーだったら絶対嫌だと思う。

特に私が好物としていたのは、元々とても気に入って投資を始めた銘柄のパフォーマンスが悪い時だ。こういう銘柄は本来の投資プロセスに沿えば売るべきなのに、愛着とか、感情が邪魔をして、売れないことが多い。そう、ファンド・マネージャーも人なのである。

【Perspective】客観的に、冷静に見る力

逆に言えば、ここでしっかりと投資プロセスに沿って売れる人は、自分を客観的に、冷静に見ることができている証拠である。ここではこの客観性を英語でPerspectiveと呼ぶことにする。理由は後半でわかるので、是非読み進んでいただきたい。

彼はとても丁寧だがさっぱりした性格で、愛着のある銘柄でも投資仮説に間違いがあると分かるとポジションの解消にさっと動いていた。

失敗を失敗と認め、そこからの反省をしっかりと次へつなげていくことができるのは、どんな人でもどんな職業でも重要だが、ことに人様の大事なお金を預かる仕事となるとなおさらである。

この時はまだ気づかなかったが、彼の本当にすごいところはこの改善にある。印象的なエピソードを、写真を交えて紹介しよう。

【Progress】ひたすら改善する

これは欧米の顧客獲得のために、短い期間に超長距離の移動と時差ボケと闘いながら、数多くの海外機関投資家とのミーティングをこなした時の話である。リモートワークが当たり前となった今では懐かしい話になってしまった。

この出張では移動の関係で、次の目的地に到着するのが深夜になることも少なくなかった。もちろん時差ボケは夕方くらいから容赦なく襲ってくる。

当時はまだ英語でのプレゼンに慣れていないこともあり、冷徹な私は移動中、食事中にこれでもかと彼にダメ出しをした。彼は半分寝ていたのではないだろうか?ミーティングメモも参考までに渡すが、ホテルに着くとさすがにすぐ寝るだろうと思っていた。

ところが翌朝最初のミーティングが始まると、彼はこれでもかと復習メモを書き込んだプレゼン資料を取り出し、前日の反省点を全て押さえてプレゼンをした。これには本当に驚いたことを覚えている。

本人曰く、日本人の恥の文化が同じ失敗をしないようにと自分を動かしているといっているが、私からすると狂気のたぐいである。

狂気であろうがなかろうが、彼から常により良くなりたいという、改善したいという強い意志が感じ取れたエピソードである。これを英語でProgressと呼ぶことにする。

【Purpose】達成すべき目的がある

もう一つ、印象的な話をしよう。

実は彼は、私より8歳年上だ。いくら年は関係ない、とはいっても、やはり8歳も年下の人間にしつこく何度もダメ出しをされるのはあまり気持ちのいいものではないだろう。私だったら距離を置いてしまうかもしれない。

そのことについて彼に聞いてみたことがある。彼は、自分には投資という活動を通して達成したいことがあって、誰に何を言われようがそれが役に立つのであれば吸収すると言った。

「スポンジかよ。」

私は純粋にそう思った。

全く面白くない例えはさておき、なるほど、彼には達成すべき目的、つまりPurposeがあるんだなと。それが時差ボケや長距離移動の疲れを感じさせない行動力と改善の源泉になっているのだ。

結局、何の話をしているのか?

読者の皆さんはもう気がついていると思うが、これは私がコントラリアンだという告白ではない。私自身が自分の老後の資産運用を安心して託している、スパークスのファンド・マネージャーの話をしているのだ。

これまで彼の特徴として、Perspective, Progress, Purpose の話をしてきた。実はもう1つ彼には特徴がある。Passion だ。これに
ついては、是非スパークスの月次レポートを読んで、ご自身で感じていただければと思う。

前述の通り、投資の世界では4Pというフレームワークがある。Philosophy, People, Process, Product/Performance だ。明確かつ有効な投資哲学、優秀な人材と一貫したプロセス、そしてその結果としての再現性のあるパフォーマンス。

これらを求めるだけでも一苦労だが、 もっといい投資をするファンド・マネージャーを見つけるには、別の4Pの観点も役に立つかもしれない。

あなたは自分の老後の資産運用を安心して託せるファンド・マネージャーをどうやって探しているだろうか?

私が感じた 4P の観点も、ぜひ判断基準として心に留めてみてほしい。

※この記事は、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する決定はご自身の判断において行われるようお願いいたします。
この記事には、制作担当者の見解が含まれている場合があり、スパークス・グループ株式会社およびスパークス・アセットマネジメント株式会社の見解と必ずしも一致しないことがあります。

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