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一週遅れの映画評:『WAVES/ウェイブス』は、SNS時代のネオムービー。

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『WAVES/ウェイブス』です。

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 映像としてはですね、かなり良いんですよ。特にね陰鬱だったり傷ついていたりっていうシーンでその心情をどう画面に落とし込むかって部分には、ものすごく手をかけているしセンスもあると思う。
 映画の宣伝として美しい映像ってあるけど、それは嘘、とまでは言わないけどひっかけみたいなもので「この画面をしっかり見ていてくれ!」ぐらいの意味で言ってるんじゃないかな。つまり映像的にはこだわってるし素晴らしいものにもなっている。ただそれはどちらかっていうとネガティブな場面に集中していて、でも映画の宣伝文句として「憂鬱な画面構成が素晴らしい!」とは言えないというか……まぁそこがこの作品の問題点に直結してるんだけど。
 
 えーと、例えばホラー映画だったら「恐ろしいシーン、目をそむけたくなるような悲惨なシーンの映像・演出がすごい!」ってめちゃくちゃ宣伝として機能するわけじゃない?だって視聴者は怖いもの悲惨な場面を期待してホラーを見に行くのだから。
 でもこの『WAVE』って基本的なテーマが「愛と癒し」なのよ。だからその愛と癒しを描く準備段階として、当然悲劇が描かれるわけなんだけど、まぁわかりやすい「いったん落として上げれば良い話にみえる」ってやつなんだけどw 
 そこを推されても見せたい視聴者像と合致しないわけ。だからその悲惨なシーンがいくら映像的に優れているとしても、そこを前面にだすわけにはいかない。だから「画面を見ていて欲しいけど、想定する顧客に合わせた」表現として「映像美」みたいな部分に軟着陸してる。
 
 その上で、まぁ軟着陸とかわかりやすいとか、そういう言い方をしてることからわかる通り、お話としては……どう言おうかなw えーと、一番穏当に言うなら「どうでもいい」っていうか、えー「誰もが傷ついてますー、でも愛は確かにあるんですー、愛で心の傷は癒されるんですー」っていう、こっちとしては「……でしょうね」としかコメントできない感じで、マジでお話として語りようがなくて困る。こうやって毎週見た映画の話をするぞ!って身からしてみると、一番出会いたくないタイプの作品。コロナ関係で新作映画が少ない時期じゃなけりゃあ回避してたかもしれない。
 
 で、それを総合して考えるとこの『WAVE』は「カルトムービーになろうとして成れなかった映画」っていう評価が私の中では一番しっくりくる。
 世にいうカルトムービーって……あの、めちゃくちゃ雑なこと言いますよ、怒らないでね? 世にいうカルトムービーって、映像的に美しいあるいは奇妙で画面から目を離せず、ストーリーとしては異常に難解あるいは破綻している作品なわけですよ。
 うわー、自分で言っても「他人がそんなこといってたキレそう」って思ったわw まぁまぁまぁこれは超簡略化した話としてね。
 で、この『WAVES』。
 条件として半分は満たしている。映像面としてはぐーっと集中して見てしまうくらい良いのだけど、もう半分が、話がすっげぇわかりやすくて「それ知ってるぅー」みたいな感じだからもう飲み込みやすい飲み込みやすいw
 
 それだけだったら「カルトムービーになろうとして」とは言えないんだけど、途中でニューエイジっぽい、なんかジュゴンと一緒に泳いだりするっていう。あーあるあるそういうヒッピー文化系映像を出してくるタイプのスピリチュアル映画~、って感じで。それが「カルトムービー目指してんなぁ」って感想を強くさせてる。
 
 だからその……音楽、私は音楽に疎いから全然わからなかったのだけど、結構その曲が目立つシーンが多くて、だからそういった部分に造詣が深い人なら、そこで楽しめると思う。
 でっかいスクリーンと映画館の音響でミュージックビデオが見たい!って思うならかなり良い感じなんじゃないのかな?知らんけど。みたいな
 はっきり言うわ。映画としてはあんま価値無いだろこれ。
 
 いや別にね、怒ってるとかつまんなかったとか、そういうんじゃないんですよ。腹が立つ作品には「腹を立てる」って価値があるし、つまんない作品にも「つまんない」って価値がある。だから『WAVE』が不快だったとか、最悪とかはまったく思っていない。
 ただ映画としての価値は無いな。それだけ、悪口じゃなくてホントにメディア選択ミスだなって感じ。
 
 だからこれ楽曲ごとに区切ってYoutubeにあげるとか、なんならもっと細切れにしてTik-Tokにアップするとか、そういう切り取り方/編集の仕方をするべきなんじゃないかな?と。
 そういう意味では「SNS時代のネオムービー」って言えば褒めてるように聞こえる?聞こえるかな?じゃあそういうことにしとこうかw
 
 『WAVES』は「SNS時代のネオムービー」!
 
 よし、まとまったな。そういうことでひとつよろしくおねがいします。

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 この話をしたツイキャスはこちらの18分ぐらいからです。


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