spangle 「ぼくの世界 お母さんの世界」ほし の しほ

絵描きのほしのしほ。お絵描き寺子屋もやってます。https://www.faceboo…

spangle 「ぼくの世界 お母さんの世界」ほし の しほ

絵描きのほしのしほ。お絵描き寺子屋もやってます。https://www.facebook.com/TerakoyaEnten https://www.Instagram.com/ hoshi_no_shiho_enten

最近の記事

20 母になる

✴︎お母さんの世界 「あら〜このタイミングで、逆子になっちゃってるね。」 臨月まで残すところあと数日で、私のおなか中の赤ちゃんは 逆子になっていた。 月一回の検診日、私は毎回この子にハラハラさせられる。 前回の検診日は、赤ちゃんの元気度をチェックするタイミングで、 一番赤ちゃんが活発に動いているであろう昼の11時に予約をしたのに 超音波検査で爆睡しているのがわかり、すぐにはチェックできない と言われて別室に移され、お腹に帯を巻いて ピストルみたいなパンって音

    • 19 色とりどりのミッション

      ✴︎ぼくの世界 星の欠片が使う言葉は難しい。 しっかり聞いていても意味がわかんなかった。 僕はまだ聞きたいことがあったので 星の欠片の話はさておき、聞きたいことを質問した。 「話しかけてきた女の人と一緒にいたのがね、 青い部屋で見た女の人だった。 で、その人の首の後ろからすーって吸い込まれたから… 今ぼくはあの人のお腹の中にいるってこと?」 「そう。今キミはあの人のお腹の中ですくすくと育っているところ。」 そうなんだ、ぼくは今あの人のお腹の中で育っている。

      • 18 薔薇色の雲

        ✴︎お母さんの世界 「うん、大丈夫。ちゃんと結ちゃんと連結したみたい。 これから、新しい流れが来るよ。 結ちゃんに伝えることができたから、私もそろそろ 旅立つタイミングかな。」 「え、月子ちゃん どこかへ行っちゃうの? しばらくうちで暮らしてほしいぐらいなのに。」 「何言ってんの、結ちゃんの旦那さんのお邪魔じゃん。」 そう言われて、今度は私の頬を伝う涙が冷たく感じた。 「あのね、月子ちゃん。一つ告白したいことがあるんだけど、 私たち夫婦ってどこか可笑しいか

        • 17 ナビゲーター

          ✴︎ぼくの世界 ドコン、ドコン、と太鼓みたいな音がずっと鳴っていて、 今いるここは、その音に合わせてゆらゆらと揺れている。 ぼくは一粒の光となって、 体が溶けてなくなっていくのかと思ったら そういうわけではなさそうだ。 「よ、久しぶり。元気か?」 「うわ!星の欠片!ぼく、ものすごく聞きたいことだらけ!  ここは一体どこなの?ぼくは今どうなってるの?」 「キミは今お母さんの腹の中で、人の体に生まれ変わっているとこだ。  十月十日かけて体とタマシイが一つになっ

          16 温かい涙

          ✴︎お母さんの世界 「月子ちゃん、今、ここでなんか視えてる?」 さっきまで私を捉えていた月子ちゃんの美しい不思議な色の瞳が、 宙の一点を見据えてる。 私が話しかけても、しばらく月子ちゃんの意識は こことは別のところに集中しているみたいに見えた。 「あ、うん、ごめんごめん。 今さ、結ちゃんのところにやってくる魂と会話してた。」 「はぁ?ちょっとちょっと、待って。想像の域を超えてるんですけど。 月子ちゃんって何者〜? いやいや、この信じがたい状況が嘘じゃないの

          15 遭遇

          ✴︎ぼく 地上に近づいていくと、ぼくを囲んでいる水のベールは 急にスピードが落ちた。 水のベールを通して見る地球はピントが合わないカメラのようで 何も見えていないのと変わらなかった。 光のトンネルが行き着く先へ、ぼくを包んだまま運んでくれていた。 「今の結ちゃんにこれを伝えるために、私、ここに呼ばれたんだなって。」 いきなり女の人の大きなしゃべり声が、ぼくの耳に飛び込んできた。 びっくりして目をこらすと、水のベールのピントがぴったり合って、 向こう側に真っ黒

          14 よばれた理由

          ✴︎お母さん 確かに、月子ちゃんは昔から大人びていて 本当は私より一歳年下なのにお姉さんみたいだった。 大人に叱られている姿など見たことがなく、 逆にうちの母なんかはよく注意を受けていた。 だからうちの母と私の間で、 月子ちゃんをこっそりロッテンマイヤーと呼んでいたぐらいだ。 でも、その理由が… 「月子ちゃんって、スピリチュアルな人だったのか。」 「あ、私そのスピリチュアルって言い方、好きじゃないの。  使い方間違えているよ、日本は。  前世とかブームみ

          13 地球

          ✴︎ぼく 「特別なタマシイってのはさ、  まあ、生まれ落ちてからおいおいわかるってもんさ。  そんなになんでも簡単にわかっちゃったら、  お前さんも面白くないだろう?」 変にもったいつけてないで、教えてくれたっていいのに と思ったけど、ぼくは口に出さなかった。 それよりも、地球に近づくにつれて おしくらまんじゅうみたいにぎゅうぎゅうと 引っ張られるもんだから、だんだん苦しくなってきた。 真っ青な水の星に手が届きそうなくらいに近づいて見えた時、 周りの子ど

          12 秘密

          ✴︎お母さん 月子ちゃんが突然現れてから一週間がたった。 同じ部屋でこんなに長く過ごしたのははじめてだったが、 幸い、うちのだんなさんは出張中で 気を使う相手もいなかったし、二人で自由に過ごしていた。 私は本屋さんとパン屋さんで掛け持ちのバイトをしているので、 結構朝から晩まで働いていた。 月子ちゃんは私がうちにいない間に、買い物や掃除、洗濯を 引き受けてくれていて、夜に帰宅したら 玄関の明かりが灯っているし、夕飯を作って待っていてくれた。 私の仕事がない

          11 その先

          ✴︎ぼく そうこうしているうちに、ぼくが流されている 大群の行き先が見えてきた。 それは真っ暗闇の中で青い炎を灯した電球のようにも、 ぐるぐると渦巻く水の球のようにも見えた。 「あれが地球だよ。」 「土っていうより、水の球に見えるね」 「そうだな。こうやって何度か眺めているけれど  外側から見た時の地球は格別に美しい。  最初の頃に比べたら、幾分鮮明さに欠けるがな。」 「星の欠片は何度も来たことがあるの?」 「ああ、地球はこれで257回目だね。お前は…4

          10 べっぴんさん

          ✴︎お母さん 月子ちゃんはうちの母の親友の娘さんだ。 母親同士が仲が良いので、何回か一緒に遊んだり、お泊りした記憶はある。 私が高校へ上がる頃、彼女は東京へ引っ越すことになり それ以来、母から近況を聞いてはいたが 本人とは多分15年以上会っていなかった。 「月子ちゃん?? え〜? どうしたの?」 「結ちゃん、ご無沙汰してます。17年ぶりね。ちょっと泊めてくれない?」 「17年ぶりに訪ねてきたと思ったら、うちを宿代わりに?  な〜んて、うそうそ。どうぞ、上がっ

          9 特別なタマシイ

          ✴︎ぼく 「ほな、飛び込んでみよか」星の欠片がそう言ったけど、 ぼくの目の前は真っ暗すぎて、  箱の中に閉じこめられているのか、 宙に浮いているのかさえわからなかった。 「飛び込むって、どこに?」 「飛び込むって思えば、落ちるか‥‥」 びゅーーーーーーーっっっっん 星の欠片の言葉を聞き終わらないうちに、 ぼくは光の道に向かって、真っ逆さまに落ちていった。 光の道に近づいていくと それはたくさんの星の欠片と その欠片を持ったぼくみたいな子どもの 大群だ

          8  月子ちゃんの登場

          ✴︎お母さん 禊プログラムは難航した。 まず、自分に嘘をつかないというのがなかなか難しい。 意識してみると、私は毎日、何の気なしに嘘をついていた。 バイト先のパン屋さんから頂いた残り物のパンの感想を聞かれ 本当はパサパサしていてまずい、と思ったのに 焼くとサクサクして美味しかったです。とか、 このミュージシャン、マニアには人気なんだよね〜と話す先輩に あ〜その人、今来てますよねと、知ったかぶりで答える自分がいた。 ほかに自分でも判別しにくい嘘もあった。 マ

          7 ひかりの道

          ✴︎ ぼく おじいさんはそう言いながら水瓶をゆさぶって 中に入っている星の欠片が まんべんなく見えるようにしてくれた。 ぼくはその中から、真ん中が薄いグリーンで 外側に向かって黄色く光る星の欠片に手をのばした。 「俺を選ぶとは、キミ、挑戦者だね〜」 星の欠片がしゃべった?? ぼくはびっくりしておじいさんを見上げると、 そこにはもうおじいさんの姿も水瓶もなく さっきまで賑やかだったはずの人混みもない。 街灯がぽんっぽんっと一つづつ消えていくように、 ぼく

          6 禊人生のはじまり

          ✴︎おかあさん 神頼みするには、禊が必要だと思った。 今までの自分を省みて 清廉潔白な自分にならなければ、神頼みが通用するはずはない。 そもそもこの状況はきっと私が何かをやらかしちゃったんだ。 だからバチが当たってるんだろう。 禊をはじめることにしたその日、 私は夜中からだらだらと映画を見続けて 窓の外が白々と明けていくのを見ていた。 またやっちゃった、と体に迷惑をかけた罪悪感。 こんなんじゃあ宿りたい赤ちゃんだってやってこない。 よし、今からやろう、禊

          5 旅立ちの時

          ✴︎ ぼく 「はい、君、こっちへどうぞ」 真っ白で長いヒゲを生やしたおじいさんが手招きしている。 ぼくは走って近寄った。 おじいさんは大きな水瓶を抱えていて 中に光る玉がゴロゴロ入っているのが見えた。 ぼくは覗き込んだ。 「すごく綺麗な玉だね。ぼくにもちょうだい!」 「もちろん!そのために君はここへ来たんだから。」 そう言っておじいさんは水瓶を傾けた。 光の玉は大きさも輝きも色もバラバラだった。 「これは星の欠片といってね、 今からきみが旅立つ世界の地