見出し画像

物理の先生のはなし

中学・高校の時に好きな物理/地学の先生がいた。

身近な人を追いかけたくなることなど、人生はじめてだった。

ファンというやつだ。


中学の時に友達と、宇宙にまつわる調べものをしていた。

中等部の先生に質問したところ、高等部により物理に明るい先生がいるということで紹介されたのが彼だった。


先生は普通くらいの身長で当時27歳とかそこらで、特徴といえばちょっと声が高いことくらい、いたって普通だった。あと字が綺麗。アイドルオタク。京大卒。全然普通じゃないやん。

とはいえなにがそんなに素敵なのかはわからないけどとにかく好きだった。


私の知ってる27歳って、先生ほど落ち着いていて穏やかじゃない。(というのは思い出補正で、実際彼も彼女が出来たから髭を伸ばして嬉しそうにしてたり、エプロンがチキンラーメンのヒヨコだったり、子供っぽいところはあった気がする。)

でもあれだけゆっくり喋ってて聞いてられるのは内容が伴ってるからで、そこが素敵だった。


高校1年の夏にたまたま大阪に向かう電車で会う機会があって、流れで半ば強引に連絡先を聞いた。

でも別にメールを送りたいとか、ワンチャンあるかも、みたいなことじゃなくて。

学生はいつか終わるから。終わりがはっきりしてるたかがしれた付き合いを確定させるのが嫌だったのだと思う。

だから先生にはメールをほとんど送ってない。

たしか20歳くらいの時に送った。

闇の高校生活でメンタルがとんでもなくやられてた時に気に掛けてくれたから。せめて東京で楽しくやってることを伝えたかった。


それからいくつも携帯が変わった。きっと先生も変わってる。

メールアドレスなんてもう廃れた文化で。業務連絡にしか使わないし。そもそもアドレスは適当なタイミングで変えたりする。


先生はもう学校で先生をしておらず、市役所かどこかで他の仕事をしている、ということを人づてに聞いた。


この先、地元でも放映されるような大きい作品に出られたら、先生に報告したい。

いつだったか、帰省して高校に寄ったときに茶化すように芝居を続けてるのか尋ねられた。

私が次に先生に連絡を取ろうとするのはいつなんだろう。

ゆっくり頷く時のなんともいえないあの変な顔は、きっと変わってないんだろうな。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?