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【私のアウトドア履歴書♯5】田中 泰生さん(芸者東京株式会社 CEO)

スペースキーの小野です。今回の「アウトドア履歴書」は、ハイパーカジュアルゲームの企画・開発を手掛ける芸者東京株式会社CEOの田中泰生さんにお話を聞きました。釣りで人生が激変したと語る泰生さん。釣りとの出会いと影響について、そのインパクトあるストーリーを聞きました。


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田中 泰生 氏  芸者東京株式会社 CEO

AR開発、ソーシャルゲーム開発を経て、現在はハイパーカジュアルゲームの企画・開発を手掛ける。2018年末にリリースした「Snowball.io」が米国App Storeで1位を獲得。直近リリースした「Recharge Please!」も米国App Storeで1位を獲得するなど、快進撃を続けている。


泰生さんとフライフィッシングの出会い


-本日はよろしくお願いいたします!泰生さんは釣りをされるとのことですが、どのような釣りをするのですか?

よろしくお願いします!釣りの中でも僕は、フライフィッシング(以後、フライ)というジャンルの釣りが大好きなんです!この2年、平均しても週3日、多いときは週5~6日……、いや、毎日行っているんじゃないかな。

-それはすごいですね!フライフィッシングについて知らない人も多いと思うので、詳しくおしえていただけますか?

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フライとは“毛針”のこと。エサやルアーではなく、毛針を昆虫などに見立てて釣る手法になります。そしてそのフライは自分で作ったりもします。フライ=渓流釣りをイメージする人も多いと思うのですが、そんなことはないんですよ。イワナ、ヤマメなどの川魚から、クロダイ、マグロなどの海の魚、バラマンディやGT(ロウニンアジ)などの大型肉食魚もいけるんです!

-GTまで!?

そうなんです。みなさんがイメージしているフライとはだいぶ違うと思いますよ。フライは釣りというよりも“ハンティング”に近い。釣るにはまず、目を凝らして水面から魚を探します。そして「あの魚を釣る」と決めてその魚と向き合う。魚の目線の先にフライを落とすイメージでキャスティング。その1匹を釣るためのベストなタイミングを狙っているので、風向きや強さ、水面の様子やそのときの心境などシチュエーションが今でも鮮明に残っているんです。釣り自体の楽しさだけでなく、思い出として何度も楽しめるのがフライの醍醐味ですね!釣るのは圧倒的に難しいのですが、そのゲーム性の高さはやみつきになるものがあります。

-イメージよりもずっと奥が深そうです!

最近は、自分の思い出のためだけに、釣りフィルムをつくるのにハマっています。ちゃんと撮影クルーを組んで釣りに同行してもらって。こんなことするのは僕ぐらいなんで、現地のカメラマンさんも面白がって協力してくれます(笑)。今度釣りで行くエリアを伝えたら、「知り合いのカメラマンいるから紹介するよ」って紹介してくれたり。

-普段はどのような場所で釣りを?

まあ、フライで魚釣れそうなところにはあらゆるところに行ってますが(笑)、国内だったら夏場は北海道によく行きますね。奄美大島も好きだし、とにかくいろいろな所に行きます。最近は外出規制があるので、近所の多摩川や朝霞の釣り堀などにもよく行っています。コロナになる前は、仕事の関係で海外出張も多く、海外での釣りもよくしていました。

北海道 朱鞠内湖

北海道然別湖

ガイアナ共和国

-それだけ好きということは、当然子供の頃から釣りが好きだったんですかね?

いえ、僕は大阪の街中育ちで釣りとかアウトドアはほぼ一切縁がなかった。アウトドアよりもスポーツが好きで、学生時代はラグビーとか、最近だとゴルフにハマってました。正直、大人になってもつい最近まで全く釣りやアウトドアに興味はなかったです。

-意外!そこからどうやって釣りに出会ったのでしょうか?

5年くらい前に、川邊さん(ヤフー株式会社 代表取締役社長/CEO)や長谷川さん(株式会社チャーム 取締役)に誘ってもらって海釣りに行ったのですが、正直面白さを感じられなくて(笑)。潮を読んで魚群を探して……、釣りを楽しんでいるのは釣り船の船長の方じゃないかと。僕たちはただの下請けのような感覚で、「何なんだこれは!」と思いました。

-なるほど。最初の出会いもそんなに良い印象ではなかったんですね。

はい。フライフィッシングにどハマりした結果、今では他の釣りも含めて釣り全般好きになっちゃったんですけどね(笑)。そんな感じで誘われれば行く程度で釣りとは関わってきました。その関わりが劇的に変わったのは2年前。北海道の十勝にいた友達に「フライやらないか」と誘われたんです。その友達は十勝をフライの聖地にするべく活動していて、フライ入門カレッジのパイロット版みたいなものに誘われたのが最初。僕も当時は軽いノリで行ってみました。

そこの先生としていらしたのが、残間正之(ざんま まさゆき)さん。後から知ったのですが、業界では知らない人はいないんじゃないかというくらい、フライでは有名な方です。残間さんはロット1本持って、世界中をフライしながら回っているような方で、話を聞いているとぐいぐいと引き込まれました。

(フライフィッシングの師匠、ざんまさんとー。)

残間さんと出会ったその頃、僕の会社は危機的状況にありました。本気で出家でもしようかとブータンまで行ったほどです。

お金もどんどんなくなっていって心にも余裕がなく、とても釣りなんてやっている場合ではなかったのですが、残間さんが世界各地を放浪しながら釣りした話を聞いて、お金がなくなってもこうやって楽しく生きていけるもんなんだ、と知って心から救われた感じがしたんですよね。これは弟子入りしたほうがええわ、と思って、次の週から残間さんの釣りについていくようになったというのがフライに行き始めた経緯ですね。

-残間さんがきっかけとなっているんですね。

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残間さんは不思議な魅力がある人でしたね。ぼろぼろの中古車に乗って、魚を釣ったり山菜を採ったりしながら暮らしている。お金はないけど、圧倒的に幸せそうな残間さんを見て「こんな人生もあるんだ」と衝撃を受けました。会社が崩壊寸前、お金も自信も失っていた僕の気持ちは、残間さんの生き様に触れて自由になった気がしました。同時に、残間さんという人がすごく好きになりました。

それからは、残間さんと会いたくて毎週北海道に通うようになりました。僕がフライで釣った最初の1匹は十勝の里川でのヤマメだったんですが、残間さんと一緒に釣りをして「あれ狙おう」と言ってくれた思い出の1匹。鮮明な記憶です。

-ステキですね。

それまでも僕はアウトドアには興味なかったし、誘われて東京郊外のキャンプ場みたいなところに行くこともたまにあったんですけど、「なんでわざわざ外でご飯食べるんやろうなー」と。作られた自然感が半端なくて、そこら中人もいっぱいだし、蚊に噛まれるし、すっごく不思議で仕方なかった。家で食べるほうが絶対美味しいし衛生的にも懐疑的で、むしろ嫌いでしたね。でもよくわからないまま残間さんについて行った最初が、日高の山奥だったんですよ。その渓流を見て感動してしまった。僕はそれまでこの世で一番美しい自然は、女性という存在だと信じていたんですけど、この日高の渓流の美しさたるや、もう、なんというか……。そんな本当の自然の中で食べるとこんなに美味しいんだと、それも衝撃でした。そして、そんな大自然の中、信じられないほど美しい魚が釣れちゃう。それからは、こんなインタビューされるようになる程、のめり込んじゃいましたね(笑)。

-残間さんとフライから多くのことを学ばれたと思いますが、中でも印象に残っていることはありますか?

残間さんがよく言っていたのは、「フライは魚を釣るんじゃない。“人”を釣るんだ。」という言葉。フライを通じていい仲間とたくさん出会いなさいということなんですが、僕もフライを始めるようになって、たくさんの素敵な先輩や友達ができました。

(最高のコーチであり、最高の友人でもあるYoshi)

(北海道最強ガイドのチバちゃん)

(イトウを通じて知り合った仲間たち)

(釣らせるオトコりゅうちゃんと、ハーミット稲見さん)

今では日本全国だけでなく、海外にも釣り友達がたくさんできました。夜な夜なインスタとかFB通じて釣りの話をして楽しんでいます。世界中のいろいろなところから「今度とっておきのエリアおしえるから釣りしにおいで!」と誘いが来るので、今からワクワクしています。早くコロナ収束して海外に行けるようにならないかなぁ~。

-「“人”を釣る」いい言葉……。釣りに行ける日を想像するだけで楽しめちゃいますね(笑)。


泰生さんとギアの話


-泰生さんのお気に入りのギアは何ですか?

ギアはもちろん機能という面でも大事なんですけど、僕にとって、ギアってファッションでもあるんですよね。だからお気に入りのひとつという概念はないかなぁ。ほら、今オフィスですけど、最近手元に届いたリールだけでもこんなにあるんですよ。

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-色とりどりのリールですね!

毎回釣りに行く場所や魚に合わせて、リールもロッドも替えています。だから増えちゃうんですよね。リールも50個、ロッドも40本くらいあるかな~。

-うらやましい!違うほうが釣果につながるんですか?

いや、釣果はあんまり関係ないです(笑)。あくまでファッションとして。例えば、タイでバラマンディを釣るんだったら、トロピカルな雰囲気のあるこのオレンジカラーのリールが似合うな~とか。金色のイワナが釣れると聞いて飛騨高山に行ったときは、金色の魚体に合わせてブルーのランディングネットをチョイスしたりとか。リール、竿、服装も全部、その魚と場所に合わせてコーディネートしています。

フライフィッシングには「match the hatch(マッチザハッチ)」という言葉があって、このような考え方です。

今から釣ろうとしている魚は
→今の季節はこんな物を食べている
=だからそれに似せたフライを作って魚を釣ろう!

微妙な差のフライを使い分けることで、まったくかからなかったのがウソのように魚が釣れることもあります。そのマッチザハッチの考え方の延長として、この季節にここでこういう魚釣るんだったら、それに一番気分が上がる服やロッドやリールで釣るほうが釣り人である自分も楽しいんじゃないかと思い出しまして。その一環として、フライだけでなく全体をマッチザハッチしているだけ。まあ、仕事が前より少しうまくいった分少し増えた収入を、フライフィッシングへの感謝の思いで、業界に日々還元しているのもあります(笑)。

-なるほど!

でも最近になってこの考え方はビジネスにおいても普段の生活においてもすごく応用が効くんじゃないかと思い始めています。僕はそれまで洋服とか無頓着で、誰と会うのも、どんなに大事なミーティングでもジャージとか半ズボンで参加しているようなふざけた野郎でした。

でもフライを始めてある日、気付いたんです。「魚に対してはマッチザハッチだとか言って、こんなに気を遣っているのに、人に対して全くマッチザハッチしてないやん!」と。その人、その場に合わせた服装をしたほうがいいなあと思うようになったんです。講演するときはスーツとか、今日のような釣りのインタビューはアウトドアの服がいいなとか。

(ビジネスのときはスーツ着ます。)

-意外と大事なことですよね。

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服装だけじゃなくて物事全体に対する姿勢も、フライから多くを学びました。僕、めちゃくちゃ不器用なんで、タイイング(フライを自作すること)は細かい作業のため苦手だったんですが、タイイングを通じて物事に丁寧に向き合う姿勢を学びましたね。あと、フライの一連の流れもすごく影響ありました。フライってはじめに、釣り場となる川辺へ行く。すぐに釣るのではなく、まずは静かに川辺を歩いて観察するんですね。どのあたりに魚がいそうかなとか、あの辺りでランディングできそうだなとか。そういうことを考えながら、静かに川辺でたたずむ。がつがつするのは厳禁で、あくまで魚のペースに合わせてその時を待ちます。

心を落ち着かせて相手と向き合うその一連の流れからも、今まで人に対してこんなに神経使って接していなかったなと反省しました。そりゃ、うまくいくはずがない。魚と接するように丁寧に人に接するように心掛けたら、自然と仕事も流れが良くなってきたような気がします。そのおかげかどうか定かではないですけど、一番最近出したゲームもほら、USのゲームランキング1位なんですよ!

-おお!すごい!

さらにすごいのは、このご時世でダウンロード数がZOOMに勝ったんです!すごくないですか!

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(※米国App Store(無料)のDLランキングで1位に!)

-ZOOMに勝つとかすごすぎる(笑)!

なので、フライを始めたおかげでプライベートも仕事も順調になりました。魚から学んだように仕事をする。僕は、フライフィッシングを通じて幸せになっているなーと心から思いますね。


泰生さんと釣りと旅


-残間さんのように泰生さんも、旅するように釣りを楽しんでいますが、旅と釣りの関係性とは?

釣りで旅に行くと、人ごみのできる観光地とかどうでもよくなってくるんですよねー。魚って基本素晴らしい自然の中にいる、しかも釣りで行くと、その自然の中に自分一人みたいな状況になるんで、究極に贅沢な感じで自然を満喫できるんですよ。

そして、フライやっている人って、釣りの中でも少数派なので、どこの国に行っても、割とすぐ仲良くなるんですよね。

-そうなんですか!?

フライのキャスティングは独特なので、やる人はすぐわかります。「あいつフライだな」とわかると、結構声をかけてくるんですよ。海外なんか特にそうで「なんでこんなところで釣りやってるんだ」って。すぐ仲良くなりますね。

僕は出張とかで海外行くと、必ず地元のフライショップに行くようにしているんですよ。はるばる日本からきたフライやっている奴ってことで、どこに行ってもすぐに盛り上がって、釣りのポイントやガイド紹介してくれます。最近は、コロナで海外行けないんで、夜な夜な海外のフライショップをネットで見てるんですが、そこでもチャットしたりして釣り談義にすぐなりますねー。

-泰生さんのオープンな人柄もそうさせるんでしょうね!

旅行は基本的に計画は立てないです。往復の飛行機だけ取って、あとはフリー。旅人として、現地と人と交流するのが好きなんです。友達になったら「今日は泊まっていけ!」みたいな、鶴瓶の家族に乾杯とか、ブラタモリとか寅さん的な旅がいいですね。そして、釣りしに行ってるんですけど、究極的には魚釣れようが釣れまいがどっちでもいいと思ってます。出会いとかハプニングとか、体験としておもしろければ僕としては全くOK。

特に海外のフライマンはフレンドリー。実は僕、(競技の)フライフィッシング世界大会の日本代表なんですが、世界選手権つながりでもたくさん友達ができましたし。

(ジャパンチームの先輩たち)

-さらっとすごいこと言ってますよ(笑)。

そうそう、2020年フィンランド大会の代表メンバーなんですが、今年は延期になっちゃったんですけどね。僕よりも上手い人がたくさんいる中で、恐縮です。競技のフライは普段やっているファンフィッシングとはまた全然違う世界で、こっちもおもしろいですね。

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(wffc2019の様子)

僕は正直言ってキャリアが2年しかないし、今でもほんと下手なんですけど、メンバーとして選ばれた理由がもしあるとしたら、この2年間のめり込んでいる情熱かなあ(笑)。それは、負けない自信ありますね!ほんと節操なくフライと名が付くことであれば、日本でも世界でもどこでも行くし、自分の今のレベルを省みずいろんな釣りしてますからね。

-各地の川を見てきた泰生さんがおすすめする川はありますか?

NZのブラウントラウトを釣った川、朱鞠内湖のイトウ、奥飛騨、東北、北海道、沖縄、モンタナやイエローストーン、タスマニア、東京湾、ヨーロッパ、アマゾン、多摩川や荒川、東南アジア……、もう全部いいです!もし聞かれたら「全部行ってみて!」と答えますね。

また、魚の種類や大きさも関係ない。アマゾンでピラルクも釣るけど、多摩川のウグイやコイも楽しい。小さなオイカワでもどんな魚・場所であってもフライで釣ると楽しい。すべての魚、すべてのフィールドをフライでやるのが楽しいんだろうなって思います。

泰生さんがこれから釣りに思うこと


-今後はどのように釣りと付き合っていきたいですか?

やっぱり残間さんの影響は大きくて、フライを通じて人生を楽しむこと、そして、魚より”人”を釣ること。ひとりでも楽しいけど、仲間と釣るのもすごく楽しい。あの生き様が僕の原点です。これからもフライを通じて、たくさんのおもしろくて素敵な人たちとの出会いを楽しみたいと思っています。

フライは2018年から始めたのでまだ2年くらいなんですが、釣った魚と種類、そのために訪れた場所で考えると我ながらほんと呆れるほど行ってますね(笑)。とはいえ、まだ見ぬ魚たちがたくさんいるので、日本全国、世界各地でこれからも釣りしに行きたいですね。カナダのスチールヘッドやモンゴルのタイメン、セーシェルのGT……。

-2年とは思えない濃さですね。

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やってみて感じているのは、フライフィッシング自体が絶滅危惧種だということ。世界的に見ても、釣り業界自体は斜陽にあって、中でも日本のフライは絶滅の危機に瀕している。だからなのか、フライの仲間意識の絆は強いなと感じますね。釣り場である川への環境意識も高く、付き合っていてもおもしろい。そういう仲間たちと、フライが絶滅しないような活動も今後少しずつやっていきたいなと考えています。

-そのつながりで、釣り業界に期待することはありますか?

世界の釣具屋と頻繁にコミュニケーションを取る中で感じるのが、日本の釣り業界は少しプロモーションにやりようがあるかなということ。僕がよく利用するコロラドの釣具屋も、例えばカタログひとつとってもすごくカッコいい。また、世界の釣りの展示会はフィルムコンテンツによるプロモーションが主流になっているんですが、その動画もクオリティ高くてカッコいいんですよ。

フライはかっこいい大人の趣味としては相当いいと思うんですよね。そして、僕みたいに子供の頃から釣りしてなくても、別にいつからはじめたって遅くないと思うんですよね。大人から見ても「カッコいいな!」と思うフライフィッシングを通じてアウトドアでの遊びとかをもっとアピールして、フライフィッシング業界が絶滅しない程度に盛り上がってくれればいいなあと思ってます。だって、フライショップなくなったら僕行くところなくなりますからね(笑)。

-泰生さん個人でやってみたいことはありますか?

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先ほども少し触れましたが、世界中いろいろなところに行きつつも、今後もやっぱり日本をベースに生活すると思うんで、日本にフライフィッシングが楽しめるいい釣り場が増えたらいいなあと思ってます。手伝えることを見つけて少しずつやって行こうかなあと。僕なりの言い方をさせてもらうと、“面(つら)がいい川”を維持していきたいですね。“面がいい川”とは、魚が釣れなくても歩いているだけで気持ちがよくなる川。「こんな魚が出てくるかもしれない」とワクワクしながら、きれいな水辺を歩いて静かに佇む。そんな川があるだけで幸せだし楽しくなりませんか?“面がいい川”は釣れなくても100点、釣れたら1万点(笑)。そういう川をひとつでも多く残すお手伝いしたいですねー。

“面がいい川”はバーベキューも最高。網走の友人と北海道の秘境をマウンテンバイクで行ったときも最高でした。彼は本業がクラフトビール屋なので、山奥にビールサーバーを持ってくるという強者(笑)。山を登っていい感じの河原で焚火をしながら、釣りを楽しむ。満天の星の下での野営は、まさに自然と一体化してましたね。

-うわぁ、ほんとに最高。

川を守る活動に付随することですが、いつか日本の川にもレギュレーションとフィッシュアクセスを整備したいですね!入れる人数を管理するのはもちろん、ライセンス料ももうちょっと高くしてもいいんじゃないかな。例えば僕みたいな旅人からは高くとるとか、いい川は残していく仕組みを、今からきちんとやっていかないといけないと考えています。

これは川だけでなく釣り全体に関わる問題だと考えていて、そもそも釣った魚は何匹まで持って帰っていいのか、リリースするのか、釣り上げていいサイズの規定はどうするのかとか。海外でやっていることを日本でもしっかり取り組んでいく必要があると思います。日本は海に囲まれた国のため水産資源は豊富ですが、無限ではありません。年々、魚が獲れなくなってきているようですし。このままの状況が続けば、いつか釣りそのものを楽しめなくなる時が来るということを、現時点で多くの人にわかってほしいなと思います。

-水産資源の問題は、釣り業界の最大の課題でもありますね。

もう規制を強めていくべき時期にあるのではと思います。僕が大好きなモンタナのイエローストーン国立公園はフライの聖地でもあるのですが、年配の皆さんが、夫婦や友達同士やファミリーでフライを楽しんでいるんですね。日本でいうところの、週末にゴルフを楽しむのと同じ感覚。僕も齢を取ったときに、彼らと同じようにフライを楽しみたいので、釣りがなくなるのはつらい。10年後も釣りが楽しめる世界を守りたいと思っています。

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男は人生の最後に釣りをするんでしょうね。ヘミングウェイも、フロリダでのターポン釣りから始まって、晩年はカジキやマグロとかずっと追いかけていたそうですし、ありとあらゆる快楽を追求していたであろう昭和のスターの松方弘樹さんも、人生の最後は釣りだけしてたようです。人生を遊びつくした男が最後にたどり着くのが釣り。だから、きっと男は最後に釣りをするんだろうなぁ。

-釣りには誰をも魅了するものがあるんでしょうね。今日は貴重なお話をありがとうございました!


【おまけ】最新釣果情報!

(渋いコンディションの中、3kgのキハダマグロさんとれました😊)

(トビウオさんがフライで釣れた。)



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■ 編集後記 ■

たった2年とは思えない泰生さんの釣りへの想いに、心が揺さぶられました。泰生さんの豊富すぎる体験記は、大爆笑あり、じ~んと胸打たれることもあり、終始引き込まれっぱなしのインタビューとなりました。

残間さんの「フライは人を釣る」という意志を体現し楽しんでいる様子は、まさにフライフィッシング伝道者。泰生さんの誰に対してもフレンドリーな人柄を活かして、フライフィッシング業界に新たな風を吹き込んでいただきたいなと強く感じました。

(画像:インタビュー中にキャスティングを披露してくれた泰生さん。仕事中でも練習に余念がありません!)