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【キャンプ場インタビュー♯4】CAMP SPACE DOSHI 2.0

スペースキーの小野です。今回のキャンプ場インタビューは、キャンプの聖地として名高い道志エリアにある「CAMP SPACE DOSHI 2.0」さんにお話を聞きました。こちらの売りは何と言ってもサブスクリプション型のキャンプ場であること。なぜこのモデルにしたのか、効果はどうだったのか、赤裸々にお話いただきました。


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発起人 河西 誠さん
大好きなキャンプができる場所を作りたいという想いから、40歳で独立を決意。現状に満足することなくサステナブルに成長させていくことを理念に掲げ、常にアップデートすることを意識する(できる)キャンプスペースを作るべく邁進中。



Twitterでの出会い


-サブスク型キャンプ場、すごく気になっていました!いろいろお話聞かせてください!

はい、ぜひ!CAMP SPACE DOSHI 2.0(以後、CSD)は2018年9月からスタートしました。ソロの利用であれば、月額定額3000円で何回でも利用いただけるシステムです。また、Facebookを基本としたメンバーシップ制を導入しており、メンバー間でのオンラインコミュニティも特徴のひとつとなっています。現在は150名ほどのメンバーが登録しています。

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-そもそも、なぜサブスクリプションにしようと思ったのですか?

そうしようと思っていたのではなく、結果的にそうなったというのが真実ですね。まず立ち上げの経緯から話してもいいですか?

-もちろん!お願いします!

僕は元々キャンプが好きで、特にこの道志エリアが大好きでした。CSDを始める前は外資のアパレル企業で勤めていたのですが、子どもが生まれて育休取得したときも、乳幼児を連れてキャンプばっかり行っていましたね(笑)。復職してからもキャンプ熱は冷めやらず、「いつかキャンプ場をやりたい、自分のキャンプ場を作りたい」と思いながら悶々と過ごす日々を送っていました。

居ても立ってもいられなくなって、土地探しを始めてみたんです。役場へ行って問い合わせてみたんですが、なかなか取り合ってもらえなくて。そこで、キャンプユーザーはどんなキャンプをしているか調査をするために、Twitterを始めてみました(それまでSNSなんかやったことがなかったのですが)。ひたすらフォローしていたらフォロー数が2000人くらいになって、そうしたらフォローバックしてもらえるようになって。そのフォロワーさんの中で「どなたかキャンプ場用地を持ってないですか?」と聞いてみたんですね。もちろん、本気でやりたいんだという熱意も伝えました。そうしたら、3件のご紹介をいただくことができました。

-おお、すごい!(その行動力も)

1件は富士宮のキャンプ場で後継者を探しているとのことでした。ただ、僕がやりたかったのは経営ではなくキャンプ場をつくることだったので、少し違うなと。2件目は南伊豆の2万坪の土地。2万坪は魅力的だったのですが、少々広大すぎるのと、世田谷の自宅から通うのは遠くて厳しいと判断し断念。残ったのが、CSDがあるこの土地。大好きな道志で1000坪という、距離的にも規模的にもちょうどよい土地と出会い、いいなと!そこからは家族に土下座して、キャンプ場をやるための了承を得ました。

-土下座だったんですね(笑)。

いやぁ、今でも妻のあの形相は忘れないですね(笑)。突然僕が突拍子もないことを言い出したので、家族としては急展開。困惑して当然です。でも最終的には「1年間やってみて、もしダメだったら就職すればいい」と理解を得ることができました。

-奥様の理解がすばらしい!


CSD開拓記


家族の了承を得て、いざキャンプ場作りを始めようというのがおととしの9月。そこからは開拓が始まりました。(土地所有者のおじいさんから土地を借りる形でスタート。)

草刈り(9~10月)

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1000坪をひたすら草刈りするところから始めました。その頃に台風も来て大変だったのですが、よかったこともありました。それは、村との親睦を深められたこと。台風をきっかけに、倒木の片づけや畑の復旧を手伝ったことで親睦を深められたのは、結果的にとてもよかったなと思いました。

残土を落とす作業(11月)

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草は刈り終わったものの、まだとてもキャンプができる状態ではなく。土地には残土の山があり、それを落としてテントが張れる状態する必要がありました。1000坪の土地は開発するのに役場へ申請をする必要があるのですが、なかなか協議が進まなかったんです。要は、キャンプ場に適していない土地だから、開発しないほうがいいということ。申請が通る前に重機を使うことに抵抗もあったので、「であれば、スコップでやろう!」と。Twitterでスコップ要員を募集して、4~5人くらいで残土の山と戦いました。

-せ、1000坪をスコップで……。

みんな都心に住んでいて、スコップも握ったことがないようなメンバーでした(僕も含めて)。そんな彼らと手を血豆だらけにして奮闘していたら、所有者のおじいさんが見かねて、重機で残土を落としてくれたんです。すごい助かりました!(その後、役場へもうまく話をつけてくれてさすがです!)

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そんな感じでなんとか20張くらいは確保できるようになったので、ボランティア同士でキャンプしながら開拓していきました。手探りしながらでしたが、すっごく楽しかったですね~。

-ここまでで、すでにストーリーが濃い!

できるところはハンドメイドでやりましたが、さすがにインフラ面(給水、排水等)はプロにやってもらわないと不安なので、そういう部分には費用が必要でした。ただ、僕の中では融資で借りるなどリスクを負ってまですることには疑問を感じ、解決手段としてクラウドファンディングで資金を集めました。CSDの状況を伝え、「こういうことに使いたいから協力してください」と呼びかけたところ、最終的に155万円ほど協力いただくことができました!

-拝見しましたが、1件ずつちゃんとメッセージを返していましたね。あのやりとりを見ていたら、そりゃ応援したくなるなと思いました!

ありがとうございます!お金を借りてスタートしたことだといつでもやめられますが、クラウドファンディングは人から“想い”を託されるもの。想いをもらったら、そう簡単にはやめられないですよね。

-名言ですね。

徐々にCSDができていく過程で、「どういうキャンプ場が理想?」というのをTwitterで聞いたんです。100件以上のコメントをいただいたのですが、一番多かったのが、近隣サイトの問題。「隣のサイトがうるさい」などは誰もが抱えている問題であることがわかりました。一方でこの問題をどう解決しようかと。一括管理は難しいし、そもそも僕は管理人がやりたかったわけではないので、アイディアもなく。Twitterでいろいろと相談していたら、「メンバーシップ制にすればいいのではないか」というアイディアに至りました。メンバーシップ制にすれば、周囲への配慮も働くし安心感も増す。メンバーシップ制にするなら、サブスクリプションだといいよね。何度も来れるし、みんなにとってメリットも多いという観点から、結果として現在のモデルになりました。

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なので、ここでは何かを始めるときは必ずメンバーに意見を聞いてから始めるようにしています。僕はあくまで取りまとめ役。考えもしなかったアイディアが集まるので、このほうがおもしろいなと感じています。

-なるほど~。最適な手段として、サブスクリプションにたどり着いたんですね。その民主的な進め方も独特でおもしろいです!


CAMP SPACE DOSHI 2.0のココが推し


-CSDの推しはずばりどこでしょう?

ここは森に囲まれたキャンプ場なので、星がすごくキレイです。標高も高いので(700m)、夏でも冬でも最高ですね。

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-都心から90分とは思えない!

イノシシや鹿、たまに熊などの野生動物も出る自然豊かな森です。(※動物は人には近づきませんのでご安心を!)本当に都心から近くてもこんなに豊かな自然があるのかと驚かされますね。近くにある村との交流もあるので、自然体験もできますよ!畑の手伝いをすれば新鮮な野菜がもらえたり、森の間伐を手伝えば薪が無料でもらえる。そういう体験も、都心に住んでいると貴重ですよね。

また、CSDはルールがないのも特徴の1つかと考えています。チェックイン・アウトの時間も決まっていないのですが、それでもトラブルなく運営できるのはメンバー全員がFacebookでつながっているからこそなせる業。オンライン上でつながりやりとりすることで、配慮する気持ちが生まれています。

テント同士の間隔も、結構せまいんですよ。でもみんな知り合いのようなものなので、そこも気にならないようです。あと、トイレがキレイ!みんながお客さんではなく「管理人」という意識をもっていただいているので、そこの意識が高いのはすごいなと思います。

-その視点があるのは強いですね。

施設の使い方もそうだし、助け合いの精神がほんとにすごい。物資の共有もオンライン上で当たり前に行われているんですよ。「これ使ってないチェアだけど誰か使う?」などのフリマのようなことをはじめ、「CB缶が足りなくなってきた……」とつぶやけば1缶ずつシェアしてくれたことも。150人いるので、少しのシェアでも集約するとすごい規模になるんですよね。

-隣人との関わりがないこのご時世で、そのつながりってすごい。

キャンプ場の開拓も想定外だらけですが、このコミュニティの開拓も想定外ですね。困ったことがあっても「それできるよ!」が当たり前にある。それは驚きであって、ほんとにすごいなと感心させられますね!SNSでのコミュニティがオンラインの場ならば、キャンプ場はオフラインの場。常につながってうまく使い分けができているのがおもしろいなと。

だからCSDはどんな形であってもいいと考えています。どんな使い方でも、各々が好きな使い方をして関わってくれたらいいなと。すでにCSDはキャンプ場の域を超えています。いろいろな思惑や志向、スキルがクロスオーバーして、オンラインサロンのような、可能性が満ちたコミュニティに進化しつつあるなと感じています。

-すごく現代的!成り立ちから現在に至るまでまさに現代のキャンプ場運営ですね。

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そうでしょ(笑)!なので、キャンプをアップデートさせるの意味を込めて“CAMP SPACE DOSHI 2.0”としました。

CSDは僕の生活基盤(ベーシックインカム)の上限に合わせた受入枠を決めており、その算定基準を超えた利益はメンバーに再投資という形で還元したいと考えています。例えば、メンバーの一人が「カフェをやりたい!」と提案したら、メンバー内で協議し実施するかを決める。そういったことに投資する資金に充てていくつもりです。

「貯金をする」という概念があまりないんですよね。今まではもちろん貯金もしていました。なんのための貯金かと言うと、例えば野菜を買うためのもの。でも今は、村から新鮮な野菜をもらえるようになったので、貯金が必要なくなったんです。貯金するよりも、おいしい大根を作ってくれるお年寄りと仲良くしたほうが得だと気付いた。僕はこれを「貯信(ちょしん:信用を貯める)」と呼んでいます。

-移住には必須の概念ですね。若い人ほど体験したほうがいい。

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薪もほとんどが、村のおじいさんが間伐し運んできたものを割って使っています。でも若い僕たちがいるなら、僕たちがやればいい。だから最近は、メンバーにチェーンソー講習を受けようと誘っているところです。

今、村は人手問題もあって間伐が滞っているんです。そこを僕たちで担えたら、そのまま薪として使うことができる。僕たちもありがたいし、村の高齢者にとっても嬉しいはず。お互いにWinWinの関係を常に築いていけるようになればいいなと思っています。

-素晴らしい運営管理ですね!ところで、河西さんはCSDの管理人なんですか?

いえ、僕は「発起人」という立場です!あくまで発起人なので、僕もCSDを利用するときは、ちゃんと予約カレンダー入れて行くんですよ(笑)。

-おもしろい(笑)。発起人として大変なことはありますか?

大変なこと、何だろう?大変と思ってないので、思いつかないですね……。スコップ作業も大変だったけど楽しかったし。(しばらく考えてから)強いて言うなら、世田谷の自宅からの運転ですかね。何度も往復してるので、年間3万キロくらいになるんですよ(笑)。ハード面の辛さはあったけど、心から楽しんでいるのであんまり感じたことないですね。

-3万キロ、リアル(笑)。逆に楽しいことは何ですか?たくさんありそうですね。

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開拓が楽しい!これに尽きます。どのように開拓していくかはメンバーの意向が100%なので、僕は全て肯定してフォローアップに徹する役。以前実際にあったのが、まだ上水道もトイレも通ってないけど、バーを作りたいというメンバーがいました。みんなに聞いて「じゃあやってみよう」と。でも建築士さんはいなかったので、プロではないですがみんなで試行錯誤しながら作ったんです。建築基準法とかをチェックしながら、基礎から作りましたね。何が言いたいかと言うと、PDCAなんか考えずにおもしろそうだったらやってみる。勢いのまま形にするべくみんなで突っ走っているから楽しいんでしょうね!みんなの想いをデザインしていくこと、そこに僕はエフェクトをかけていく感じ。

-なんか、イケてるスタートアップみたい。

はは(笑)。何かをやる上では、利益は度外視しています。おもしろければやる、営利目的なことはしない。至ってシンプルなんです。

-これからキャンプを始めたい人には最適なコミュニティかもしれないですね!

キャンプをしたことがない人に、むしろ周知している部分もあります。CSDでは他者とコラボもよくするのですが、今後もこの動きは加速していきたいですね。例えば、

「キャンプ×英会話」
富士山が近いことをコンテンツに海外サイトにキャンプ泊を呼びかけて、メンバー同様に月額として滞在期間を入会してもらいベースとしてキャンプを楽しんでもらう。
「キャンプ×バイク」
バイクが盛んな道志みちでキャンプとツーリングなどを掛け合わせたりして、マーケットとして成長させる。

など、現在はそういったプロジェクトをメンバーと水面下で温めています。様々なジャンルとかけ合わせることで、分母が広がる。キャンプって基本的に概念がないから、楽しみ方は自由です。だから初心者も入りやすいのがキャンプの強みだと感じています。


今後のアウトドア業界とCSD


-コロナの影響等はありましたか?

緊急事態宣言後に新規受付を停止、CSD自体は他と同様に休業としました。そして、村に迷惑がかからないように配慮しながら、既存メンバーと作業に徹していました。

-なるほど。今のアウトドア業界に対して思うことはありますか?

アウトドア業界に限ったことではないですが、「楽しむ」ことを最優先にビジネスをするのもアリなのかなと思うようになりました。想いを優先して全力投球すれば、マネタイズは後からついてくる。それをCSDとして体現していると思っています。「遊び続ける」気持ちが大事。ルールも決めずそこに向かって進めば、自然といい流れが生まれるのではないでしょうか。

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アウトドアで言えば、今アウトドアはブーム。でもブームで終わらせるのではなく、カルチャーに変えていくことが大事かと。今楽しんでいる若い人たちをしっかり巻き込んでカルチャーにしていければ、業界はサスティナブルなものになっていくのではと考えます。

-そうですね。そこは我々も意識して変えていきたいことです。アウトドア業界の一員として、こうしていきたいという理想はありますか?

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地方創生には寄与していきたいですね。自然がある日本の地方には、森林間伐や過疎化の課題が山積している。そこにアウトドアが打ち手になる可能性が大いにあると感じています。僕は実際にCSDの開拓を通じて、そこに可能性を見出しました。
 
地方創生=移住と捉えがちですが、必ずしも移住の必要も今はないですからね。多拠点という発想でロジックを当て込んでいけば、ハードルは下がっていく。そういう姿が理想です。

-良くも悪くも、コロナによって働き方に多拠点という概念が生まことも大きいですね。

そうそう。CSDはWiFiも完備しているので、ワーケーションしているメンバーも実際にいますし。ここを拠点の1つにすることも可能です。

-その上でスペースキーに期待することはありますか?

前述と同じく、地方創生の課題ですね。地方との関係人口を、アウトドアをフックに解決していけるといいのではと思います。

※「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。(https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/より引用)

あとは、その課題の伝え方も大事で、CSDで好評なのはアクティビティにすること。間伐も「木を切るアクティビティ」にしてしまえば、都心ではできない体験ができるだけでなく、木を切るダイナミックさを間近で体感することができます。仕事にすると林業や農業は大変だけど、体験にしてまえば楽しみながら解決の手伝いになる。まさにこれがWinWinの関係ですね。

-体験にすれば、自分事で考えられますしね。

僕もCSDを始めて村と関わるようになってみて初めて、この問題に気付きました。見てやってみると、意外な楽しさを発見できたり。でもそれって、普段都心で生活していたら気付けないし、言われても刺さらない。現場に行ってみて初めて、心が動かされることなのかなと思います。

-さすが、最前線で取り組む人の言葉は重みが違います!ちなみに、河西さんご自身はどんな発起人でありたいですか?

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CSDは週2で来る人もいれば、半年に1回程のペースで来られる人もいます。利用頻度はみんな違うので、個人の状況に合わせて毎月の定期連絡はするようにしています。「今こういうことやってるよ!」というキャッチアップですね。なので、目指すところは銀座のママのような(笑)。CSDを通じてみんなを幸せにするような存在になりたいですね!

-銀座のママ(笑)。最後に、ユーザーさんに向けて、メッセージをお願いできればと!

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月に何度でも来て、自由に環境を楽しめること。サブスクリプションとメンバーシップ制がCSDのキラーコンテンツであり、最大の売りです。キャンプの域を超えた楽しみをしたいという人にはおすすめです!猫ちゃんもいますよ~。

-楽しいお話、ありがとうございました!!


■ キャンプ場情報 ■

CAMP SPACE DOSHI 2.0

・販売者
河西 誠

・販売価格
ソロ 月額 ¥3,000
ファミリー 月額 ¥4,000

※当キャンプ場は事前入会制となります。入会に関する諸条件はHPを確認ください。下記FAQも参考にしてください!

『友達の友達はともだち!』
このマインドを取り入れていまして、紹介を優先に会員登録しています。


■ 編集後記 ■

業界としても珍しいサブスク型キャンプ場を運営しているCSDさん。お話を聞いてみると、オンラインとオフラインのいいところを組み合わせたハイブリッド型運営で、まさに次世代のキャンプ場運営のカタチ。特にハイブリッドとすることで、コミュニティの距離感をグッと凝縮させているのが印象的で、つながりが希薄している現代にとっては必要なあり方なのではと考えさせられました。

場所の開拓と仲間とのつながり、そして村との共助の関係を心から楽しむ河西さん。個々人の「点」だけでなく、地域との「面」として、アウトドアが持つ可能性を体現しているその姿に、私たちもパワーをいただきました。ぜひ一緒に、日本を盛り上げていきたいですね!