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月に基地を作るならどこに作るべきか?

月面基地制作という構想は、アポロ計画以前からSFを中心に既にアイディアとしては存在したが、今やそれが現実になりつつある。
昨日は、月面基地を作る理由について以下の記事で説明した。

では、
月面基地はどこに作るのがいいのだろうか?

今回はこの疑問について考えてみよう。

月面

月面基地の名の通り、みなさんが想像する月の基地とは以下の画像のようなものだろう。実際には、今現在NASAが考えている基地もこれに似た月面に立てるタイプの基地である。

画像1

(credit: NASA)

このタイプの基地を立てるためにネックになるのは、「温度、宇宙放射線、資源調達」である。

月には大気が存在しないために、温度を保つ効果がほとんどない。そのため、太陽が照っている場所は100度を超え、火の当たらない場所は-150度を下回る。一般にこのような気温変化の激しい環境においては、人間は生きていけないのでそれに耐えうる基地にする必要がある。

また、大気がないため宇宙からの放射線が直接届く。地球では分厚い大気によってほとんど人間には届かないが、月面ではこの効果が無視できず致命的な問題になりうる。そのため、基地をレゴリス(月の砂)で覆うことによって放射線をカットする仕様が考えられている。

また、人間活動を行うためには水や燃料などの資源も必要である。ある程度は地球から輸送するとしても、長期的な滞在を考えるならば月面で自給自足することを考えなければならない。そのために月面で使える資源がありそうなところに基地を立てる必要がある。

極域

極域というのは、地球でいうところの北極、南極にあたる部分である。
なぜここが月面基地の候補地点になるかというと、極域には永久影と呼ばれる万年太陽の光が届かない場所があり、この場所にが集中しているのではないかという研究結果が出ているためである。
これが事実であれば、極域に基地を作ることによって人間生活に必要な水を確保できるためメリットは大きい。
ただし、現在の探査機によるデータでは予想したほどの水は存在しないのではないかという研究結果も出ており、慎重に検討する必要があるだろう。

地下(縦孔)

もう一つの候補地として、地下という考え方がある。
地下に基地を作ることのメリットしては、次のことが挙げられる。

・温度変化が少ない(約-20度で定常)
・宇宙放射線を完全に遮蔽できる

地下へは太陽の光がほとんど入らないため、温度が定常である。そのため、基地を熱変化に耐えうる特別仕様のものにする必要がない。
また、月面基地のようにレゴリスで基地を覆わなくとも、月面が"天然の防護壁"の役割をはたし、宇宙放射線を完全に遮蔽してくれる。そのため、基地建設の手間やコストを大幅に削減できる。

でも地下に基地を建設するスペースあるの?

その答えが縦孔である。
月の縦孔はJAXAによって世界で初めて発見され話題になった。
以下の画像のようなものです。(画像はNASAのLROのもの)

画像2

(credit: NASA/GSFC/ASU)

研究結果により、この縦孔の奥には広大な地下空間(横穴)が存在していることがわかり、基地建設への可能性が真剣に議論されている。

一方で以下のようなデメリットもある。

・地下へ入る手段の確保
・地上との交信手段の確保

画像で見るだけだとわかりづらいが、この穴の深さは約50〜100mくらいあると推定されている。よって、人がこの下に安全に、しかも遠隔で降りるためにはかなりの技術が求められる。
また、下に降りられたとしても、そこに基地用の機材を運び込み、作業するのは相当にチャレンジングである。というのも、地下では地球からの電波が届かないため、通信ができないからだ。中継機などで通信を中継するとか、地球方向に穴のあいた縦孔に基地を作るなどで交信が理論上できるという話だが、やはり高い技術力と安全面でのより詳細な検討が必要だと思う。


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