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【2021年版】台湾・香港向けWeb広告の国別の特徴と注意事項(広告文章編)

台湾・香港向けにWeb広告を実施する際、特にネット環境に関する理解が重要になります。また、特にこの二つの地域については言語として「中国語・繁体字」という点では共通しているものの、それぞれの地域には独自の言語背景があります。
今回は、上記にあげた「台湾・香港向けにWeb広告におけるネット環境や言語特性について」詳しくまとめました。

香港・台湾のインターネット広告市場

まずそれぞれの地域のインターネットにおける広告市場は以下の通りです。

台湾の広告市場規模:約1,800億円
台湾の広告市場については約1,769億円(※1,2)と発表されています。

台湾広告市場規模

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日本の2020年のインターネット広告費は2兆2,290億円のため、台湾は日本の市場規模の12分の1の市場です。人口が日本の約6分の1、GDPは日本の8分の1という背景から見ても、今後この広告市場規模は拡大していく環境であると言えます。 一方、台湾に関しては、台北など都市圏を中心に古くから既存4大メディア(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)に加えてCATVが大きな広告市場を持っています。これらの既存媒体が今後どういったペースでインターネット広告にシフトしていくのかを見極めていく必要があります。

※1 出典:DMA https://www.dma.org.tw
※2 金額:金額は2019年の実績458.41億NTDを2021年3月12日時点の為替レートで換算

香港の広告市場規模:約600億円
香港の広告市場については、約600億円市場(※3,4)と言われています。

香港インターネット広告市場規模

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台湾同様に日本の広告費と比較すると、香港は日本の39分の1程度です。また、2019年-2020年に大規模な民主化を求めるデモが発生。その前後複数回にわたる法改正等によって政治も経済も大きく混乱を受けている状況です。広告市場のみならず、香港の経済自体が今後どのように変化を遂げていくのかを見守る必要があります。

※3 出典:HKTDC https://research.hktdc.com/en/
※4 金額は2018年の実績5.31億ドルを2021年3月12日時点の為替レートで換算


台湾・香港の検索エンジンシェア

続いて、両地域における検索エンジンシェアについて説明します。

台湾はほぼGoogle時々Bing
台湾の検索エンジンはGoogleが圧倒的シェアを誇っています(※5)。

台湾検索エンジンシェア

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Googleのシェアは2019年以降90%を越え、引き続き増加傾向にあります。
シェア2位のBingは7%程度という所で低迷しています。過去1番利用されたYahoo奇摩に関しては、検索エンジンとして利用されるユーザーは1%未満という状況です。

※5 出展 https://gs.statcounter.com/

香港もGoogle
香港の検索エンジンもGoogleがシェア87%と圧倒的に高い状況です(※6)。

香港検索エンジンシェア

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シェア2位のBingは、台湾同様に10位以内を割り込むなど苦戦している状況にあります。

中国では利用が禁止されているGoogleが、今後香港内でどのような位置づけになるのか?
加えて、百度に代表される既存の中国エンジンが今後どのように香港或いは繁体字に対応していくのか、注意していく必要があります。

※6 出展 https://gs.statcounter.com/


その他の主要な媒体

この様に香港、台湾共にGoogleを中心としたインターネットメディアに加え、FacebookやInstagramといったSNSも利用率が高く広告媒体として意識する必要があります。
また、それぞれの地域における独自の傾向もあるので、その点もおさえておきましょう。

台湾では専門的なECサイトに注意
台湾では中国と比較してもECサイトの利用率が高くネット利用者の多くが日常的にECサイトを利用しています。他のアジア諸国と比較してもかなり早い時期からECサービスに対する信用度が高く、独自のECサイトが成長してきた背景があります。

EC関連のサービス
PChome 24h(https://24h.pchome.com.tw/

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Yahoo!奇摩購物中心(https://tw.buy.yahoo.com/

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momo 購物網(https://www.momoshop.com.tw/

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博客來(https://www.books.com.tw/

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台湾では上記のような専門ECサイトの存在があります。リテール系(一般消費者向けの「小売」ビジネス)で進出を検討している場合はこれらの媒体に対する方向性は明確にしておく必要があります。

香港では中国大陸系の媒体に注意
香港については検索エンジンもそうですが、今後香港政府の方針によっては中国大陸で使用されている媒体の普及に加速がかかる可能性があります。

中国主要メディア
・検索エンジン
 百度(https://www.baidu.com/

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360捜索(https://www.so.com/

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搜狗搜索(https://www.sogou.com/

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・SNS
 微信(https://www.wechat.com/

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微博(https://www.weibo.com/

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・EC
 天猫~TMALL(https://www.tmall.com/

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既に香港でも利用されているサービスもありますが、同エリアでGoogleやFacebook等、中国本土が利用を制限しているサービスがどのような影響を受けていくかによって、香港での位置づけも大きく変わる可能性がある為、今後の動向に注意が必要です。


広告文章の攻略にはまず「言語による特性」をよく理解すること

この様に香港・台湾向けのWEB広告を攻略するためには、市場規模や地域毎、媒体毎の特性をよく理解した上で取り組む必要があります。
それに加えて特に広告文を攻略する際に最も重要な要素が「言語の攻略」です。

公用語の背景
台湾・香港の「言語」。といえば広い意味で「中国語」ということになりますが、それぞれ中国とは異なる独自の背景を持っています。
日本では、中国は簡体字、香港・台湾は繁体字、と大別され、それが「中国語との違い」とされていますが、実際に広告を実施していく場合には更に深堀りする必要があります。

台湾:「中国語>台湾語>客家語の存在」
まず台湾に関しては地域や年齢層によって、普段使う言語事態が異なるという得意な背景があります。そのため、広告を実施する際はそれぞれのターゲットにフィットした言語と広告文章が必要です。

言語の種類としては一般的に「中国語」の他に「台湾語」と「客家語」の話者が多いという背景があります。実際に台湾の交通機関では、「中国語」、「台湾語」、「客家語」、「英語」の順でアナウンス、文字表記されるのが一般的です。

また、台湾で最も使われている「中国語」に関しては、いわゆる一般的な中国語(北京語)という表現をされるのが普通ではあるものの、厳密には発音、語気、単語、話し方等が中国語とは違う点も少なくはありません。厳密に分類するために「台湾華語」という表現もよく使われます。

加えて台湾では「中国語が一般的」で台北を中心とした台湾北部、東部エリアではよく使われる言語ではあるものの、それ以外のエリアでは台湾語が多く使われているのが現状です。台湾の中でも主要な都市である、高雄や台中等では台湾語が使われています。

また、桃園県、新竹県、苗栗県など特定のエリアでは「客家語」がメインの言語として使われています。

この様な背景から、地域や年齢層に合わせて必要な言語を選択したり、あえて特定の言語を利用したりと言語の選択と広告文章の工夫が必要となります。

香港:「広東語>中国語、そして英語」
香港で中心となる言語は中国語の方言のひとつである「広東語」です。
しかし、香港で使われる広東語は厳密には「香港人が使う広東語」であって、広東語話者の最も多い都市である広州の広東語とは若干の違いがあります。

それに加え、国際都市としての顔も持つ香港は、1997年の中国への返還前までは特に第二言語として英語が普及しています。特にビジネスシーンや観光業界を中心に英語圏、或いは中国語圏以外の国との言語ツールとして英語が使われています。

一方で、返還後の20数年は中国の経済成長に後押しされるように若者たちの英語離れが続いているとも言われています。

この様に香港では主要言語である広東語をベースに英語、中国語が年代や業界毎に複雑に混ざりあっていて、その変化も激しい状況にあります。

これに急激な政治の変化が懸念される香港では、言語の選択や使い分けによってネットユーザーに与える影響が大きく変わってきます。

同じ中国語・繁体字を使う二つの地域でも広告出稿において「相応しい言葉の使い方」は大きく違います。

また、そもそも中国語は他の言語と比較して単語が極端に少ない為、地域や特定の集団における方言や俗語(スラング)が生まれやすいというそもそもの特性も相まって、これらの地域に対する広告の出稿は難しいのが現実です。

「台湾・香港は同じ繁体字」でも異なる言語
上記の通り台湾、香港共に言語環境は厳密には非常に複雑になっています。

加えて、日本から見ると「中国語は簡体字と繁体字」に分別されている。というのが一般的な考え方で、台湾の繁体字と香港の繁体字は全く同じ言語として認識されがちですが、実際には違いもあります。台湾で使われている繁体字はベースが中国の普通語に近いのに対して、香港で使われている繁体字は広東語を元にした繁体字となります。ここではその辺の違いについても触れておきたいと思います。

例えば、以下のように同じ意味を表す言語でも、単語が異なる場合があります。
この様に、漢字そのものが違う単語は少なくはありません。

・台湾:吃→香港:食(訳:食べる)
・台湾:喝→香港:飲(訳:飲む)
・台湾:走→香港:行 (訳:歩く)

また、接頭語、接尾語の使い方についても違いがあります。
例えば台湾では「〇〇子」等といった接尾語は多用されますが、香港では接尾語を使わない単語も多くあります。

・台湾:桌子→香港:檯 (訳:テーブル)
・台湾:知道→香港:知 (訳:分かる)

他にも文法構造が異なる場合もあります。例えば、

・台湾:我(私は)給(あげる)你(あなたに)錢(お金を)
・香港:我(私は)畀(あげる)錢(お金を)你(あなたに) (訳:私はあなたにお金をあげる)

上記の通り、同じ意味の文章でも間接目的語(例文では「あなたに」の部分)の並びに違いが出ることもあります。

また台湾や中国大陸では「○○の△△」という表現には「〇〇的△△」という表現をよく使いますが、香港では「的」以外の表現をする場合もあります。

・台湾:我的車→香港:我部車(訳:私の車)
・台湾:我的筆→香港:我枝筆(訳:私のペン)

香港では歴史的な背景やから他言語からの「借用語」が非常に多いという特徴を持っていて、その点も台湾の中国語とは異なる特徴といえます。例えば、「的士(タクシー)」。台湾では「計程車」と表現されます。他にも巴士(バス(台湾では「公車」))、貼士(チップ(台湾では「小費」))、米(メートル(台湾では「公里」)、奄列(オムレツ(台湾では「蛋卷」))というように読み方だけではなく、漢字も発音も異なる単語があることもあります。

この様に、同じ繁体字でも発音だけではなく、文字の使い方や文法の使い方そのものにも明らかに違いがあります。

ただし、現実的には台湾で使われている中国語は語の使い方も文法上の特性も中国語の「普通語」に非常に似通っているため、普通中国語話者の多い香港でも大体は理解されるともいわれています。

台湾・香港の両地域に出稿する場合は、厳密にはそれぞれの地域に最適な文章を用意する必要はあるものの、一旦台湾向けに文章を作成したうえで必要な部分、重要な部分だけを香港向けに修正していくという方法もありますもいえます。(※出稿する業種や訴求内容にもよります。)


まとめ

以上、台湾・香港にけるWEB広告の特徴と課題についての解説でした。

この様に、まず環境を知る事で、それぞれの地域に対する広告手法の選定を慎重に実施する必要があることがよくわかると思います。加えて、それ以上に言語そのものをどう攻略するか?というところが同地域においては重要な要素になって来ることでしょう。

台湾と香港の広告攻略においては「同じ繁体字中国語」というひとくくりでは語り尽くせず、そもそもの言語の違いをよく理解したうえで、目的やターゲットに合わせて広告文章を攻略していく必要があります。一方で日本でも方言話者が共通語の広告を目にしてそれに対応できるように、広東語を使う香港でも普通中国語に近い台湾繁体字はある程度は理解できるという背景はあります。ただし、台湾の中国語も中国大陸で使われている完全な普通語とは異なる部分があるため、必ずしも普通語として活用しきれない側面もあります。

言語特性もさることながら、日本より市場環境もユーザー数も少ない台湾・香港だけに、言語バリエーションや政治情勢が複雑に関連している同エリアの特性をよく理解して取り組む必要があるといえます。

※文章内の主要メディアの挿絵サンプルは2021年6月1日現在のものとなります。


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