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カニの身でつくるキラーメニュー

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

キラーメニューとは、そのメニュー目当てにお客様が来てくれるような〝お店一押しメニュー〟のことだ。ならばカニを使ってはいかがだろうか。カニは誰もが大好きなキラー食材にもかかわらず、提供されているメニューは限られる。商売は先手必勝、〝渡り蟹の身〟を使ったキラーメニューで他店に先駆けたい。

冷凍パスチャライズクラブミート
ジャンボランプ/スペシャル/クローミート
(素材のちから第37号より)

もっと〝渡り蟹〟のメニューがあってもいいと思う。なぜ広がらないのか? やはり手間とコストがポイントなのだろう。ご紹介する「冷凍パスチャライズクラブミート」は、身が殻から外されて使いやすいフレーク状になっている。さらに部位ごとに分けられ価格にも違いがある。これならきっとキラーメニューができるはずだ。

ジューシーな渡り蟹のミートが、使いたい時に使いたい量だけ使える。

〝スチームボイル〟と〝低温殺菌〟が実現するカニの香りと味の濃さ

「冷凍パスチャライズクラブミート」はスチームボイルされた渡り蟹から肉を取り、真空のアルミパックでパッキング後、低温殺菌したものだ。甘くてジューシーな渡り蟹のおいしさがそのまま封じ込められている。原料の渡り蟹は水揚げ2〜4時間以内に30分ほどスチームボイルされ、殻から外された肉は部位ごとに「ジャンボランプ」(脚の付け根の肉)、「スペシャル」(正肉)、「クローミート」(脚と爪の肉)と3つの種類に分けられる。

ジャンボランプ
スペシャル
クローミート

「ジャンボランプ」は脚の付け根の肉らしく、筋肉質で歯ごたえがいい。「スペシャル」はしっとりとした身質に渡り蟹ならではの甘いジュースがたっぷりと含まれている。「クローミート」は赤く繊維質な身質が特徴だ。

3つに分けられた渡り蟹のミートは、ブラックライトを装備した特別な部屋で繰り返し念入りな異物混入のチェックを受ける。渡り蟹の殻をむく時に割れた殻や軟骨が混入することがあるからだ。

チェックされた渡り蟹のミートは保存性の高いアルミパックに詰められしっかりと真空パックされ、85℃の低温で殺菌される。通常の殺菌は120~150℃で行われるため身質に熱の影響が出るが、低温殺菌ならばその心配はない。スチームボイル仕立てのジューシーな風味を保っているのだ。こうして「冷凍パスチャライズクラブミート」はインドネシアにあるHACCP認証の最新工場で製造されている。

輸入販売元のラス・スーパーフライ(株)の長年に渡る「ソフトシェルクラブ」の商品開発と輸入実績はインドネシアとの深い関係を積み上げてきた。だからこそ日本向け商品ならではの細かな注文も快く丁寧に実行してくれる。

下のメニューはアメリカのシーフードレストランで定番の〝クラブケーキ〟である。カニ漁が盛んな東海岸にあるチェサピーク湾近郊ではじまった料理だと聞く。

クラブケーキ

カニのほぐし身をたっぷりと使ったハンバーグのようなものだ。つなぎは少なくほろほろと崩れるカニの身をたっぷりと楽しめる。カニが高価なためなのか、扱いが面倒なためなのか、日本では〝クラブケーキ〟をあまり見ない。

それならば「冷凍パスチャライズクラブミート」を使ってみてはいかがだろうか。ジューシーな渡り蟹のミートが少量からすぐに使える。「冷凍パスチャライズクラブミート」なら、カニ好きの日本人が喜ぶキラーメニューがつくれそうな気がしてくる。

「冷凍パスチャライズクラブミート」でカニのキラーメニューをつくるべく、4つのメニューを試作した。

渡り蟹のスライダー
〝スライダー〟は、見た目もかわいいミニサイズのハンバーガー。「クローミート」でつくった小ぶりのクラブケーキをミニバンズに挟む。カニのコストを意識するなら、こうしたプチメニューを考えたい。小さくてもカニのパワーはたっぷり持っている。

渡り蟹のリゾット
白ワイン、鶏のコンソメ、「クローミート」、バター、パルミジャーノで仕上げたリゾットだ。おいしさの説明は必要ないだろう、文句なくおいしい。〝渡り蟹のリゾット トマト風味〟や〝渡り蟹のリゾット 濃厚な生クリーム仕立て〟などはいかがだろうか。

渡り蟹のチャングロ
〝チャングロ〟は、カニの身を玉ねぎなどと煮込んだスペイン北部バスクのサン・セバスティアンの郷土料理。よく炒めたニンニクと玉ねぎを「クローミート」と合わせ、トマトソースを加えて弱火で煮込み、ココットに入れパン粉をふって焼いた。カニのトマト風味グラタンだ。

渡り蟹丼
「クローミート」の赤色と「スペシャル」の白色を合わせて使うと、スライスしたみょうがや刻んだしその葉とともに、丼の表面に美しい立体感が生まれる。海鮮丼、マグロ丼、イクラ丼、ウニ丼はよく聞くメニューだが、〝渡り蟹丼〟はあっただろうか。本来ならこれだけの身を殻から外すだけでも大変だ。

〝カニ〟をメニューに取り込めば、向かうところ敵なし。

「冷凍パスチャライズクラブミート」は、かなりリーズナブルだと言える

どのメニューもおいしいが、使う食材がカニとなればそのイメージから気になるのはコストだろう。

渡り蟹はタラバガニやズワイガニのような驚くほど値の張る食材ではない。松葉ガニに比べても渡り蟹の価格は安く、下処理してむき身にする手間も考えるならば、さらにコストは下がるだろう。使いたい量を、使いたい時に、使いたいだけ使えることも考えると「冷凍パスチャライズクラブミート」はかなりリーズナブルだと言える。

一般的にカニを使ったメニューは高級食材としての付加価値があるため、お客様からお金を頂戴しやすい。このイメージをどうキラーメニューに落とし込めるかがポイントだ。

贅沢にカニたっぷりというコンセプトもいいだろうし、いつものメニューをグレードアップすることも考えられるだろう。提供するボリュームや盛り付け、メニューオペレーションや提供のスピードなど、さまざまな要素によってメニューは変わる。店ごとの組み立てが必要だ。

「冷凍パスチャライズクラブミート」で、メニューのグレードが簡単に上がる

ここからは思いつくままに、メニューをつくってみることにする。

まずは〝渡り蟹の押し寿司〟である。茹でた菜の花の上に「クローミート」をたっぷりとのせた。まるでカニの身を食べるようだ。

渡り蟹の押し寿司

次は天ぷら。「ジャンボランプ」をかき揚げにしてみると、甘みが出て歯ごたえがよく食べごたえがある。

渡り蟹のかき揚げ

次は洋のメニューだ。「クローミート」と炒めた玉ねぎ、カッテージチーズ、イタリアンパセリを合わせてフィリングをつくり、パイ生地で包んで〝渡り蟹のパイ〟を焼いた。サクッと焼けたパイ生地は包み込んだカニに価値を加える。

渡り蟹のパイ

さらに同じフィリングをパートブリックで細めのスティック状に巻いて焼いてみた。手でつまんでスナック感覚で食べられる。春巻きの皮で包めばカニ春巻きにもなる。

渡り蟹のパートブリック巻き

〝渡り蟹のラザニア〟はベシャメルソースと「クローミート」を合わせ、ゴーダチーズをのせて焼いた。カニのラザニアメニューはあまり見ない。メニューにあれば思わずオーダーしそうだ。

渡り蟹のラザニア

さらにパスタだ。トマトとバジルの風味はカニとよく合う。「スペシャル」を加えたトマトソースで少量のペンネを和える。カニをたっぷりと食べるショートパスタのメニューだ。

渡り蟹のペンネ トマトとバジル風味

また、「スペシャル」を口溶けのいいジュレにした。春野菜と鮮やかなトマトソースが「スペシャル」の身の白を引き立てる。

渡り蟹のジュレ 春野菜とトマトのクーリーソース

最後のメニューは、揚げ出し豆腐に「クローミート」でつくったあんをかけた。揚げ出し豆腐が簡単にグレードを上げる。カニのあんはカニチャーハンやカニそばに使ってもおもしろい。

揚げ出し豆腐渡り蟹のあんかけ

「冷凍パスチャライズクラブミート」をティースプーンに盛って計ってみると10gあった。前菜のトッピングなどに使う時には、少なくとも10gあればカニの価値をメニューに加えることができるだろう。

メニューのグレードアップに手間なく使える「冷凍パスチャライズクラブミート」を上手に使って、貴店ならではのキラーメニューを考えてはいかがだろうか。


協力/お問い合わせ:ラス・スーパーフライ株式会社

(2020年3月31日発行「素材のちから」第37号掲載記事)

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