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荀子 巻第十議兵篇第十五 4 その1

趙国・孝成王の問いが続きます。

[然らばまた]王者の軍制を請い問わんと。孫卿子曰わく、将はに死し御[者]はくつわに死し百吏は職に死し士大夫は行列に死す。鼓声を聞きて進み金声を聞きて退き、命に順がうを上とし有功はこれに次ぐ。令の進めざるに而も進むは猶お令の退けざるに而も退くがごとく、其の罪はひとしきなり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

行列→立ち並ぶ。順々に並ぶ。また、行陣をいう。行陣→軍列。
拙訳です。
『「それでは、王者の軍制について教えてもらいたい。」との孝成王の依頼に、荀子は答える。「将軍は指揮する太鼓と共に死に、御者は轡と共に死に、百官は職と共に死に、士大夫は軍列と共に死にます。太鼓の音を聞いて軍は進み鐘の音で後退しますが、命令に従うことを最上として功績をあげることはその次とします。進むなという命令なのに進撃することは退却するなというのに退却するようなものですから、命令違反の罪は同じです。」』

老弱を殺さず、禾稼かか(躐)まず服する者はとりこ(擒)にせず[扞]格てむかう者はゆるさずほん(奔)命する者はとらえず。凡そ誅は其の百姓を誅するに非ず、其の
百姓を乱る者を誅するなり。[然れども]百姓に其の賊[の為め]にたたかうもの有らば則ち是れ亦た賊なり。故を以て刃に順がう者は生かし刃に(向)かう者はころほん命する者[上将に]貢す。

(同)

禾稼→穀物。穀類。
犇→②はしる。ウシが驚いて走る。
奔命→主君の命を受けて奔走すること。転じて、忙しく活動すること。
獲→③えもの。(イ)とりこ。戦って得た捕虜。また、戦って得た物。
誅→せ(責)める。とがめる。罰する。
貢→みつぐ。朝廷に地方の産物を献上する。また、みつぎもの。
拙訳です。
『「老人弱者を殺さず、穀物を踏み荒らさず、従う者は捕らえず、手向かう者は許さず、走り来て命令に従う者は捕虜とはしません。だいたい罰するというのは民衆を罰するのではなく、民衆を惑乱させる賊を罰するのです。しかし民衆の中にその賊と共に戦う者があればその民衆は賊となります。わが軍に従う者は生かし、刃向かうものは殺し、走り来て命令に従う者は(兵士として)上将軍に献上します。」』

最後の「ほん命する者[上将に]貢す。」に注があります。

(前略)訳したが、やや疑問である。劉師培は「貢」の字は「置」の誤りか(かまわず棄ておくの意味)、あるいは「貰」の誤りか(赦すの意味)と疑っている。

(同)

今回の僕のポイントは、「命に順がうを上とし有功はこれに次ぐ。」です。命令遵守が一番で、命令違反で功績をあげてもその評価は二番目であるとしています。
王者の軍制、王者の組織においては、『良い結果が出たからそれでいいじゃないか。』ではなく、命令の遵守が基本という事です。
続きは次回とします。

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