砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(下) 桜庭一樹

あんたがどんなに汚くなっても、頭がおかしくても、砂糖菓子のテロリストであっても、あたしは海野藻屑を嫌いになれない


汚くなっても痛々しくても
藻屑はやっぱりきれいだと思う


いつも必ず足を引きずりながら一生懸命あたしを追いかけてきた
だけど追いつかないからペットボトルを投げつけて立ち止まらせて
ようやく追いついてあたしの左側を確保する
体を揺らしてあたしにくっついて.......
聞こえるほうの耳を
いつもあたしに向けていたんだ


藻屑は憎しみと愛情表現の区別がつかない子だ
いつもどこか間違っていて本人もそれに気付けないでいる


藻屑は大事な人にもあんな実弾を撃つのだろうか


逃げようか


あの時すれ違ったピンクの霧は、もしかしたら兄が生活や未来や友達や恋とかと引き換えに手に入れた
神だったのかもしれない......


鉱物っぽいへんな味が渇いた体に落ちていくのを感じる
だけどいつまで飲んでも渇きは止まらないように思えて......
ーーーーーああ
これがーーー海野藻屑の正体だったんだーーー・・


もう誰も砂糖菓子の弾丸を撃たない
背後からミネラルウォーターを投げつけてきたり痣を汚染だと言い張ったりしない
どこまでも一緒に逃げようなんて言ってくれない