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スケイルズ・レポート ‐可能性の波濤‐(Reports of "SCALES")

「ンボォォォッッッ!!!……ォオッ!!……オッ……ォホッ」

「あららどうしました?まだあなたの分は小手調べ、本番も始まってませんよ?」

「ンッファ……ハァ……やめて、嫌だァ……」

「随分と可愛らしい娘さんでしたね。あの校舎は国立中央カレッジですか?大層可愛がられて……現役時代から冷徹で通ったゾン大佐にもあんなに家庭的なところがあったなんて」

「やめ……娘は……娘だけはァ」

「娘さんには何もしませんよ。用があるのは大佐、貴方だけです。正確には貴方の記憶ですが。では本番に行きますよ。リラックスしてくださいね。」

「やめ……やめろぉッ、や、アオ、アゴゴ」

改めて猿轡を噛ませた。
装置の運用都合上、薬を使えないのが大変もどかしい。記憶を少し探っただけでも受ける方は余程の苦痛なのか、最初の走査チェックの時点で今までの誰もが大声で泣き喚きだした。私はあくまで記憶を覗く方なので関係ないが。

この双方向記憶走査投影機も、あの万能天才狂科学者ウォルター・エドックスの置き土産だ。今までの調査結果から、これは本来成長過程の『スケイルズ』に論理知性プログラムを焼き付けるために用意したものだったらしい。
エドックスは島の研究のあらゆる部分で多大な貢献を果たした様だ。当人は軍の制圧部隊が島に上陸した時点でとっくの昔に行方知れずだったが。

私の任務も、中核メンバーの記憶調査に移る。
今までの分でも十年余りにおよぶ島の生活や研究、生体兵器『スケイルズ』が蜂起した際の状況などの多くを知ることができたが、まだ彼らしか知らない重要な部分が多く残っている。

研究開始当初の状況。

最初に生体改造の被験者となった者達。

繁殖し数を増やしていった『スケイルズ』達と、管理しようとした主要研究員達の関係性の変化。

外部から研究計画に加担したエドックスの真の目的。

そして、あの人間モドキの魚のバケモノ達が主人に逆らい叛乱に到った、本当の理由。


【続く】