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Carpe Diem ”Monologue”

2015年、その年は俺にとって忘れられない年になったのを未だに覚えている。
昨年、地元の先輩から5000円でお古になったマイクを買い、そして使えないインターフェースを買わされて苦い思い出を経験して、後にきちんと新しくインターフェースを買い、2020年6月に公開したアルバム「Raison D'etre」の仮組みとなる基礎を組み上げ、様々なラッパーとの交流があり初めて多人数のCrewに所属し、生まれて初めてライブを経験をした年だ。
『「鵺」というラッパーにとって、2015年とは激動の一年だった。』と言っても差し支えないだろう。
5年前 当時は21歳、漸く俺もラッパーと名乗れちゃうのかと、若干イキってたような気がしないでもない。
(ってか寧ろイキるにイキっていて、当時の先輩方に凄いお叱りの言葉や、巫山戯た態度で不快な思いをさせていたと思うので、これに対しては反省の意しかない)
そんな中で、2015年に出会い、とあるCrewに誘ってくれた人と作った曲があった。

それが「Carpe Diem」 今回話す内容の本題だ。

Carpe Diem/ALTERNATIVE THEO

 俺の記憶が確かならば、その日にその人と即席で曲を作ろうとなった時に、昔からトラックメイカーやラッパーとして活動されていたNOTサワー氏の音源「【ニコラップ】トラック提供-針夜の番人」を使った楽曲を作りたく、その人にお願いしてその人の家に当日に集まり、即席で曲を作るという企画をして出来上がったのがこの曲の経緯である。
まぁ活動を現在まで続けてきた中で、こんな「数時間内で歌詞を完成させ、尚その日に録音して完成させる」なんて企画なぞ、この日っきり以降ない訳なのだが。
その時に出したテーマがネットで何気なくふと調べた「Carpe Diem」と言う単語だった。


 「Carpe Diem」とはラテン語にて「その日を摘め」と言う意味であり、説明その日を摘めは、紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスの詩に登場する語句。「一日の花を摘め」、「一日を摘め」などとも訳される。
また英語では「seize the day」とも訳される。ホラティウスは「今日という日の花を摘め」というこの部分で、「今この瞬間を楽しめ」「今という時を大切に使え」と言おうとしている。
(Wikipediaより一部抜粋)

 何より当時の俺は、昔より「刹那的なテーマ」や「人生」等といった内容を題材にした作品を作詩してきたのもあり、そのテーマで作詞することが得意だったのでお願いをした。そこで作詞したものが先程上げた「Carpe Diem」となる。
今思えば凄く拙い内容で衝動に駆られた歌唱をしているのもあってか、自分で久しぶりに聴くと凄く羞恥を感じる様な印象を受ける。
元より自分の作詞をするスタンスというものは、人とは趣旨の違った作詞方法を取っているという事もあり、自分が異端であるという認識を持ったので、興味のある方は一緒に楽曲を歌われた方との違いを是非、感じて聴いて頂きたい。

 そしてこの曲のテーマにある「その日を摘め」という内容は前提にあるが、それとは別に「鵺」としてどうしても伝えたいテーマ性はもう一つあるのだ。
それは「二律背反した自ら達が望んだ結末の果て」という事だ。



・・・まぁ。取り敢えず何を言ってるのか分からないと言った顔をして、訝しげに「コイツ、ヤバいんじゃないか?」みたいな顔で、この記事とにらめっこするのは辞めてくれ。ほら、一からちゃんと説明するから。
後、俺は「自分で、自分をヤバい奴だ」と自分で認知しているので、そこに関しても特に問題視しなくていい。
 今の発言で大体言いたいことが伝わったという諸兄には、最大級の感謝を贈りたい。

 敢えて予め一言添えておくが、ここから綴る話は若干の蛇足と脱線を重ねるので、すっ飛ばして流し読みしてくれて構わない。

 一から順を追って説明すると、俺という存在は「蝙蝠」なんだとラップを始めた当初からずっと感じていた。それは自分の音楽性が「HIP HOP」なのか「Subculture」であることなのかであったり、自分の存在が所謂「ラッパー」なのか「オタクの真似事に過ぎないラップ被れ」なのかであったりと感じている部分であったことだ。
昨今、大阪では「日本橋ウォーズ」というオタクなラッパーが作品の愛を語り合うMCバトルイベントがあったり、アニソンDJやVJといった存在が増えてきてアニソンのクラブイベントが多くなったりしていたが、そもそも俺がラップ始めた時の古巣「京都駅サイファー」では、鳥取の凄腕MC「JAKE」やUMB2014滋賀予選王者、花魁音盤代表「蛇」、そして自分がラップを始めてから一番お世話になっているマイメン「山本びんた」を筆頭とした京都のクラブシーンでHIPHOPに黒く染まってきた方々と一緒にいた事もあってか、自分が駆け抜けてきた「京都駅サイファー」では当初そんな自分が居ることが場違いなのではないかと思う日があった。
ただそんな中でも色んな方から言われてきた言葉を重ねて、俺というラッパーは別にHIPHOPじゃなくても、周りが鎬を削りあって目指す「Real」というものを自分が「態々」目指す必要は無いんだ。と気付かされるきっかけとなった。
 どっちにせよ「ラッパー」から見れば俺は所詮「オタク」ラッパーなんだし、「オタク」から見れば『「ラッパー」なんですね!』って言われることもあるし、何より自分の作りたい音楽がラップをしている事を理由に「HIPHOP」に染まる必要もないし、何より切磋琢磨はしあえど、スキルとスキルをぶつけ合う様なサイファーだけを求める必要もないし、自分の求めたいものを正直に求めてもいいんかなとは徐々に思う様になりました。
その考えに辿り着くまでに、こうしなきゃいけない。ああしなきゃいけない。って概念に自分が無自覚に囚われ続けていたというのも変な話、自分がずっと感じてきた矛盾点でもあったので、最近はそういった心持ちでラップをする様になれたのかなと。
(一例に上げただけで批判する気は全く無い点には、配慮して頂きたい。)
そういった経歴を重ねてきたから故に、俺の存在は「蝙蝠」なのだと内々に繰り返し感じる様になったのだ。
こうして「二律背反した自ら達が望んだ結末の果て」はそのどちらでもない自分達が、その現実に問いかけ続ける。

 そんな感情を次につなげて歌ったのが、
この曲のトラックを作った当人を呼んでアルバムにも収録させて頂いた
Carpe Diem,Epilogus feat.NOTサワーである。

 あれは確か「Carpe Diem」を制作してから数年後の話、「long a long」のクラブイベントにて来訪されていたNOTサワー氏とお話する機会があり、その時に「Carpe Diemをリメイクしたいんですよね、良かったら一緒に乗って頂けませんか?」と、そう俺が彼に話しかけたのがきっかけだった。その時に彼の厚意によりトラックを手直しして頂き、尚一緒にラップして下さる運びとなった。本当にその件については感謝の意しかなく、本当に嬉しかったし払拭したかった思い出もそこに詰まっていた。
ただそこには一緒に最初に乗ってくれた当人の思いを踏み躙るだと言った意図は其処にはなく、ただただ単純に「Carpe Diem」という楽曲を、その自らの感情から産み落とした子供を、あの日剥き出しの表情のままに描いたその顔をもう一度綺麗に誰かの耳元へ、そして何よりもいずれ離れてしまう自分の袂へ贈り届かたかった。
その一心で完成したのが「Carpe Diem,Epilogus」に当たるのだ。
 だがそこには嘗て切り捨てた可能性の自分が、その曲を通して「自分の生き方の方が正しかったんだ」とずっと訴えかける姿が其処にいた。

Q,
「もういいかい」「まだだよ」で繰り返す贖罪の数に、
満たされる幸福論で俺は幸せになれましたか?
A,
「なれてませんよね?」
(Carpe Diem,Epilogus feat.NOTサワーより鵺 Verse 抜粋)

 その言葉は自分がこの曲を完成させる前からも、完成させた後にもずっと頭の中で片時も離れたことのない自らを縛り続ける言葉だった。
寝る時にも起きる時にもずっと、ずっとずっと頭の中で反芻しては、その言葉と共に自分が起こしてきたきっかけが引き金になって起きた思い出したくない過去であったり、どっちに転ぶかも分からなかった選択が「正解だ」、「間違いだ」と言い、詰り寄って来る光景は迷惑そのものでしか無い。
悩み続けたその顛末を自分なりに落とし込んだ作品が、ソロ曲の方にて完結させているのでそちらを聴いて頂きたい。
 こちらは一作目と二作目の自分のVerseを合わせた作品となっているので、鵺の世界観を存分に味わって頂ける一作となっている。
また客演として参加してくれたNOTサワー氏も素晴らしいバースを書き下ろされているので、そちらの方も是非拝聴して頂きたい。
本当にいつもNOTサワー氏には頭が上がらない・・・
ありがとうございます。

 そして先日新しい「Carpe Diem」の音源が上がった。と言ってもこの音源を上げたのは「鵺」ではない。俺が一緒に組んでいるCrew「魍魎ノ井戸」から相方の水魑が「Carpe Diem ver.Lycoris Radiata」を投稿した。
この曲は自分が最後の纏めとして、本作の集大成として自分がこのCrewを組むまでに至って歩んできた系譜の決着をつけようと誘って居たのだが、彼本人のみのRemixとして投稿されたものとなる。
 なので初めて第三者の介入があって、生まれ変わった作品となっている。
この作品では自分が聴いた感想だと凄く情景描写に重きを置かれているものになっている所と、自分では表現できない部分が分かりやすく表現されている部分に注目した。
今までこの曲を彩る世界観の背景描写については余り書き記してこなかった分、そういった面が現れて凄く素敵な作品だと感じました。
また相方の水魑とは「魍魎ノ井戸」としても様々な作品を制作したり、二人が所属しているレーベル「あひるれこうず」にて様々な企画、運営で活躍していくのでそちらの方も良ければチェックをお願いしたい。

 そして語る内容も終わりに近づいて来た所で、最後にHookの内容について話し完結させたいと思う。実際「Carpe Diem」のHook部分に関しては、当時自分が好きだった曲ONE OK ROCKの「光芒」からインスピレーションに想像を膨らませて、制作した経緯がある。

燻ぶる煙を吐く徒労
一途と知って、意味を知って育む航路
朝焼けに伸びる光に浮かぶ
光芒の先へ
実りを連ね……

 (Carpe Diem Hook Lyricより引用)

 当初書いていたVerseが少し内容が暗かったのもあり、Hookの内容が切なくても視線はずっと先に前に向く様な内容と歌唱で締めるイメージを持って作成したのを記憶しています。一作目に歌ったHookと二作目のHookの歌い方が違うのは、オートチューンをかけて歌ったか、全て地声で整えた違いもあるのでそういう点も違いが見れて面白い所だと個人的には感じている。
二作目を制作する過程で追加分のHookも作成したが、元のメロディーに乗せる形で新規に歌詞を書き下ろしたのが凄く纏まりの良い着地が出来た。
 また今後、最後の「Carpe Diem」を落とし込む所に至っては自分のVerseに満足のいく結果を出せた時に結果を出したいので、今は今まで上げてきた「Carpe Diem」そして水魑の上げた「Carpe Diem」を聴いて、「鵺」というラッパーが築き上げてきた「Carpe Diem」の世界観に是非酔いしれてほしい。
 これが最初で最後となる「Carpe Diem」についてのセルフライナーノーツとなる。ここまで呼んで下さった皆様に最大級の感謝と敬意を。
これが自らの感情の吐露だけとならず、呼んで下さった皆様の胸にこの曲が「本当に伝えたかったこと」が響いて頂けていればと思う。
繰り返しになるが、ここまで読了頂き本当に有難う御座いました。

魍魎ノ井戸やメンバーの活動も是非よろしくね!

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