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FM/PDシンセシスの仕組み

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YAMAHA DX7で採用された「FM合成」と、CASIO CZシリーズで採用された「PD合成」の仕組みを、基本から解説していく記事群です。
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記事一覧

FM/PD合成の仕組み ❶三角関数とラジアン

FM/PD合成の仕組み ❶三角関数とラジアン

先日FM Anthemというu-he HIVE用のプリセット/ウェイブテーブル集をリリースしました。

UHMというウェイブテーブル生成言語を用いて、FMシンセのアルゴリズムそのものをウェイブテーブル内で再現するというプロダクトです。

製品を作るにあたって、YAMAHA DX7のFMシンセシス、およびCASIO CZ-1000のPDシンセシスが具体的にどのような演算をして波形を作り出しているかと

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FM/PD合成の仕組み ❷位相への演算

FM/PD合成の仕組み ❷位相への演算

前回は、そもそもsin・cosが何であるか、そして円周で角度を表す「弧度法」について説明しました。

FMもPDも、サイン波/コサイン波を変形させて新しい波形を作ります。そしてその「変形」というのは、フィルターを通すとかエフェクターを通すとかいうことではなく、数式を変形させるものです。

FM/PDが行う演算はそれなりに難しいものですので、この記事ではまず「数式と連動してグラフが動く」ことを、感覚

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PD合成の演算 ❶基本設計を知る

PD合成の演算 ❶基本設計を知る

前回は、サイン波の「位相」に演算を施して波形を変形させる基本を解説しました。

今回ようやく、PD合成の本論に入ります。FMより先にPDから始めるのは、こちらの方がやや仕組みとしてシンプルで、理解しやすいだろうからです。FMにしか興味がないという人も、頭の準備運動としてちょうどよいはずです。

PDシンセについてPD(フェイズ・ディストーション)は、CASIO CZシリーズで導入された波形の生成方

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PD合成の演算 ❷波形を生成する

PD合成の演算 ❷波形を生成する

おさらい前回は、波形生成のパーツを「位相グラフ」と「波形グラフ」に分けるという基本コンセプトを説明しました。

「位相グラフ」は平たく言えば、波形を描くスピードを司る存在であります。その傾きが急になればなるほど、それに応じて波形を描くスピードも上がるため、位相グラフ次第でいくらでも波形を伸縮させることができるというシステム。

そしてもし位相グラフの傾きがカクカクと折り曲がれば、波形も面白い風に曲

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YAMAHA DX7式FM合成の原理

YAMAHA DX7式FM合成の原理

これまでの回一覧:前提知識 ❶三角関数とラジアン

前提知識 ❷位相への演算

PD合成 ❶基本設計を知る

PD合成 ❷波形を生成する

さて、今回いよいよ“本丸”とでもいうべきFM合成の解説に入ります。

まず最初に押さえておかねばならない前提認識がひとつあって、それはYAMAHA DX7の音作りは「FM」ではないということです。

というのも、「FM」というのは“Frequency Modu

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