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マージナルマン・ブルーズ #3

 (とりあえず)沖縄の味方をしている人たちに現実的な解決策や政策を打ち出せている人はいなかったが、(とりあえず)「センソー反対ベーグン出て行け」と唱えたら満足できるようだった。責任を取る必要のないお気楽な「正義」がトーキョーにあふれかえった。自分たちの身を汚さないことを前提としたところで物事を発想するというのはこういうことだ。
 そもそも国連加盟国196カ国のうち米軍駐留国が151カ国にのぼっている現実のなかで、そんな事実すら知らないようなお花畑たちが、いまさら「アメリカによる帝国主義的な世界支配戦略に沖縄を巻き込むな」などと叫んでもだれの耳に届くというのだろうか。彼らはだれに向けて叫んでいるのだろうか。本気で日本政府やアメリカ大統領に届くと思っているのだろうか。沖縄は、オキナワだったときもOKINAWAだったときも、それ自体なにも変わっていない。どんなに暴力にさらされようと、「善意」という利権に食い物にされようと、「正義」というエゴに踏み荒らされようと、てーげーに働き、ゆんたくし、どなんを吞み、三線に合わせてカチャーシーを踊り、眠る。島の祈りは変わらない。どんな権力も偽善もそれだけは変えられない。

 「豊かさ」は、人々に豊かさをもたらさない。「正義」と同様に「豊かさ」は、争いや軍事衝突しか招かない。海底資源が発見されたり、地理的に諸外国に近かったり、空気や海や生き物たちが豊饒だったり、汚く貧しい本土に比べて、美しく豊かさにあふれたこの島は、地政学的にもどう見ても要衝だった。つまりこの島は、この島の人たち以外の人たちにとって、大きな利権そのものだった。
 資本主義社会では「豊かさ」は「利権」の別称だという至極当然のことも、大資本の航空会社や旅行業者が打つCMでビキニ姿のアイドルやグラドルがしまりのない重そうな身体や病的に痩せた貧相な身体を晒して内股で飛んだり跳ねたり寝そべったりすることで簡単に覆い隠された。

 「おまえたちを守る」と言って、F15やF22といった主力戦闘機や空飛ぶ国家機密みたいな最新鋭戦闘機が島の上空を旋回した。一度のスクランブルで400~600万の燃料代が計上され、F15イーグルは1機あたり102億、F22ラプターにいたっては250億もの価格がついていた。やはり島は巨大なマーケットであり、金の成る木に他ならなかった。

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