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Somebody Loves Baby #3

 もう一つは、後ろから僕の肩に手を置いて、ぎゅっと肩をつかむことだった。その間しばらく僕はじっとしていなければならなかった。
 肩に触れた父の掌は、母とは違った何ともいえない重みと、筋張った硬さと、肉厚な柔らかさがあった。
 手を置いて、ぎゅっと掴んで、また力を抜いて、しばらくそのままで、少しずらして、またぎゅっと掴んで、また力を抜いて、しばらくそのままで── 。
 ゆっくりと繰り返されるその時間は、刹那のような、永遠のような、とらえどころのない時間だった。同時にそれは、いま確かに僕のことだけを見てくれていると実感できる時間だった。
 ある時父に
「なんで肩をにぎるの?」
と尋ねたことがある。すると父は小さく笑って
「いちろうが大きくなったかどうか見て、元気でいるように祈ってるのさ」
とだけ言った。それ以来、肩を掴んでもらえることが、母にも姉にもない自分だけの特権のように感じて、何となく誇らしく思うようになった。

つづく

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