意外と可視化されてない ベンチャーキャピタルの『投資実態』
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意外と可視化されてない ベンチャーキャピタルの『投資実態』

2020/11/8更新
2020年9月8日に公開し、その日のうちに非公開にした本ポストですが、2020年11月8日に再公開いたしました。
なお再公開に伴い、記事に記載されているリンク「アクティブ投資家203」における投資家の「属性分類」等を一部修正し、それに伴い記事の内容を一部変更しました。

また、多くの方より本ポストに対するご意見をいただき、大変感謝しております。一方で残念なことに、筆者への明らかな個人攻撃と思しきDMもいただいております。

本記事は、筆者自身がファイナンス実務に携わる中で「こんなものがあったら良いな」と思い、個人的に作成したものです。
したがって本ポストやデータについては趣味の延長線上のアウトプットではありますが、私と同じ悩みを抱えている起業家の皆様やスタートアップでファイナンス実務に携わる方のお役に少しでも立てればと思い、公開したものです。

実際に本ポストをご覧いただいた読者のみなさまから、再度記事を公開して欲しいというご要望を多数いただきました。そういった方に微力でもお役に立つことができ、ひいては業界における情報の非対称性の解消に少しでも貢献できればと思っています。

以上の背景から、再公開をさせていただきました。

 突然ですが、資金調達を考えられている起業家のみなさま、今最も積極的にベンチャー投資を行っている投資家は誰か?ご存知でしょうか。

筆者はこれまで2年間、約900件のスタートアップの資金調達案件を調べてきました。このデータをもとに、直近スタートアップに出資実績のある、のべ3,124社の投資家データを抽出し、どの投資家がアクティブなのか分析しました。

この記事をご覧いただくと以下について知ることができます。

・日本における広義のベンチャーキャピタル、すなわちVCだけでなく、金融機関や事業会社・CVCを含めたリスクマネーの供給者の面々を網羅的に知ることができる

・これらベンチャー投資家は実際に、どのステージのスタートアップにどの程度積極的に出資をしているのか?また、どの産業のスタートアップにどの程度積極的に出資をしているのか?投資家のHPなどからは読み取れないファクト情報をベースに理解することができる

何を調べたか

 直近2年間で実施された資金調達案件を調べて、アクティブにベンチャー投資を実施している投資家・VCを203社ピックアップしました。具体的には、メディアやプレスリリースをデータソースとして、2018年1月1日から2019年12月31日までの2年間で資金調達を実施したスタートアップ企業に資本参加した投資家のリストを集計し、出資件数が多い投資家から順番に並べ替え、以下のようなリストを作成しました。

アクティブ投資家203(読み込みにやや時間がかかります・・・。)

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2020/11/8更新
Sheet「注釈」に記載された分類ルール上、CVCに分類されていた投資家のうち、実質的には独立系VCに近い動き方をされているベンチャー投資家については、「独立系」及び「事業会社・CVC」の両方に「◯」を記載しています。ただし、こちらは筆者の主観による分類方法なので、実態に合わせて適宜修正します。

データの見方

 詳しくは、上記ファイルの「注釈」シートを参照いただければと思いますが、大きく4つの観点で分析をしています。

出資件数(C列):各投資家が直近2年間で実行した投資案件数(金額が公開されているものに限る。以下同様。)

参画ラウンドの平均回数(D列):各投資家が出資したラウンドが、スタートアップ企業にとって何回目の調達ラウンドかを示した平均値を示している。

属性分類(E列〜):投資家の属性。以下の4分類を基本としている。

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出資先の業界分布(BD列〜):各投資家における直近のポートフォリオの中に占める特定の業種の分布割合を示す。例えば、「医療」に「10%」分布している投資先であれば、その投資家は直近2年間でおよそ10%の割合を医療分野のスタートアップに投資しているということ。

何がわかったか?

最もアクティブな投資家は誰なのか?

 アクティブ投資家203社の中でも、上位40社(同立含め41社)をピックアップすると以下のようになりました。なお、横軸の「ステージ」は「参画ラウンドの平均回数」を基準に分類しています(*1)(*3)。

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※ 各社様のロゴを使用させていただいておりますが、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除・差し替え対応致します。

どのステージにお金を出す投資家が多いのか?

 一方、アクティブ投資家203社全社を対象に、「参画ラウンドの平均回数」をヒストグラム で分析しました。全体的にアーリーステージにおける投資家が多いことがわかります。これは当たり前ですが、ステージが進むにつれ、案件の数も減っていくためです。

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このデータにおける投資家の「属性分類」の内訳を%で示すと以下のようになります。アーリーでは、独立系・事業会社系が比較的多く、レイターでは金融系のVCが比較的多いことがわかります。

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それぞれのステージで最もアクティブな投資家は誰か?

 このうち、上位40社のアクティブを対象に、縦軸に「属性」、横軸に「ステージ(参画ラウンドの平均回数)」をとったカオスマップを作りました。

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※ 各社様のロゴを使用させていただいておりますが、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除・差し替え対応致します。

2020/11/8更新
Sheet「注釈」に記載された分類ルール上、CVCに分類されていた投資家のうち、実質的には独立系VCに近い動き方をされているベンチャー投資家については、「事業会社・CVC系」に分類しながらも、独立系に近い位置にロゴを配置している。その他、例外もあるので、正確な記載は「アクティブ投資家203」を参照のこと。

HPには書いていない投資家の本当の「専門領域」

 また、「アクティブ投資家203」のBD列以降では「出資先の業界分布」を記載しています。このデータはそれぞれの投資家がどの業種のスタートアップに何%投資しているのか?を示したファクト情報です。この情報を元に、ポートフォリオの20%超を特定の業種の企業に投資している投資家を「特化型」のVCとして分類し、それ以外の投資家は「一般型」の投資家として分類しました。

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これをカオスマップに反映したのが以下の図です。

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※ 各社様のロゴを使用させていただいておりますが、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除・差し替え対応致します。

結果、ほとんどの会社が特定の業種に偏らず、満遍なく投資する「一般型」でしたが、「特化型」では、業種などが関係ないBtoB SaaS系の投資先に投資するVCや、医療や金融、一次産業などのビッグマーケットに投資をする一部のCVCなどが目立ちます。不確実性の高いベンチャー投資では、ベータ狙いの投資がほとんどと考えられ業種で見ると、建前上はどうあれ、分散投資をしている投資家が多いのかなと推測します(*2)。

最後に

 以上、日本におけるベンチャー投資家の面々をVCや金融機関、事業会社・CVCまでスコープを広げてできる限り調べてみました。「アクティブ投資家203」は投資家のHPなどを見ると大体同じようなことしか書いていないので、自分的にこんなデータがあったら良いな〜と思って作ったデータですが、もしみなさまのお役に立ちそうでしたらぜひシェアいただけると幸いです。

 また、ここに記載されているデータは単なるファクト情報に過ぎません。この情報から得られた示唆については、別の記事やTwitterなどで発信する予定なので、質問や修正ご希望の方は筆者までご連絡ください(お返事にお時間いただく場合がございます。)。

ありがとうございました!

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以下、注釈

*1:「参画ラウンドの平均回数」について、「2.0回以下(n数は266)」・「2.5回以下(n数は45)」・「3.0回以下(n数は155)」・「3.5回以下(n数は51)」・「3.5回より多いもの(n数は208)」で分類しており、便宜上2.0回以下をシード、2.0回より多く、3.5回以下をアーリーまたはミドル、3.5回より多いものをレイターとして分類している。

*2:業種で分類した場合の偏りはほとんどないと言えるものの、特定のビジネスモデルに投資するベンチャー投資家などは存在する可能性はあるため、今後深堀りしたい。スタートアップのビジネスモデル分布に関する投稿は以前しており、この内容を発展させたい。

2020/11/8 更新(加筆)
*3:「参画ラウンドの平均回数」には、ベンチャー投資家が既に投資したスタートアップに対する追加投資の回数も含んでいる。そのため、追加投資を多数行っているベンチャー投資家の「参画ラウンドの平均回数」はその分大きくなる。これが原因で、『最初に資本参加するラウンドはシードステージに限定しているものの、フォロー投資を行った結果、ミドル・レイターステージのスタートアップにも投資実績が生じたベンチャー投資家』については、カオスマップ上、ミドル・レイターステージにプロットされている可能性がある。なお、参考数値として、参画ラウンド回数の標準偏差をE列に示している。


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ベンチャーオタクです。ファイナンス / PdM /プラットフォームビジネス