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ドクダミを香煎にしてみた

 茶事のとき、茶会のとき、寄付(客人が最初に入る待合のこと)に用意されている香煎が好きだ。温かな湯と、香りで張り詰めた場の空気も体も、優しく緩めてくれる。

 香煎というのは、煎じて香る湯のことだ。あられ香煎、しそ香煎など様々あるが、亭主の工夫次第でその種類は様々。
 茶の湯は基本的に冬が本番なので、寒い中来てくださった客人たちに、まずは暖を取ってもらおうと、お湯と香煎が用意されている。亭主に会う前に、まずは客同士で、外から来て高まった気持ちを温かな香煎で落ち着かせる。
 そのため、当日の茶席が滞りなく、皆が呼吸を合わせながら行えるかどうかは、私としてはこの香煎にかかっていると思っている。定番のものが多いようだが、季節の植物や食材などを多用すれば、より風情を感じることができるだろう。
※流派によっては、料理の最後の湯桶(と水)のときにご飯に振りかけるために香煎を出すことがあります。

 ということで、今盛りを迎えるドクダミの葉で香煎を作ってみた。そこら中に生えているし、今ではその匂い故、雑草として処理されてしまうことが多いだろう。ドクダミの茶にありつく前に、少しその植物性について調べてみた。

名前の由来

 何でも調べるときは、語源や由来、成立を調べるとよりそのものの理解と歴史がわかる。名前はとても大切だ。
 ドクダミは新井白石の『東雅』によると、「毒をダミする」ことが語源という。「ダミ」とは、「矯正する」「止める」という意味で、つまりは毒を治す、ということらしい。ちなみに近世以前は、「シュウ薬」古くは「ヒブキ」と呼ばれ、そのしぶい、苦い味からつけられたのではと言われている。
 他にはその匂いから毒を「溜め」るが、転音して「ドクダミ」となったなど、身近であったからか、名や由来を多く持つ。
 そして、もう一つの有名な名前が「十薬」だ。十の薬効があるため、そう呼ばれるのだとか。効果については、十どころか無数に出てくるので、興味ある方はぜひGoogle先生へ。
 ちなみに、飲み過ぎると薬であるから腹を壊すらしいので、注意が必要。

飲む

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 ドクダミの葉を摘み、5日ほど天日で乾燥させた。あの独特の香りもだいぶ落ち着く。葉脈を取り除く技術はないため、そのまま裁断。そして最後に水分を完全に飛ばすため軽く炒る。あとは、熱湯を注いで完成。

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 食レポをするつもりはないが、熱湯であるほどあの匂いはだいぶなくなり、甘茶のような甘い味わいが感じられた。低い温度で煎じたときはあまり好きではなかった。
 薬効が多くあることも合わせて、茶席にも使えそうだと思う。今後、私の茶会で夏前頃になったら出すつもり。

 桑の実もそうだが、最初は家の前の公園で実をつまんだ時の甘さに感激して、喫茶養生記を再び開き、苗を購入した。都会に住んでいても、意外と道端を見ていればいろんな植物が育っている。地元が同じお弟子さんとは、あそこにあの花が咲いている、などいつも植物情報を交わしている。
 目をみひらくことで、そのものが見えるようになる。経験と知識によって、智慧は開かれる。今回のドクダミ茶同様、皆が知っている当たり前のことも、まずはなんでもやってみるしかないし、調べてみるしかない。

 身の回りにあるささやかな季節の変化を眺めることができれば、より深く時を賞翫することができる。

武井 宗道

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