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【後編】提言して、活動は終わり?ナカソト人材と深掘り対談!


5月25日(水)に人事院の川本裕子総裁に手交した私たちの提言について、元経産省官僚で現在は官民共創を目指す株式会社Publink代表の栫井誠一郎さんをゲストにお迎えし、ソトナカプロジェクトの佐伯健太郎と西川朋子が対談。霞が関の「ナカ」の経験を活かして「ソト」との垣根をなくす活動を続ける立場から、ここのところ実際どうなの?という本音の深掘りをしていただきました!(前編の投稿はこちら

ソトナカはジョブ型雇用を目指しているの?

栫井さん:提言書を見ると、省内外公募制度の活用や、能力本位の昇格・降格といったことへの言及があり、一見すると、いわゆるジョブ型雇用を目指しているようにも見えました。
私はジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドが望ましいと考えています。
先日、ある人事担当の方が「霞が関は降ってくる仕事を何でも打ち返せて何でも対応できるメンバーシップ型だからうまくいっているのに、なぜジョブ型がよいという話があるのか全くわからない」と言っていたぐらい、現在の霞が関では、メンバーシップ型の体質が強い状態です。
現状の霞が関のメンバーシップ型雇用からの変革には、ハレーションもありそうですが、どのようにお考えですか?

ソトナカ:大前提として、私たちも必ずしもメンバーシップ型V.S.ジョブ型という対立構造でとらえなくてもよいと思います。というのは、人材管理の考え方をジョブ型にしたとしても、官僚のジェネラリスト的な資質が重要なポジションなら、それをジョブディスクリプションに表現すればよいだけなので、矛盾しないからです。霞が関では多様な部署を短期間で歴任することで得られるジェネラリストとしてのスキルも必要とされますが、同時に、特に磨きたいスキルや専門性を高めることも可能とするのも重要なのではないでしょうか。

また、先ほどもお伝えしたように、私たちの提言書では、各府省庁が中途採用者をどう位置づけるかによって、ステージを3段階に分けています。

図1


ステージ3では、中途採用者を「組織変革のための原動力」として捉え、組織変革に必要な知識・スキルについて、中途採用者を含めた外部経験者から積極的に取り入れることをイメージしています。こうした「適所適材」のためには、ジョブ型に通じる省内外の公募制度や能力本位での異動が欠かせないと考えています。
ただ、3段階のステージのうちどこを目指すのかは、各府省庁に決めてもらうべきだと思っています。すべての府省庁が一律にステージ3を目指すべき、と求めているわけではありません。自らの組織の人的なリソースや、今後目指すべき組織のあり方を検討したうえで、どのステージに軸足を置くかを考え、それを今いる職員、将来の職員に向けて省内外にアナウンスしながら施策を実施していくことが大事だと考えています 。

人事担当に、中途採用をする余裕がないのでは?


栫井さん:提言書の中には、専任の中途採用担当職員の配置や、省内外公募制度の実施などの提案が含まれていて、私も賛成です。とはいえ、現状の霞が関の人事担当課は少ない人数、予算で採用、育成などを行っていて、とてもそういう施策に回す人手が足りない、という声も聞こえてきそうです 。

ソトナカ:そのとおりだと思っています。私たちは提言書作成に当たって、様々な省庁の秘書課・人事課とも意見交換しており、その中では「職員が少なく、新たな施策を考える余裕がない」といった声が多くありました。そのため、提言書の中では、中途採用をメインの業務として行う職員をはじめとして、各府省庁が人材戦略を定め、実行するための人員を、原局と呼ばれる、大臣・長官官房以外の政策担当部局の人員を割くことなく増やすよう、内閣人事局・人事院に対して求めています。
各府省庁がそれぞれ要求すると、実現できるところ・できないところのばらつきも生じる可能性もありますので、内閣人事局・人事院のリーダーシップのもとに確保・配置してもらえないかと思っています。

ソトからきて幹部に登用されると、生え抜きから反発が想定されるのでは?


栫井さん:ソトナカと生え抜きの人がフェアに、フラットにチームを組んでいく霞が関が私も理想と思います。ただ、実際にソトから来た中途採用者が幹部にも登用されていくようになると、生え抜きの職員の中には「係員時代から下積みをがんばってきたのに、数に限りのあるポストが取られてしまう」と士気が下がったり、反発するような事態も想定されます。
ピラミッド競争のなかに中途採用者の活用や、外部からの公募制度の導入をすることによって起きる、霞が関のアレルギー反応をどのように克服すべきでしょうか。
 
ソトナカ: 例えば、英国は幹部国家公務員のポストが原則として公募されている「公募先進国」ですが、公募された幹部ポストでも職位が上がるほど現職の国家公務員から登用されているというデータもあり(2016年のデータで、事務次官級で75%、局長(Director General)級で69%、部長(Director)級で55%が現職国家公務員から採用)、前職が民間の人材が幹部の大半を占めるということにはなっていません。
ポイントは、中途採用か生え抜きかによらず、能力本位で登用されるということだと思います。入省年次で管理されて、ある程度は一律に昇進する体系よりも、能力や実績がきちんと評価されて、それに見合うポストや待遇が与えられるようになれば、生え抜きの有為な人材にとってモチベーションは上がるはずだと思いますし、「がんばっても正当に評価されない」といった理由で霞が関を去ってしまう若手の離職をつなぎとめる一手にもなると思います。
 新卒で着いた職がなんなのかという出自にとらわれず、分け隔てなくフラットに処遇されることが、私たちが目指している方向性であり、ひいてはこの国のためにもなる、と考えています。

提言した後の活動について、どう考えている?


栫井さん:これまでも、霞が関の変革を目指した提言は数多くなされてきました。なかには、公表後の活動や、提言がどう反映されたかが見えにくいプロジェクトもあるように思います。次官や大臣が主導する若手プロジェクトの中には、提言後、担いだ幹部や、提言の中心人物が異動することで下火になってしまうケースが散見されます。ソトナカプロジェクトは、提言を出した後の活動についてどう考えているのですか 。

ソトナカ:私たちの目指す、多様な人材が活躍できる霞が関の実現は、一朝一夕にできるものではなく、粘り強く進めていく必要があります。
今後、霞が関に中途採用される方たちの定着を支援し、各府省庁の人事担当課の中途採用者向けの施策に助言を行うなど、内閣人事局や人事院、各府省庁の人事担当課が提言に盛り込んだ施策を実施していく過程をサポートします。また、今回の提言のうち何が実行されたのかという点を確認したり、中途採用者へのアンケートも新たに行って今回の結果と比較したりするなど、1年後のフォローアップを予定しています。
中途採用者のヨコのネットワークの強化を目指して、業務の悩みや、新たな政策のアイデアを気軽に相談できるコミュニティを作るだけでなく、中途採用者だけに閉じない様々な人との協業も、今後の活動として予定しています。
幹部や大臣主導の提言と違い、有志のプロジェクトによる提言ゆえに、志ある多様な人が柔軟にチームで動きやすく、プロジェクトを応援する官民のコミュニティを大きく育てるなど、継続的な影響力を生みだせる可能性もあると思います。

栫井さん:なるほどですね、私も経産省を退職して民間の立場にいるからこそできることがあると感じているので、お互いセクターを越えた協働を根気強く続けていきたいですね。そのためにも、今ソトにいらっしゃる日本社会を良くしたいという志と能力の高い方にとって霞が関に飛び込むことが、身近で魅力的な選択肢になる必要があります。現状は情報不足で、極めて限られた選択肢として捉えられがちで、すごく勇気を奮って飛び込むような状況だと思います。

ソトナカ:そうですね。私たちがソトナカ人材およそ100名に行ったアンケートの回答でも、国でしかできない仕事ができると仕事への満足度は高いのですが、飛び込むまでは長時間労働や馴染めるかの不安などが大きかったことがわかりました。民間にいたからこそ霞が関で活かせるスキルがあることをしっかり伝えて、もっと多くの方に飛び込んできて欲しいと思います。栫井さん、今日はありがとうございました。

栫井さん:ありがとうございました!

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