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自分の子供には、ちゃんとお金のことを教えたい

わが家には、ソーマという3歳の男の子がいます。3歳になるとけっこう話すようになるので、毎日の変化が本当に面白いです。

僕と嫁ちゃんは国際結婚の夫婦なので、英語の他に日本語とベトナム語で話しかけています。3か国語で話しかけるので本人はだいぶ混乱しているようですが、聞く方はだいぶ理解しているようです。まだまだ拙いですが、お互い理解できるくらいにはなってきました。

この頃、わが家ではお金についての話題がよく出ます。ソーマにどうやってお金のことを教えようか、という話です。今日は、子供とお金についてのお話です。

お金が欲しいと言い出した

最近ソーマは、お金があるとオモチャが買えるということがわかったらしく、

「ダディ、ソーマこのオモチャ持ってないよ。これ買う!」

と言い始めました。

さぁ大変だ! わが家の家計は火の車です。けして貧乏ではありませんが、余裕もない。彼のオモチャに対する飽くなき探求心を際限なく満たしてあげたら、一気に破産してしまいます。

最初のうちは、

「ダディはお金持ってないよ。」

と軽くかわしていましたが、そんなウソが何度も通用するほど3歳児は甘くありません。

「ダディ、お金持ってるよ! (ポケットを指さして)ここ!」

とすぐにバレてしまいました。

「ダディのお金は、ダディのもので、ソーマのお金じゃないよ。」

と教えてみました。すると、

「ギブ ミー ユア マニーーーーー!」

ときた。しかも、かなりしつこいぞ。これは、なかなか手ごわい。

「ソーマ、ダディは人の役に立つことをしてお金を稼いでいるんだよ。ソーマも、お金が欲しかったら人の役に立つことをしてごらん。誰かが欲しがっているものを売ってあげたり、誰かが何かをするのを手伝ってあげると、お金がもらえるよ。」

彼は大きなため息をついて、トランスフォーマーで遊び始めましたが、しばらくするとこう言いました。

「ダディ、このトランスフォーマーのオモチャ買う?」

驚いて椅子から転げ落ちるかと思いました。僕は38歳でやっと起業したのに、まだ自分のお尻もふけない3歳児から、まさかの商談です。

アイディアとしては悪くないので買ってやろうかなと一瞬思いましたが、心を鬼にして断りました。

「うーん、それ欲しい人に売ってあげたほうが良いんじゃない?」

商談不成立です。だって中古のトランフォーマー欲しくないし。右足のパーツ失くしてるし。そもそも売った後も遊ぶ気満々だよね、あなた⁉

お金に関する潜在意識は恐ろしい

わが家では、半年くらい前からソーマにブタさん貯金箱を与えています。ポケットの小銭を渡して、自分で貯金箱に入れる習慣をつけさせました。これはこれで良い習慣なんですが、僕的にはちょっとイケてないなというのが正直な気持ちでした。

この方法だと「お金は貯金するもの」ということは教えられるのですが、同時に「お金は親からもらうもの」ということも教えてしまいます。

習慣による刷り込みとは恐ろしいもので、これを社会人になるまで続けてしまうとマズいなと思っています。ハーブ エッカーの「ミリオネア・マインドという本に、お金に関する両親の癖や言動が子供のお金に関する潜在意識を決定する、というちょっと怖い話があります。

潜在意識とは恐いもので、自分でも気付かないうちに言動をコントロールしてしまうものです。「うちはビンボーだから」とか、「お金持ちは悪い人」といった潜在意識を持ってしまうと、ビンボーであることを当然のこととして受け入れてしまったり、浪費して無意識のうちにお金を手放すようになったりするそうです。 

親としては、「お金は自分で稼ぐもの」「お金を稼ぐのは簡単」「お金を稼ぐとみんながハッピーになる」みたいな潜在意識を育ててあげたい。

お金は楽しく稼ぐものだとわかってもらうには、お金を楽しく稼いでもらうしかありません。せどりは3歳児には難しそうだし、近所の芝生刈りじゃ楽しめそうもない。嫁ちゃんと色々と考えた結果、ひらめきました。

「そうだ、バナナを売ろう!」

ちょうど庭のバナナの木から、大量のアップルバナナを収穫した後でした。わが家では食べきれないので、近所に配ろうかと思っていたところでした。

ちょうど良い商品です。何せ仕入れ値はタダです。タダのものを売るほど優れたビジネスモデルはありません。3歳児にも、仕入れ(収穫)から始まり、棚卸、商品陳列、マーケティング(売込み)、値段交渉、集金までの、全てのビジネスプロセスをフルで見せることができます。

ということで、ソーマの最初のビジネスは「バナナスタンド」に決定しました。

ソーマ3歳、起業する

僕は、良く晴れた木曜日に仕事を早めに切り上げ、ソーマを幼稚園に迎えに行きました。

「マクドナルドに行きたい!」

と言うソーマに、今日はバナナを売ってお金を儲ける日だよと説明しました。ソーマ社長は大喜びです。家の前に机と椅子を出して、さっそく開店しました。

自宅があるのは閑静な住宅地で、しかもだいぶ外れの方です。競合他社は見当たりませんが、絶好のロケーションとも言い難い。ここは産地直送無農薬というポジショニングで勝負です。嫁ちゃんが、古くなったシャワーカーテンで作った看板と庭のプルメリアの花で、店内を華やかな雰囲気にしてくれました。さすがはMBAでマーケティングを学んだだけのことはあります。抜かりない。

さすがにバナナだけでは商品が足りないので、去年のハロウィンでもらった大量のお菓子も売ることにしました。こちらも当然、仕入れ値はタダです。

最初のお客様がやってきました。小学3年生くらいの女の子です。ハロウィンのキャンディを見つけると、「キャンディー‼‼‼」と鼻息荒く走り寄ってきました。明らかに買う気満々の上客です。

しかし、タダで配っていると思ったらしく、ピンクのアニメ柄リュックにキャンディーを入れ始めました。小学生からお金を巻き上げるのは大変心苦しいのですが、ビジネスはビジネスです。心を鬼にして、お客様に売り物であることを伝えました。

「テイク ディス マニー!」

と言って、リュックからクシャクシャの1ドル札を2枚出して、元気よく手渡してくれました。この瞬間、ソーマのバナナスタンドのプライシング戦略が、「お客さんの言い値」に決定されました。

「明らかに払い過ぎだろ」

とは思ったものの、お客さんが払いたい最高額がベストな値段。ビジネスの鉄則です。

女の子は家でおしおきを受けているらしく、お菓子はお預け状態なんだと教えてくれました。ちょっとご両親に悪いなとは思ったものの、いまさら返品してくれそうにはありません。鼻息の荒い女の子は大喜びで帰っていきました。

ソーマ社長も、お金を受け取って大喜びです。自分でレジ(トマトソースの空瓶)にお金を入れました。

「ダディ、お金もらったよー!」

「さっきの女の子は、キャンディーを買えてたのがうれしかったからお金をくれたんだよ。」

と、すかさず教えてあげました。イマイチわかっていないようでしたが、まぁ最初はそんなもんです。楽しくお金を稼いだという記憶が残れば、良い潜在意識になってくれるでしょう。

また一緒にお金を稼ごうね

その後も、近所の大人が何人も立ち止まって、バナナとキャンディーを買ってくれました。子供にお金のことを教えているんだと説明すると、皆さん喜んで協力してくれます。本当にありがたいです。地域のコミュニティーで協力して子供を育てている。そう感じられたステキな経験でした。

結局この日、ソーマのバナナスタンドは7ドルを売上げました。仕入れ値はタダなので、利益率はキーエンスもビックリの無限%です。オモチャを買えるほどの額ではないけれど上々です。ソーマ社長も大喜び。嬉々として売上をブタさん貯金箱に預金しました。

ソーマはこの日から、

「ギブ ミー マニー」

と言わなくなりました。相変わらずオモチャを買いたいとは言っていますが、

「また一緒にお金を稼ごうね」

と言うようにしています。これからも楽しくお金を稼ぐ体験を通して、良いお金の潜在意識を持ってくれたら最高です。

第二話はこちら

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