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魂の文章術メモ 2

この本を読んで、文章を書く修行の過程。

損失を永遠に受け入れよ。
あらゆることに対して素直であれ、心を開き、聞き耳をたてよ。
自分の経験、言葉、知識の尊厳を恐れたり恥じたりしてはならない。
生きることに恋せよ。
(ジャック・ケルアックの書いた「散文の基礎」として上記の本で紹介されている言葉)

今こそ自分の奥深くに降りていくことにした、と書いた。はい、書きました。でもこれこそ言うは易し、田尾安志の典型であり、当たり前かつ容易に想像できたことだが、なかなか難儀なことである。特に僕の場合は。

僕はずいぶんと長い間、ヤワで繊細で傷つきやすくデリケートなハートを絶対に晒さないように、時間を見つけては穴を掘って地中深くに埋め、コンクリート、セメント、雪、氷、唾液、アロンアルファ、セメダイン、木工用ボンドなど思い付くもの全てを手当たり次第に使って固め、さらに鋼鉄製の板で厳重に蓋をしてきた。何の為に? もちろん傷つくことのないように。

おかげで傷つく、ということはほぼ無くなった。うん、素晴らしい成果だ。でも一方で、他人と心を触れ合わせるということはなくなったし、心の底で何かを感じることもなくなった。

誰に対しても心を開かず、何重にも張り巡らされた策の内側で生きている。あるとき、それを見透かしたように、ある女性がこう言った。「Sotaさん、最近心の底から笑ったことありますか?」

鋭い(苦笑)。確かに、ほとんど無いかもしれない。少なくとも覚えている範囲で心の底から笑ったと言えるのは、6年前くらいの会社の飲み会での同僚の笑い話だった。酒を飲んで酔っぱらって中央線に乗り、寝過ごして遠くの方(山梨県)まで行ってしまい、なかなか帰ってこれなかった話なのだが、あれは笑ったなぁ。いつかあの面白おかしさを文章で表現できるかな。あるいは15年前くらいに妻の同僚のピアノ発表会で見た、ある演者のアメージング・グレースの演奏。これは演者は真剣なので大変失礼なことは重々承知しているが、あまりのリズム感の悪さに思わず心の底から笑ってしまった(もちろん盛大に吹き出すわけにはいかないので、それを抑えるのが死ぬほど大変だった)。これくらいかな。少ない、ね。

他人に触らせないだけでなく、自分ですら触れられなくなってしまった、僕のハート。いつか降りていける日がくるのか? ここはジグムント・フロイド博士の出番なんでしょうな、本来であれば。

でも僕ほど厳重ではないにせよ、現代に生きる人は多少なりともそうなのではないか。自分の心の奥深くに勇気をもって降りていける一握りの人がたぶん作家と呼ばれる人なのだろう、そしてそこで見てきたもの、感じたものを表現してそれが普遍性を持つとき、村上春樹のように世界中で幅広く読まれる作家になるのだろう。

思えば村上春樹の小説にはよく井戸が登場する(例えば「ねじまき鳥クロニクル」。あと「騎士団長殺し」にも地中深くに掘られた穴が重要なモチーフとして出てくる)。あれは自分の心の奥底に降りていくというメタファーなのだろう。

さて時間が来たようだ。続きはまた今度。それまで名曲「フロイドと夜桜」(菊地成孔 feat. 岩澤瞳)をどうぞ。昨晩 FINAL SPANK HAPPY のライブで観たけど、素晴らしすぎて感動しまくりでした(音楽は僕の心に染み入ることのできる唯一の存在かも)。

Photo by Artem Maltsev on Unsplash

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IT企業のプロダクトマーケティングマネージャー。何より美味しいものが好き。そして犬好き。旅行 / ゴルフ / ハワイ / キャンプ / 登山 /スノーシュー / 本 / 音楽 / 映画 / 経営学 / プラットフォーム。投稿は個人的なものであり、勤務先とは無関係です。
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