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私が出会った少女

その美しい少女とどこで出会ったのかは忘れた。気がついたらどこかのホテルを出て(何らかの行為があったわけではない。念のため…)、2人で街を歩きながら話をしていたのだった。ちなみにその時彼女は少し大人びた中学3年生で、「僕らの七日間戦争」の頃の宮沢りえを彷彿とさせ、そして同じくポニーテールだった。

何を話したのかも全ては覚えていない。断片的に覚えているのは、以下の2つの話題だ。

写真を撮るときに笑顔が上手く作れない、という話。
上手く出来ないと言うので、iPhone を構えてやってもらったら、たしかにぎごちない笑顔を繰り出す彼女。でももちろん、それすらもかわいく、美しい。
「作り笑顔なんか上手くなくたっていいんだよ。作り笑顔だけ上手になってしまった大人より百倍いい」と思う僕。

それから彼女は歌が上手くて、どこかのコンクールか何かで歌っている映像が YouTube に置いてあったのを観たのが、僕が彼女を知った最初だった。
「合唱部に入っているの?」「ううん、あの歌が歌いたかったから、出させてもらった」「ちょっと歌ってみてよ」
それはたしか神様に後ろから追いつかれるという歌で(実際のところ、自分で書いていてもよく分からない内容だが…)、歌いながら彼女は「追いついてごらん」といわんばかりに小走りになり、僕はそれを追いかける。そして少し息を切らしている彼女に、信号待ちで追いつく。

そうこうしているうちに彼女の住む家が近づき(家まで送り届けていたのだ)、もうすぐ高校生になるという彼女に別れ際「どこの高校に進学するの?」と尋ねた僕は、「xx女学院」という返事を受け取って、それを何度か頭の中でリピートしてその学校の名前を記憶に刻んだ。

「今日は楽しかった。お別れするのは寂しいな」という彼女に「僕もだよ。楽しい高校生活を」と言って別れ、近くの駐車場に停めてあったクルマに乗り込んで日常の生活に戻る。もう二度と会うことはないだろう、と100%に近い確信を抱きながら。

思い出すことがあれば、あの YouTube で歌う彼女を繰り返し観るのだろう。そして思い出す間隔も徐々に長くなり、ある日 YouTube の動画が削除されていることに気づくのだろう。でも僕が死ぬまでは消えることのないあの時の楽しかった記憶と好意――

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…と、以上は昨晩夢で見た話で、完全なるフィクションなのだが、ハンバート ハンバートの気持ちが少しだけ分かった気がした。
それにしても夢とは不思議なものだ。普段は40代以上が好きなのに(何せシャーリーズ セロンや若村真由美が好きなのだ)、なぜ美少女の夢など見たのだろうか?

♫ BGM「波よせて (カバー) 」by クラムボン

Photo by Molly Belle on Unsplash

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