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sosoの素(24)

心と身体と頭のこと 9

心のことを考えると「開く」「閉じる」が頭に浮かぶ。
仕事上、お客さんとの打ち合わせ時に心を開いてもらえるかどうかをとても重要視していて、そこがうまく行かないと制作時に迷いが多くなって心配事が増える。逆にしっかりと心を開いてくださって良いやりとりができたと思えるとスムーズに制作も進んでいく。
オーダーで作るものは家具や表札が多いけど、来てくださる人は印の無い良い品のメーカーや他の技術のすごさを見せる家具職人じゃなく、僕にと思って来てくださる。だから踏ん反り返って作ってやろう!なんて態度でも成り立つのかもしれないけど、話を聞けば聞くほどそんな態度では満足してもらえるものを作ることができないと毎度背筋が伸びる。
よく言ってもらえるのが「ずっといいなと思えるものがなくて木全さんのものを見てこれがいい!とやっと思えました」「こんな感じのが欲しいなーと思っていたけど誰に頼んだらいいのかわからなかった」「私のいいなってのをわかってくれそう」など。(webとかに載ってるお客様の声みたいになっちゃった、恥ずかしい)
探しているのは家具とか表札なんだけど、その奥底には本人としては必要だと思っていたり改善したいと思っているけど、自分がいいなと思えるものがみつからなかったり、理解してもらえなかったり共感してもらえないって感じでざっくり言っちゃえばお困りごとでそれを解決したいんだと思う。
その気持ちは僕もよく分かる。これだけもので溢れ、買うために便利なシステムもあるけど自分がこれがいい!と思えるものと本当に出会わない。レビューみたいなものを読めば読むほど疑念ばかりが増えるし、いいかもと思っても以前にネットで買い物したものが実物が写真よりも極端に安っぽい経験をしていたりしてるから怖くなる。きっと現代社会が抱えてる病のようなもののようなことなんじゃないかと最近では感じてる。
買い物が簡単になったはずなのに難しくなってる。もしそれを解決してくれるなら多少高くてもいいかな、なんてことまで思ってる。きっとそれと同じような、いやそれよりも深く重い気持ちを持たれて僕のところに来られてるんだと思うと親身にならない他はない。

そんな心構えでお話をいつも聞いている。
初めから打ち解けて何でもお話してくれる方もいれば、遠慮してなかなか自分の本心を口にできない人、本心を言葉にすることが苦手な人、自分の気持ちを表す言葉が見つからない人、いろんな人がいるけど、みんな自分の中に「素敵!」と思えるものと出会いたいと言う強い気持ちを持っている。そこを探るようにその方に合わせて話をする。
中には打ち合わせとして話し始めたのにいつの間にか悩み相談みたいな感じになって話し込んでしまい、打ち合わせは全くしずに終わることも珍しくない。

打ち合わせして何の寸法も素材も決めずに終わるなんてきっと他の作り手さんからすると理解ができないと思う。だって世間話だけしておしまいなんだもん。でもそれが僕にとっての設計図の最初の一筆なのかな?って思えて仕方がない。

見えないはずの心が開かれて、お互いどことなく連帯感のようなつながりを感じ、安心する。僕の仕事はそんなおつきあいと共にあれることが誇りでもあるのです。

だからこそ僕は心ってものはみんなにあって、ものを作るのだけではなく、心を満たしていきたいとも思っている。

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