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sosoの素(74)

海外回想記7

荷物に鍵を掛け、早速街に出かけてみる。
地図を眺めながら美術館に向かって歩く。
見るもの全てに「すげー」「すげー」と声を出しながらいたるところに挙動不審のようにきょろきょろあたりを見渡していた。
飛行機での長旅で仮眠も少ししか取れなかったけど街を歩くだけでこんなにも楽しいのか。刺激ばかりだ。その勢いで行きたい美術館にとも思ったけど、寝不足でナチュラルハイじゃなくて少し落ち着いてニュートラルな状態でしっかり向き合ってじっくり味わいたいし、時間は売るほどある。
その日は適度に町歩きをして過ごした。

この海外旅行の軍資金はとにかく少ない。少なくからできる限りお金を浮かせたいと思っていた。泊まった宿は朝食付きで、パンにシリアル、果物に飲み物が置いてあって自由に食べれた。それを吐くんじゃないかってくらい流し込んで、スーパーで2Lの水と果物を買ってガイドブックと共にリュックに入れていた。交通手段もとにかく歩く、歩く、歩く。一駅くらいなら全く問題ない。お金の節約もあったけど、電車とかに乗るのが怖かったのも理由の一つ。たくさん歩いて、夜は疲れてそのまま就寝。1日一食でたまにどうしても食べて見たいものがあった時だけ買い食いをする程度。これ以上節約できるところがないって思えるほど節約をしていた。

美術館には国際学生証を日本で作っていて、学生料金で入れた。
オランダといえばゴッホとフェルメールとレンブランド。どちらも僕の目当ての現代美術ではないけれど、オランダまで来たんだら見ない手はない。変な自意識を持たずミーハーだと思われもいいやとゴッホミュージアムとアムステルダム国立美術館に行った。
ゴッホミュージアムは広々した空間にゴッホの絵が飾られていて、たまたま
かもしれないけど保育園くらいの子供たちが課外授業で一つの絵の前で寝そべりながら写生をしていたり、日本では学芸員の人に注意されそうな声の大きさで絵を前に熱心に語っていたりとこれがヨーロッパだよと見せつけられてる気分だった。アムステルダム国立美術館はどこかのお城なんじゃないかというくらい重々しく薄暗くありながら壁のいたるところに歴史的な絵画が飾られていてギャラリーの語源でもあるガレリア(回廊)そのものでこの種類の迫力は味わったことがなかった。
現代美術館はアムステルダムから少し離れた場所にしかなかったけど美術館というよりは大きめのギャラリーのような感じでもちろん良かったけど、ゴッホミュージアムや国立美術館のすごさに圧倒されてあまり印象に残っていない。

この旅行の間に一つ決めていたことで、もしも日本人の人がいても積極的に自分から関わらないようにしようと思っていた。もしも他にも一人で来てて仲良くできそうな人がいたら一緒に過ごすのもいいのかもしれないけど、きっと頼ったりすれ違ったりで最後は面倒なことになりそうだし、自分だけの力でなんとかしていくという冒険気分をしっかり味わいたかった。
ホテルでたまたま朝食の時に同じタイミングになった日本人の人と朝食だけ一緒にとったり、偶然居合わせて話しかけられてお話すること以外、最後までこの決め事はしっかり守れた。
今ならもう少し心に余裕もあるし、相手のおもしろいことを共有して楽しむことも一人旅の楽しさだなーと思うけど、あのころはこの決め事でよかったとも思うのです。

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