ヒルズホイスト＜夫婦世界一周紀102日目＞

ニウエで使っていた物干しがやたら便利だった。

芝生にぐさっと支柱が刺さり、そこから傘の骨格を大きくしたような形の棒が四方向に広がっている。支柱から柱までには多数のロープと無数の洗濯バサミがついていて、まさに縦横無尽に干しまくるのだ。

360度、どの方向から侵入しても洗濯物が干せるからノンストレス。支柱はそよ風でもくるくる回ってくれて、乾きムラもできにくいし、どの洗濯物も太陽のやわらかい香りがした。

日本の物干しのぎっちり干して生乾き…にうんざりしていたので、こんなものがあるのかと感動したのだ。ただし、雨が降ると慌てて洗濯を取り込むのが玉に瑕だけど。

てっきりニウエの宿が自家発明した便利グッズかと思っていたけれど、ブリスベンの宿から近隣の庭を眺めて驚愕した。あの物干しばかりではないか…！

どっこい、その物干しの発祥の血はオーストラリアなのだそう。ヒルズホイストと呼ばれるあの物干しが郊外の庭に立ち並ぶ風景は、エアーズロックやカンガルーと並んでオーストラリアの情緒を感じる風景100選にも選ばれているとか選ばれていないとか。（嘘）

まったく、庭が広いというのは羨ましいものだ。ヒルズホイストは全長が3メートル近くあるけれど、それが小さく感じるぐらい庭がだだっ広い。隣の家にはプールがあるほどだ。

「あの物干しうちに欲しいね」

フウロが目を細めて言った。僕にはヒルズホイストが置けるぐらいの庭がある家に住みたいね、と聞こえた。

素敵な未来だ。