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いつまでもcome again

秋の香りが鼻をくすぐる季節になると必ず聴く曲がある。

リサの声と軽快な音の粒を聴いていると、体の中にある粒子が騒ぎ出す。僕の中でこの曲は20年近くたった今でもずっと新しく、衝撃的なままだ。

小学校4年の時だった。毎週楽しみにしていた朝のニュースの音楽ランキングで、突然この曲が流れたのだ。その頃の僕と言えば、音楽はドライブ中に聴くものと決まっていて家でほとんど流れることが無かった。邦楽といったら桑田か坂本九だったし、洋楽ならビートルズとベンチャーズとレイチャールズだった。

come againはそんな僕の世界に入り込んできた、はじめてのオシャレだった。


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僕の耳は歌詞をほとんど聴き取れない。音のリズムやベースが先行して耳の中に入り込み、歌詞を読解する機能が制御されてしまう。だから曲の好き嫌いはリズムとその曲に入っている雰囲気で判断する。時たま宇多田やキリンジやくるりみたいに歌詞が殴り込みに来て歌詞で泣いたりすることもあるけれど、それはごくごくたまのことだ。

m-floの曲はそんな僕の耳にぴったりだったのかもしれない。VERBALの紡ぐ歌詞はじっくり読んでも一生わからない。ただそこにある空気・雰囲気はどのアーティストよりもウェットに富んでいて、僕に季節の情景を映し出す。それはケヤキの紅葉だったり、ポルトガルで見た黄色に染まった銀杏並木だったり、JUDY AND MARYの散歩道だったりする。見たことない景色まで発露させる。地面に溜まった雨に濡れた葉の匂い。薄く肌を照らす曇り混じりの太陽の暖かさ。乾いた風が運んでくるほこりっぽい気配が、火照った夏の体を冷まし、コートを心地よく感じる季節を運んでくる。

今年もm-floと過ごす秋がやってくる。

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