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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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#教師

初桜

初桜

前回と似たような自分本位な記事で申し訳ありません。

3月は卒業式、離任式でいろんな方から花束をいただきました。

花束をいただいて 春のはぐれ雲

昨日は部活の生徒たちが送別会をしてくれ、今日は強風の中、最後の練習をしてきました。たくさんの餞の言葉をいただき、時を共に過ごすということの大切さを改めて感じました。
この子らと巡り会えたことを感謝したいと思います。

初桜 別れの言葉あたたかく

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さよならを空高く

さよならを空高く

今回の異動で転勤することになり、勤務も再任用のフルからハーフに切り替えるため、基本的にはテニスの指導から足を洗うことになりました。中学以来、考えてみれば50年間もテニスに関わってきたなあと思ってみたりします。

まったくの個人的な感傷にすぎない記事で申し訳ありませんが、昨年4月、現在の3年生がインターハイ予選を迎える時に送ったラインのメッセージに、少し言葉と写真を足して、とりあえずこの学校での「自

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恩師?にインタビュー

恩師?にインタビュー

教育学部に進学した教え子が「母校の恩師にインタビューして来い」というレポート課題を出されてやって来た。

先生の一日の過ごし方を教えてください。

あのね、僕はだいたい6時45分に起きて、7時に出勤するの。最近は早く目が覚めてしまうことが多いけど、起きていきなり朝ごはん、すぐ着替え。その間、15分。すごいでしょ。車に乗って50分くらい、混んでいると1時間以上かかる時もあるかなあ。

学校に着くとバ

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教員住宅のノンベーたち

教員住宅のノンベーたち

教員というのは儲からない商売で、平日は学校で残業しても家で徹夜をしても1円の手当もつかない。土曜日や日曜日に部活動で生徒に付き合うと、今は2300円支給されるが、試合で丸一日10時間生徒を引率しても2300円だから、時給は230円ということになる。ちなみに定年退職して再任用となった今、給料は定年前と全く同じようにフルタイム勤務しても手取りは22万円でしかない。
土、日曜日もない。夏休みと言うが、部

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やる気のないゆるさが大好きでした

やる気のないゆるさが大好きでした

退職前に新聞部の生徒から「教員人生を振り返って!」と言われたので、自分の過去を振り返ってみた。

子供時分から、成績も悪く、いたって不器用。だから高校時分も、つまづかなくていいことにもつまづき、人間について考えたいと文学部に進んだ。

教員になったのも、カッコよく社会の歯車になりたくなかったと言ってみたいが、そうはなれなかったというのが実際のところ。

勤めてからも大概はつまづいていて、普通高校2

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切り付け事件

切り付け事件

※次の続きのような話です。

「荒れる成人式」・・そんな時代があったと、平和な成人式の報道を観て思い出してみたりしたのであるが、 ただ、本当に平和な時代になったのかと言えば、そうでもない。確かに、生徒たちに尾崎豊の話をすると「もう時代が違う」と言われたりもする。ひょっとすると、ジェームスディーンの理由なき反抗を観せても「もう時代が違う」と言われるのかもしれない。

ただ、若者のエネルギーはネット

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荒れ「た」成人式

荒れ「た」成人式

今年も成人の日がやって来て、それにあわせて卒業生の来校が増えた。成人式自体は市町村で行われるから、小中学校が集まりの母集団になるが、ついでに高校にも顔を出しておこうということで、2年ぶりに顔を見せる教え子も多い。今年も二人の女生徒が晴着を着てやって来てくれた。

コロナで成人式も微妙な情勢だが、高校を卒業して2年、生徒同士も、我々も顔を合わせるにはちょうどいい頃合いになる。18歳成人ということが言

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採点

採点

教員になったばかりのころ、テストの採点は先生というものになった証のようにも思え、ちょっとばかりウキウキした。思えば長きに渡ってテストというものに苦しめられて来たのであって、自分が逆の立場になったことを自覚し、我ながら意地汚い「うれしさ」を感じていたのかもしれない。

ところが回を追うごとに、億劫になり、年を追うごとに重荷となり、今や完全な苦痛となるに至っている。年10回の大きなテスト、その他、小

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「ぼけ」も楽しく。

「ぼけ」も楽しく。

先日、病院のエレベーターの前でエレベーターが来るのを待っていた。知り合いの見舞いに行ったのだが、最上階からの眺めが素晴らしいと言われて、病室がある階から最上階に行こうとしたのである。

すぐにエレベーターはやって来たが、しかし何故かエレベーターは止まらずに行ってしまった。「?」と思いつつも、次を待っていたのだが、やってきたエレベーターはやっぱり素通りして行ってしまった。

「?」とやや憤慨しつつ次

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ため息箱

ため息箱

まだ20代のころ、新設校に勤務したことがあり、若者が集まり、活気あふれる職場だったが、ある日、ため息箱を作ろうということになった。

教員は人間が相手の商売なので、いいことも勿論たくさんあるが、いいことばかりでないことも多々あって、それなりに、しんどい。1時間の授業が終わって職員室に帰ってくると、椅子に座った瞬間、思わず「フウー」とため息が出る。

だいたい納得のいく授業など年に何回あるだろう。1

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校則で拘束

校則で拘束

息子がまだほんの小さい頃、こいつと遊ぶのがエラク大変だった。「かくれんぼしよう」と言うので、「かくれんぼ」をするのであるが、狭い家のこととてそんなに隠れる場所があるわけもない。子供が隠れそうな所などすぐに分かってしまう。分からないふうで遊んでやるのも、最初のうちはそれなりに楽しめたりもするが、こいつが何回やっても「しよう」「しよう」と言うのであって、これを延々とやっていると頭が溶けてしまいそうな疲

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呼ぶこと・呼ばれること②

呼ぶこと・呼ばれること②

「先生」と呼ばれるようになって40年近い年月が経とうとしているが、「先生」と呼ばれることにいまだに馴染めないでいる。

まともな先生はそんなことは感じないのだろうが、僕のように、およそ「先生」と呼ばれるにふさわしくない劣等教員にとっては、この呼称は何だか面映ゆい、重い、違和感の塊のような呼ばれ方なのである。

「先生」とは本来「先に生まれた者」なのであって、「後から生まれた者」である「後生」の対に

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第13話:彼は私を犇と抱き締めた

第13話:彼は私を犇と抱き締めた

だいぶ前のことになるが、車でラジオを聴いていたら、ある有名女優がある漢字を読めなかったという話をしていた。

テレビドラマのシナリオの台詞の読み合わせの際、その有名女優の台詞に
「彼は私を犇と抱き締めた」
というのがあったそうだ。

実はこれは「ヒシ」と読む。「犇めく(ひしめく)」であればもう少し分かりやすいかもしれない。彼は彼女を力強く「ひし」と抱き締めたのだろう。
この字をその女優は読めなかっ

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定時制高校野球部

定時制高校野球部

[ これは定時制に勤務していた頃に書いたものです ]

日本人は野球が好きで、野球には格段の思い入れがあるようである。高校でも、今でこそその勢いはサッカーに押されつつあるが、野球部と言えば、夏の甲子園が全国放送されたり、地区予選には全校生徒を駆り出して応援に出かけたりと、非常に特別で、「聖的」な匂いのする部活である。
野球部員と言えば、坊主頭に一年中真っ黒な顔をした、見るからにスポーツマンをイメー

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